本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』
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二・二六事件は昭和天皇の激怒で淡雪のように消え去った
本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』(6)叛乱勃発と昭和天皇の激怒
渡部昇一(上智大学名誉教授)
遂に二・二六事件が起きる。事件当初の陸軍の煮え切らない態度、また親しかった鈴木貫太郎侍従長へ危害が及んだこと対して昭和天皇が激怒された。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第四章・第6回。
時間:10分03秒
収録日:2015年1月19日
追加日:2015年8月31日
≪全文≫
 こうした出来事が重なり、昭和11年(1936)2月26日、ついに二・二六事件が起きる。

 二・二六事件は、「昭和維新」の実現を目指す陸軍の青年将校らが起こした大規模な叛乱事件で、叛乱には陸軍歩兵第一、第三連隊に加え、近衛歩兵第三連隊などから1400人あまりが動員された。近衛連隊は皇居を守るために設置された、まさに天皇陛下のお膝元の部隊である。

 叛乱を指揮した青年将校たちは先の十一月事件で免官された村中孝次元大尉や磯部浅一元中尉をはじめ、野中四郎大尉、河野寿大尉、香田清貞大尉、安藤輝三大尉、中橋基明中尉、栗原安秀中尉などといった人々であった。

 叛乱部隊の兵隊たちは、上官である青年将校から命令された通りに動いて永田町・三宅坂一帯を占拠し、斎藤実内大臣、高橋是清蔵相、渡辺錠太郎教育総監らを殺害した。大東亜戦争終戦時の内閣総理大臣だった鈴木貫太郎大将が当時、侍従長を務めていたが、彼も重傷を負っている。叛乱部隊は首相官邸にも押し入り、岡田啓介首相の義弟である松尾伝蔵大佐を岡田首相と誤って射殺した。岡田首相は女中部屋の押し入れの中に隠れて、奇跡的に難を逃れている。

 これに対し、海軍の対応は早かった。横須賀鎮守府長官・米内光政中将(のち大将)と参謀長・井上成美少将(のち大将)のコンビは同日午後に軽巡洋艦那珂を芝浦に差し向け、特別陸戦隊を上陸させたほか、戦艦長門を旗艦とする第一艦隊約40隻を東京・台場沖に停泊させている。必要とあらば、艦砲射撃をやるぐらいの覚悟だった。

 当初、陸軍の首脳部、幕僚陣の大多数は事件処理について右往左往の体たらくであった。これは、明治時代の陸軍とは大違いである。

 九州の士族が西郷隆盛を擁して起こした西南戦争(明治10年〈1877〉)が終わったあと、恩賞がなかったことや経費削減による減給などを理由に、竹橋事件(明治11年〈1878〉)という、日本で初めての兵士による叛乱が起きている。

 同事件では、当時陸軍卿だった山県有朋が兵卒259名を処罰し、うち53人を死刑にしている。明治維新の元勲たちは刃の下をくぐっているから、やるべきことは断固として実行したのだ。

 ところが昭和の軍人たちは、叛乱部隊を鎮圧するために「皇軍相撃つことは避けなければならない」という心情が先に立つようになる。しかも陸軍内には、事件を利用して皇道派の...

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