本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』
この講義は登録不要で無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
鉛筆のキャラになるほどの国民的な人気を博した当時の陸相
第2話へ進む
陸軍人事抗争~虚虚実実の駆け引き
本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』(1)田中・宇垣派と上原派の対立の行方
渡部昇一(上智大学名誉教授)
五・一五事件のあと、二・二六事件に流れ込んでいくまでの陸軍の複雑な派閥事情を、宇垣一成陸相が誕生した時点に巻き戻して見ていく。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第四章・第1回。
時間:10分39秒
収録日:2015年1月19日
追加日:2015年8月31日
≪全文≫
 さて、ここまで昭和7年(1932)の五・一五事件までの大きな動きを見てきたが、いよいよ事態は昭和11年(1936)の二・二六事件に流れ込んでいくことになる。この間の陸軍の派閥事情は複雑だから、ここで改めて、時計の針を宇垣一成陸相が誕生した時点に巻き戻して見ていくことにしよう。

 前章で述べたように上原勇作元帥は、長州閥の田中義一大将と対立関係にあった。そこで、大正13年(1924)1月7日に清浦奎吾内閣(~6月11日)が成立した際、上原勇作元帥は、田中義一大将に代わる陸軍大臣として、清浦首相に福田雅太郎大将を薦めた。

 上原元帥の派閥は、大分県以外の九州出身者が中心を占めていたが、福田大将も長崎出身で、関東大震災(大正12年9月1日)のときには関東戒厳司令官を務めている。

 ところが、前任の陸軍大臣であった田中義一大将は、次の陸軍大臣に宇垣中将を推そうと考えていた。だが、上原元帥はかつて陸軍大臣、参謀総長、教育総監の「陸軍三長官」を務めた身(三長官を歴任したのは上原元帥の他には、のちの杉山元元帥のみ)であるだけに、その意向をそう簡単に退けるわけにはいかなかった。

 そこで田中大将は非常にうまいことを考えた。前陸軍大臣である自分と参謀総長の河合操大将と教育総監の大庭二郎大将の三人で相談し、三長官の合議のうえで陸軍大臣を薦めることにしたらどうか、というのである。

 河合大将は、清浦内閣で宇垣大将が陸相になったときも参謀総長の地位にあり、田中大将はもちろん宇垣中将を推していた。大庭大将はどちらでもいいという考えだったが、三長官による次期陸相の推薦ということになると誰も嫌な気はしない。結局、三人の会談では、次期陸相は宇垣中将ということにまとまり、上原元帥も引き下がらざるをえなかった。

 ところが上原元帥は、昭和5年(1930)に鈴木荘六大将が参謀総長を辞めたとき、武藤信義大将(のち元帥)を後任に推薦した。佐賀出身の武藤大将は陸軍大学を首席で卒業した武勲赫々たる人で、皇道派の中心人物だった荒木貞夫中将や真崎甚三郎中将などが猛烈な推薦運動を展開している。

 陸軍で偉くなる人は、必ず一度は参謀本部に入って参謀総長の下につくから、陸軍部内における参謀総長の影響力は非常に大きかった。だから上原元帥にしてみれば、そのポストを自分の派閥から離したくなかった。そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(1)なぜ満洲が重要だったのか
放っておけば朝鮮はロシア領になりかねなかった
渡部昇一
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
武士は「お手本がない時代」だからこそ生まれた…武士誕生の真実と大唐帝国の解体
関幸彦
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子

人気の講義ランキングTOP10
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に記された「媚態表現」の真相と人心掌握術
上野誠
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(1)会ってみたプーチン…その実像
ロシア人の見る「ロシアの歴史」を知るとロシアがよくわかる・・・実際に会ってみたプーチンの印象とは?
上月豊久
戦国武将の経済学(3)豊臣秀吉の経済政策
豊臣秀吉の驚愕の国内貿易…莫大な財力を生んだ経済政策
小和田哲男
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男