本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ノモンハンの勘違いとドイツの神秘的な強さが同盟を加速
本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』(10)なぜ三国同盟が結ばれてしまったか
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)
米関係を決定的に悪化させた日独伊三国同盟だが、この遠因に、二・二六事件があると考えることができる。その理由とは? 上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第四章・第10回。
時間:2分13秒
収録日:2015年1月19日
追加日:2015年9月3日
≪全文≫
 もう一つ、二・二六事件が遠因となったと考えられるかもしれないものが、日独伊三国同盟の締結である。

 のちに日独伊三国同盟に発展する日独防共協定が結ばれたのが、昭和11年(1936)11月のことであった。ということは、同年2月26日に起きた二・二六事件の余波を受けて陸軍内が非常にごたついているときに、ナチス・ドイツに傾倒していたドイツ大使館付武官の大島浩少将が、同協定の成立に奔走していたことになる。

 共産主義に対抗するという大義名分を掲げたこの日独防共協定が成立したところまでは話がわかるが、昭和15年(1940)9月27日に調印された日独伊三国同盟は、日米関係を決定的に悪化させたという意味できわめて影響が大きい。

 ここでは同盟成立の経緯などの詳細は省くが、日本がそうしてまで日独伊三国同盟を結ぼうとした理由は、昭和14年(1939)5月から9月まで続いたノモンハン事件にある。ノモンハン事件は、実は戦場で勝っていた日本が負けたと思っていたところが大問題であった。このため、昭和14年(1939)9月1日に始まった第二次世界大戦(~昭和20年〈1945〉9月2日)の欧州戦線で連戦連勝していたドイツ軍の勢いを見て、軍部は軍事同盟を結びたくなったのだろう。

 私の子供の頃の印象をいえば、当時のドイツの強さは神秘的でさえあった。第一次世界大戦ではあれだけ戦ってもパリを占領できなかったのに、第二次世界大戦の緒戦でドイツ軍はあっという間にパリを占領してしまったので、「ドイツは強い」と誰もが感じていた。

 だが、もしその頃、日本がノモンハン事件におけるソ連側の被害を正確に把握していたら、陸軍は三国同盟に対してあれほど熱心になることはなかったのではないか。

 痛恨ともいうべきは、インテリジェンスの欠如である。第一章でも述べたが、ソ連崩壊後に明らかになった情報を含めると、ノモンハン事件における日本軍の損失は、戦車が29台、飛行機が179機で、ソ連は飛行機1973機、戦車・装甲車両を800台以上失っている。その辺をきちんとつかんでいれば、三国同盟が陸軍にとって魅力的に映ることはなかっただろう。ノモンハン事件で戦果を正しく評価できなかったということが、あらゆる意味で、その後の日本に大きな影響を及ぼしたと思うのである。

 そこで想像してしまうのが、もし小畑敏四郎が陸...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮