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リクルート事件後の「絶望的状況」をいかに乗り越えたか

勇気について(3)「主観」と「始動力」

対談 | 執行草舟村井満
概要・テキスト
ビジネスの世界では「客観」ばかりを重視する。だが、村井氏はつねに「主観」と「客観」の両輪で考えてきた。すべてのものは二律背反で、真実は必ず主観と客観、いいものと悪いものが合わさってできているのだ。村井氏がもう一つ学んだのが西郷隆盛の「始動力」であり、ゼロから1をつくる勇気である。これは「できないかもしれない」という疑いを克服する勇気でもある。リクルート事件が起きたとき、誰もが「終わった」と思ったが、村井は福利厚生の全廃などに果断に取り組み、「雇用は保障しないけれど、雇用される能力は保障される会社にしたい」と勇気を持って訴えて、従業員の心を再建のベクトルに向かわせた。(全10話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15:32
収録日:2021/09/02
追加日:2021/11/12
カテゴリー:
≪全文≫

●抜本的な改革を断行するときの「精神」とは?


―― 村井さんは、それこそ、リクルート事件のあとの人事改革や、そのあとの会社(リクルートエージェント=現リクルートキャリアなど)やJリーグでも、非常に抜本的な改革を手掛けられたと思います。やはり、それを断行していくときの……。

村井 今、執行さんがおっしゃったことが自分にとって中心的な思想の一つなのですが、執行社長といろいろ話したり、いろいろなディスカッションをしていく中で、万物を「客観的なるもの」と「主観的なるもの」に分けて考えるようになりました。

 単数形で言うと、客観的なものは物質だったり、主観的なものは精神だったり。この相克みたいなものと、ずっと向き合ってきました。

 ビジネスの世界に私がいたときに、今でもだいたい、あまりよくない経営は「ベストプラクティス」などということを言います。「ナレッジ」「ケーススタディ」などもそうです。物事を客観化して、真似しやすいように流通させる。客観は外から見ますので、受け手の解釈の誤差が少ないから、経営者が客観的なことを言うと、バッと全社に伝わります。ある意味、便利なもので、それらが横溢しているところに私はいました。

 一方で、「私はこれがやりたい、成し遂げたい」という思いを経営会議などで言うと、「それはおまえの主観だろ?」「村井はちょっと情緒的過ぎるから、もう少しロジックで言え」みたいな議論になっていくのです。

 しかし自分の中では、「主観が集合する文化的なるもの」と「客観が集合するサイエンス的なるもの」の両輪でと、ずっと議論していたものですから。それでこの両者の主従関係が、「科学」や「客観」のほうが破壊力が高いので、みんな社内ではそちらばかり言っていたときに、(執行さんから)「それは、こっち(主観)だ」という話をズバッと聞いた。これは私にとって、画期的なことでした。

執行 小林秀雄の言葉からもわかるように、すべてのものは二律背反なのです。必ず真実は、今の言葉で言えば「主観」と「客観」で、いいものと悪いものとが必ず合わさってできています。「すごくいいもの」や「すごく悪いもの」はないのです。

 だから人間は、人間の生命的努力によって、いいほうに少し傾けなければいけない。これが人生論です。それが今、科学的な時代になって、すごくわからなくなっています。みんなすぐに...
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