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より納得感のある人生を送るために10代の頃からすべきこと

生き抜くためのチカラ~為末メソッドに迫る(3)選ぶ努力と納得感のある捉え方

為末大
一般社団法人アスリートソサエティ代表理事/元陸上選手
情報・テキスト
世間では「やり続けること」の大切さが説かれることが多いが、特に選択肢が増えた現代においては、自分の人生という時間をどう割り振るか、つまり、いつ、どのように見切りをつけるかという発想も大切になっている。その際に必要なのが、「自分を納得させる捉え方」であり、捉え方次第で未来はずいぶんと変わってくる。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:07
収録日:2021/06/30
追加日:2021/09/24
タグ:
≪全文≫

●「絶対」と決別する


―― 入口の問題としてはそういう形になりますけれども、好きであれ、成り行きであれ、始まったときに、そこからどう自分の人生を選んでいくかということに対しても、非常にいいメッセージが書かれています。

 例えば、「『自分にはこの道しかない』なんて思わずに、『ほかの道もある』と気づくだけで、いまがとっても楽になる」。どこまでやるのかは非常に難しいところですよね。

為末 そうですね。

―― あるいは、「『つみ重ねる努力』だけではなく、『選ぶ努力』もたいせつにする」というメッセージもあります。

為末 選んだものを成功するまで続けるのは、とても大事なことです。最近だと「GRIT(グリット)」という概念や何かで、継続する力が成功には大事だといわれていると思うのですけど、一方で、絶対にやめないのであれば、ある意味で玉砕戦法に近いことにもなります。

 だから、実際のところ、いつまでやって、いつ見切りをつければいいのかが、人生では大切です。例えば釣りをしていて、最後までやれば、釣れるかもしれないけど、釣れないかもしれない。釣れると思ってがんばっているこの時間を、別のことに振り分けていたら、仮に畑仕事に費やしていたら、今度はこちら側のほうが自分の人生には大事なことかもしれないわけです。人生とは、常に時間が経過し続ける中で、何に割り振るかの選択だと思うのです。

 選択肢が一つしかないのだったら、時間を一個に費やしていくべきだと思うのですが、私たちが生きている時代は、いろいろなキャリアもあれば、いろいろなことが選択できる。仕事に割り振っても、家族に割り振っても、自分のことに割り振ってもいい時代の中で、時間を何に割り振るかがとても大事だと思うのです。

 その中で、「これを絶対やらなければいけないのだ」と思いすぎると、もしかたらこの時間を他のことに割り振ったら可能性が開かれていたかもしれない、つまりその可能性をずっと捨て続けることになっていくのです。

 だから、もしかしてこちらの人生もあるかもしれない。言葉を変えると、毎朝、昨日やってきたことを今日も自分はやるのだということを、あえて選ぶという感覚が大事で、実は選ばずに次の人生を生きてもいいけれど、それでも自分はこれを生きていこうと決めることが大事なのだろうと思っています。

 だから、一般的な「継続を大事にする考え方」からすると、継続する力が弱くなってしまうのではないかということもあり得るとは思います。しかし、もう一つの人生が自分にもあるかもしれないと思って、どこかでプツッと切って、こちら側に行くこともできるのだと思うだけでも、今やっていることがより新鮮にもなって、貴重な感じも出てきますから、大事なのではないかという話です。

―― 例えば、舞台に出ていらっしゃる方が、「演じている自分の斜め上にもう一人の自分がいて、客観的に見ているような感じがいい」というお話をされることがありますけれども、ある意味では、少し離れてみるといった感覚を持つことなのかもしれないですね。

為末 そうですね。おっしゃる通りで、すべてを一致させすぎないという感覚だと思うのです。「私」と「やっていること」が全部で、それしか見えなくなってしまうと、硬直化してしまうといえばいいでしょうか。例えば、上司と部下という1対1の状態がずっと続く。先生と生徒が1対1のまま、周りの誰の目も入らないと、どんなに素晴らしい人格同士でも行き詰ることがあるので、もう一人、第三者が様子を外から見ながら、「向いていないよね」とか、「こういうほうがいいんじゃない?」「ちょっとずらしたほうがいいんじゃない?」と指摘するのが大事だと思うのです。

 自分の人生の場合には、カウンセラーなり第三者なりの視点を自分がやるのが大事で、その中で一つ重要な視点は、「これをやめて他のことをやったら、どんなことができるのだろう」と考えることかなと思います。


●自分を納得させるために枠組みを決めていく


―― 為末さんは、もともと、100メートル、短距離走からハードルに転向されて、ハードルをやっている中で、さらにどこかにと思ったことはあったのですか。

為末 ハードルから先は「引退」でしたね。100メートルからハードルに行ったときも、最初の3年間は、同じくらいのスピードで走っていた選手が急に伸びて、チャンピオンになったりしているのを見て、「続けていれば、もしかしたら僕も……」というのは、何度となく思いましたね。

 一方で、こちらに来たのだからとやってみた。その結果、いま、こういった場でお話しできるというのは、競技人生の実績がないとできなかったと思うのです。ハードルに来ないと、オリンピックに出て、世界でどうこうと...
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