●「アマゾン・エフェクト」で小売業を呑み込むモンスター
次は、アマゾンをつくった驚異の人、ジェフ・ベゾス氏です。
ベゾス氏は、eコマース書店から世界最大・最強の小売ネット企業を構築しました。消費者のために最大のネットワークを用い、最速の配送を実現するために、大規模・最新のシステムに対して莫大な投資をしています。
売上は巨大ですが、利益は最小。なぜかというと、消費者の「効率」のために注力しているからです。ただ、アマゾンの労働負荷がそうとう高いことは有名で、最近では、労働組合結成に対する動きも報道され、よく知られています。
これは後ほど言いますが、「軍隊的」ともいわれるアマゾンの社風は、ベゾス氏の両親から引き継いだ勤勉さが、そのルーツの一つではないかと言われます。両親といっても、実は父親が義理の関係で、キューバ移民でした。母親の再婚によって4歳で養子になったわけで、半分キューバ人という言い方もできるかと思います。
最強の競争力と急速な拡大により、小売業の圧倒的な地位に立ち、他の小売業がどんどん消えていく「アマゾン・エフェクト」を及ぼしています。1年間に数千軒から1万軒ぐらいが消えていく。さらにベゾス氏は宇宙開発に非常な興味を持ち、つい最近(2021年7月20日)、(自身の立ち上げた「ブルーオリジン」が)開発したロケットで宇宙に飛び出しました。
●勤勉な養父のエートスを受け、30歳で起業
ジェフ・ベゾス氏(ジェフリー・ベゾス)の父親はテッド・ジョルゲンソン、母親はジャクリーン・ジョルゲンソンというアメリカ人。彼が生まれた時、父親はバイクショップのオーナー、母親は17歳だったといいます。
母親は間もなく離婚し、キューバから移民してきたミゲル・マイク・ベゾスという男性と、68年に再婚します。義父となるマイク氏は、4歳の時に彼を養子に引き取ったわけです。一家はやがてテキサス州ヒューストンに移住します。マイク氏はニューメキシコ大学を卒業後、エクソンでエンジニアとして働き始めました。非常に勤勉だったようで、そのエートスが彼にも受け継がれているといわれています。
彼は小学校の頃に科学に関心を持ち、工作も得意でした。やがて一家はフロリダ州マイアミに移住して、彼はマイアミの高校に通いますが、高校在学中ずっとマクドナルドでアルバイトをしていたそうです。それにもかかわらず、卒業の時には全学年の総代を務め、超優秀な生徒に贈られる奨学金をもらって表彰されます。86年にプリンストン大学を優秀な成績で卒業して、電気工学と計算機科学で学位を取得。非常に優秀な人のようです。
大学卒業後はいろいろな会社を経験しますが、オンラインの書店を創業しようと決めたのは93年の後半です。ニューヨークからシアトルに移動する時に事業計画を書き上げ、94年に自宅のガレージでアマゾンを起業します。この時、貧しい両親が30万ドルも都合してくれたのだそうで、非常に感謝しているといっています。
●ブルーオリジン、ワシントンポスト、そして退任
さて、21世紀に入った途端、世界中が「ドットコム不況」に襲われます。ベゾス氏のところも例外ではなく、2000年に銀行から200億ドルの融資を受けたものの、アマゾンのキャッシュバランスはわずか3億ドルしかありませんでした。大変不調で、物流センターを閉鎖したり、レイオフをしたり、いろいろなことをしていましたが、とうとう2002年の後半、大規模投資により収益がまったくなくなって、破綻の危機をささやかれます。この時は、ほとんどつぶれそうだったようです。
しかし、2003年になると財務状態は回復して、4億ドルの黒字を出します。2007年にはKindle をスタートし、2013年に行われた「オンライン小売企業の評価」において、アマゾンは断然世界トップの企業という認定を受けます。
一方でベゾス氏は、2000年の9月に有人宇宙飛行を目的とするベンチャー企業「ブルーオリジン」を設立しています。さらに2013年には「ワシントンポスト」を買収して、たちまちのうちに黒字にしていきます。ところが、トランプ氏がさかんにベゾス氏への攻撃を繰り返し、口汚く罵ります。「ワシントンポスト」がトランプ批判のような記事を出すのが原因で、「叩け」と言っていたそうですが…。
ベゾス氏は2021年の7月に退任すると発表していて、予告通り退任しました。退任して約2週間後には、ブルーオリジンの開発したニュー・シェパード号によって、初の有人宇宙飛行に参加したことが、大きなニュースになりまし...