本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「戦前は暗黒の時代だった」と決めつけるのは大きな間違い
本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』(13)『キング』が伝える昭和十一年の日本
渡部昇一(上智大学名誉教授)
よく、「戦前は暗黒の時代だった」などと言われるが、単純にそう決めつけるのは大きな間違いなのである。それがよくわかるのが、当時、百万部も発行されていた、大日本雄辯會講談社(現・講談社)発行の国民大衆雑誌『キング』の記事である。どこを見ても、非常に呑気で危機感がまったく見られない。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第四章・第13回。※収録環境や収録機材の都合により、映像の音声が聞き取りにくい箇所がございます。あらかじめご了承ください。
時間:2分48秒
収録日:2015年1月19日
追加日:2015年9月3日
≪全文≫
 だが、日本で統制経済が本格化するのは昭和12年のシナ事変以降のことである。二・二六事件当時、普通の日本人は国際情勢の変化も切実には感じていなかった。よく、「戦前は暗黒の時代だった」などと言われるが、単純にそう決めつけるのは大きな間違いなのである。

 それがよくわかるのが、当時、百万部も発行されていた、大日本雄辯會講談社(現・講談社)発行の国民大衆雑誌『キング』の記事である。どこを見ても、非常に呑気で危機感がまったく見られない。

 私の自宅には、大正14年(1925)から敗戦までに発刊された『キング』が揃っているが、誌面を通じて当時の雰囲気がよくわかる。その『キング』でさえ、二・二六事件について触れているのは、同事件から約2カ月後の昭和11年5月1日号しかないのだ。

 たしかに二・二六事件当時、心配のあまり明治神宮に参拝した女学生たちもいたが、クーデター自体は3日間で鎮圧されているので、当時の一般大衆にとっては一過性の事件としか映らなかったのかもしれない。

 同号の『キング』のスナップ写真を見てみると、明治神宮に参拝している女学生たちや西園寺公の姿が掲載されている。事件当時、夫人たちが鎮圧部隊に炊き出しをしていたことも出ている。それから佐倉の連隊(歩兵第五十七連隊)が千葉から入ったとか、海軍陸戦隊が上陸したとか、首相官邸などで殉職した巡査たちに対する見舞金が、短期間に20万円も集まったというような写真が記事になっている。

 当時の20万円といったら、非常に大きな金額だ。総務省統計局「戦前基準の物価指数(昭和30年~平成26年)」によれば、昭和9~11年の平均消費者物価(東京区部)を1とすると、2013年は1751倍だから、ざっと計算すると3億5千20万円が集まったことになる。

 二・二六事件の翌月の3月9日に広田内閣が成立し、広田弘毅が総理大臣になったが、『キング』の同号に「広田弘毅氏、出世物語」という記事が出ていて、殉職した巡査や岡田首相をうまく脱出させた小坂慶助憲兵曹長、最後まで警視庁の電話を守った女性交換手たちの美談も紹介されている。

 何か事件があったとき、死線を突破した人たちや現場の人たちの写真を出してストーリーを書いていたのが、『キング』の人気の理由で、その女性交換手たちも同誌に写真付きでインタビューに答えている。

 日本がポ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫