●体当たりで契約に至ったDAZN
執行 あと先日、村井さんと話しをして思ったのが、私はこのようなビジネス的なことに弱いのですが、スポーツイベントに対する(スポーツ専門の定額制動画配信サービスを行う)パフォームグループ(現DAZNグループ)との契約についてです。10年で2000億円の契約をJリーグが結んだ。
プロスポーツが新しい投資対象になるわけで、当初、これを村井さんがやられたと知らなかったのですが、これも凄いことだと思います。
村井 動機はけっこうシンプルです。例えば日本が出ているワールドカップの試合を「3対0で負けたよ」と言われてから見ると、面白くないですよね。スポーツはやはり、結果を知ってから見るのではなく、一緒にそこで戦っている感覚を持てるのがスポーツ観戦の醍醐味です。学生や社会人のときに家でビデオに録画して、「結果は言わないで」と言って1日仕事をしていたら、ポロッと誰かに言われてガッカリすることが何回もありました。
だからスポーツは授業中でも会議中でもタクシーの中でも、いつでもどこでも見られることが、すごく大事だと思ったのです。テレビの放送だけでなく、インターネットやスマホで見られるのがいいと思っていたのが、まず先にありました。
執行 これは年月からいうと、先鞭ではないかと思います。
村井 世界初です。サッカー中継を全試合、単独で契約するのは。何回も交渉が頓挫して頓挫して、いったんチームを解散したのですけれど、もう1回、勝負をかけようとなってロンドン本社に行ったのです。それこそ体当たりもいいところで、直談判しました。
スポーツを、いつでもどこでも見られる。インターネット配信で、スマホでも見られる。「あなたたちが考えているモデルはいいと思う。まだ世界中のどこでもやってないので、まずはサッカービジネスがそれほど大きくない日本でやる。そうすれば必ずイタリアのセリアAでも何でも、やるようになるから。」そんな話しをして、「じゃあ、やってみるか」と2000億で決まったのです。
2015年の話ですが、このとき相手側にいた人は、その年のロンドンの長者番付1番の人だったのです。ケンジントン公園のところで、「王室のウィリアム王子がテニスに来るよ」というような感じでした。そんなことも知らずに、飛び込みで行った。これも多分、体当たりのいいところです。
執行 これも凄いこと...