●プラットフォーマーと野口悠紀雄氏の慧眼
もう一つの大きなイノベーションとして、特にGAFAが代表したのは、プラットフォーマーというビジネスモデルです。インターネットを通じて、さまざまなサービスのプラットフォームを提供するのが、プラットフォーマーといわれるものです。
プラットフォーマーは、情報を伝達するだけでなく情報から価値を生むということで、新しい情報産業といえます。収集する情報は必ずしも機密情報ではなく、フェイスブックの「いいね!」のような、それ自体としては価値がなく、ただで集められるもの。ただし大量になって、ディープラーニングをさせると、非常に恐ろしい明確な答えが出てきたりするので、大量に集めることで価値を生みます。
したがって、プラットフォーマーが保有するデータは、実はそういう分析が可能だという意味では非常に価値の高い資本ということです。経済学や会計学では、データや価値は資本として扱われていませんが、野口悠紀雄先生は大変重要な視点を提供しています。
もし彼が本を書き直したら、これを最大の価値と分析されるでしょう。実際、彼はそのように言っているのですが、グーグルやフェイスブックの時価総額のほとんどは、実はビッグデータの価値なのです。資金力でも権力でもなく、データが資本になる。そういう世界がすでに来ていることを彼は主張していて、さすがに野口教授らしい慧眼だと思います。
●グーグルのプラットフォーム戦略
具体的なGAFAの動きについて、グーグルから始めましょう。グーグルは設立されてから(2021年時点で)まだ23年しかたっていません。2020年の時点で、すでに時価総額が1兆ドルを超えました。
彼らは「地球上のあらゆる情報の管理と整理をして、最も正確な情報を瞬時に提供する」という経営理念を持って会社を運営しています。彼らがどのようにプラットフォームを構築しているかというと、非常に高度な技術を用いたサービスを、ユーザー(利用者)とサプライヤー(供給業者)にタダで提供する。そうすると、ユーザーとサプライヤーの基盤が拡大していきます。これがプラットフォームなのです。
もう少し具体的にいうと、例えば検索やユーチューブなどのサービスをタダで提供する。これで閲覧する人がどんどん増えていくと、膨大なプラットフォームになります。それで、「こういう大きなプラットフォームを持っているよ」ということで、「そこに広告を出させてくれ」という人がたくさん来るわけです。そこで高い授業料を取って広告の出し方を教えるわけですが、それがターゲティング広告です。このようなメディア・プラットフォーム事業が隆盛しています。
それから、ITインフラを外販するクラウド・プラットフォームが非常に流行っています。また、Android端末向けのコンテンツ配信等のコンテンツ・プラットフォームを展開しています。このようにプラットフォームを三重四重に展開して、そこで情報を蓄積してお客さまを集め、その上で価値を生んで儲けていくということです。
●iPhoneをプラットフォームにしたアップルの戦略
アップルは設立が1977年ですから、44年ほどたっていますが、2020年9月に時価総額2兆ドルを超えました。
彼らは「革新的なハード、ソフトとサービスを通じて最高のユーザーエクスペリエンスを提供する」と謳っています。
例えばアップルは、iPhoneなどのデヴァイスを基点にして、大規模なアップル製品のユーザーを獲得し、アップルストアを持ってユーザーの基盤を構築しています。さらにコンテンツを製作する人、アプリのサービスベンダーは世界中に200万人いるといわれ、アップルに搭載してくれという希望が殺到しているので、これももはやプラットフォームと呼べます。
最近はスマホが一巡したのでiPhoneの需要は少し伸び悩んでいるということですが、今度はサブスクリプション型のコンテンツ配信サービスを提供します。これも新しいプラットフォームとして機能するため、アップルは今なおどんどん儲けているわけです。
●フェイスブックの新たなメディア・プラットフォーム戦略
フェイスブックは設立が2004年で上場は2012年ですから、つくって17年ほど、上場してまだ10年ほどで、(年数的には)本当にまだ子どものような感じです。
「世界をより身近にする(Bringing the world closer together)」というのが経営理念で、人と人をつなげるコミュニティ(SNS)をつくってきました。
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