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「相手の立場に立つ勇気」こそ成功の大きな原因

勇気について(4)「相手の立場に立つ勇気」とは

対談 | 執行草舟村井満
情報・テキスト
リクルートエイブリック、そしてリクルート香港法人の社長となった村井氏。執行草舟は、その村井氏の成功の重要なカギは「相手の立場に立つ勇気」だという。人間が動物である以上、どうしても「自我意識」があり、「相手の立場に立つ」のはけっして容易いなことではない。だが、村井氏はそれを乗り越えた。香港法人の社長を務めたとき、現地の会社を買収する際に、その現地の女性社長から「あなたがどういう人間かを確かめたい」といわれ、「幹部50人を集めるから、直接口説いてくれ」といわれた。最初、言葉の壁もあって、うまく行かなかった。だが、粘り強く、歌を歌ったり、思いのたけを拙い英語で話し、理解しあうことができた。数字や理屈でなく「ぶつかる」ことの大切さを、直に学んだのだった。(全10話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:19
収録日:2021/09/02
追加日:2021/11/19
≪全文≫

●「相手ならこうだろう」と考えるのは、すごく勇気が要る


執行 人事部長の次が、エイブリックですね。

村井 リクルートエイブリックの社長をやりました。

執行 リクルートの関連会社の社長になった。その次は香港法人だったと思います。人事部長のときから村井さんは、「相手の立場に立つ勇気」と呼ばれるものを出すようになりました。地位により、すごい勇気を出す人間になってきた。見ていて、それをすごく感じたことを覚えています。「相手の立場に立つ勇気」――これが、その後、Jリーグのチェアマンになってからの成功の原因だと思います。あの人事部長のときに、早急に覚えられた、というより、もともとあるものが出てきたのです。

 「相手の立場に立つ勇気」はすごく重要ですが、それを勇気の概念として知らない人が多いです。自分ではなく、相手が何を考えているか。「相手ならこうだろう」と考えるのは、生命的にいうと、すごく勇気が要ることです。人間が動物である以上、どうしても乗り越えられない「自我意識」というものがありますから。その勇気を村井さんは出した。この講座を見ている方にも、ぜひそれを学んでほしいと思います。

 この勇気が、なぜ出たかというと、先ほどの話に戻ってしまいますが、「記憶を持つ勇気」なのです。自分が記憶したものが、勇気の源泉になります。どうして相手の立場に立つ勇気を村井さんが持てたのかというと、先ほど話した小林秀雄の「知性は勇気のしもべである」という言葉が関係しています。

 「知性」を今の人たちは、「人間の証」として一番ありがたがるものです。でも知性も「勇気のしもべ」なのです。私と話したとき、これに村井さんは一番感応した。それを魂の奥深くに落としてあったから、人事部長のときに「相手の立場を見る勇気」につながったのです。

 それがリクルートエイブリックの社長に就任したときの成功にもつながった。次のリクルートの香港法人でも、やはり「相手の立場」に立たれた。海外法人は、あの頃の日本の会社の多くが失敗していました。日本的な身贔屓(みびいき)の経営をやっていたときに、現地に根差した法人づくりを村井さんはどんどんやっておられました。

 簡単そうに見えますが、あれこそが相手の立場に立つ勇気です。「相手の立場」を友達や会社の知り合いだけでなく、外国人にも適用する。今はみんな偉そうなことをいっていますが、当時の日本企業でそんなところはほとんどありません。それを村井さんは、日本人が利益を上げるだけでなく、海外の人の立場に立って、その土地の人間にも利益を還元した。

 これは村井さんの中にある、相手の立場に立つ勇気が出たということです。これは多分、村井さんは気づいていらっしゃらないと思いますが、小林秀雄の言葉が大きく響いているのです。そういうことを感じました。

村井 海外事業を始めたとき、私にとっては四十いくつにして初めての海外でした。家内に「一緒に行こうよ」といったら、「アメリカやオーストラリアならいいけど、香港は嫌だ」みたいな反応で(笑)、単身で行きました。

 そのときに気づいたのですが、アジア全域でエグゼクティブサーチ、つまりヘッドハンティング、経営者をプレースメント(配置)する事業は、ほぼ全部、欧米がやっているのです。コーン・フェリー、ラッセル・レイノルズ、スペンサー・スチュアート、マイケル・ペイジといったヨーロッパやアメリカの資本が、アジア人の社長の人事を自在にやっていた。そのときに、アジアの経営者市場はアジア人の私たちがやろうといって、単身行ったのです。

 しかし行ったときは、コカ・コーラやナイキにしても、ヨーロッパやアメリカが本社の会社は、非常に遠い大西洋や太平洋を越えて来ますから、アジアはほぼ現地の人が社長になっています。ところが日本の場合、総経理や社長は、だいたい本社からの出向で来ます。そして何年か行って、すぐ帰っていく。

 そうすると現地の従業員からすると、日系企業はいくら頑張っても社長になれない。彼らはグラスシーリング、「見えないガラスの天井」があるといっていました。私たちが人材会社をやるにあたり、それはないだろうということで、1度、(リクルートから)全部籍を抜き、転籍で現地契約で(現地法人の)社長に入りました。このときやはり現地の人たちは、ものすごく喜んでくれました。


●究極の修羅場に行けば行くほど、アウフヘーベンが起きる


村井 そこから4社ぐらい現地の会社を買収するのですが、忘れもしない“体当たり ”があります。アジアで15か国ぐらい展開している、700人ぐらいの香港系の会社を買収したときです。

 社長はハーバードを出てモルガン・スタンレーに行き、人材会社の経営者をやっていたルイーザさんという女性です。買収にあたり、こちらは...
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