本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
民主主義には欠点はあるが軍隊の蜂起が起きにくい制度
本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』(8)軍隊は民主主義のルールには臆病である
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)
ある種の個人の行動や性格が、歴史を動かす大きな影響力を持っていることを痛感せずにはいられない。だからこそ軍隊組織を統率する人は、民主主義の手続きに徹して選ばれるべきである。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第四章・第8回。
時間:7分08秒
収録日:2015年1月19日
追加日:2015年9月3日
≪全文≫
 改めて振り返ると、二・二六事件の頃になると、日本はもう後戻りできないところまで進んでしまったといわざるをえない。

 三月事件、十月事件、五・一五事件、そして二・二六事件までの軍部の人間模様や権力争い、派閥抗争は非常にわかりにくいが、こと陸軍の場合、突き詰めていってしまえば、陸軍大臣、参謀総長、教育総監の陸軍三長官のポスト争いだったと喝破できるかもしれない。皇道派はその争いに敗れ、最後に残った教育総監のポストを、真崎大将が必死に守り抜こうとした。荒木大将は青年将校に口先だけの将軍だと批判されて失脚したが、真崎大将だけは青年将校に見限られないほどの過激な姿勢を取り続けていた。

 歴史の本ではあまり触れられないことだが、やはり上原勇作元帥と真崎甚三郎大将という二人の頑固者がいなければ二・二六事件は絶対に起こらなかったというべきであろう。そこに荒木貞夫を加えてもいい。そして二・二六事件がなければ、日本は対米戦争も避けることができたはずである。

 ところが、その二・二六事件後に開かれた軍法会議で、事件の火元であると万人が認めていた真崎大将は、共謀の容疑で取り調べを受けたものの、証拠不十分として罰せられなかった。ある種の個人の行動や性格が、歴史を動かす大きな影響力を持っていることを痛感せずにはいられない。

 だからこそ軍隊組織を統率する人は、民主主義の手続きに徹して選ばれるべきであると私は思う。実際、軍隊によるクーデターは、アングロサクソンの国ではなかなか起こらない。やはり民主主義のルールにしたがった選挙で、皆に選ばれた人が統率しているから、「財閥富を誇れども」とはなかなか歌えないのだろう。

 現代においても、民主主義のルールに則らない独裁政権は、きわめて臆病である。かの毛沢東が起こした文化大革命という名の権力闘争も、その臆病さに起因するものであったろう。いまの主席の習近平も「大中華帝国」などと大きなことをいっているが、結局のところ、臆病で総選挙すらできないではないか。

 その意味で、民主主義に欠点はいくらでもあるかもしれないが、軍隊の蜂起が起きにくい制度であるということが、一つの大きな長所だといえるだろう。

 一方、「もし永田鉄山が生きていたら」という仮説は興味深い。永田少将が暗殺されなかったら、日本は太平洋でアメリカと戦争することはなかっただろう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘

人気の講義ランキングTOP10
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹