本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
独再軍備やソ連の極東軍備拡張に加え米ソの反日扇動
本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』(11)事件の背景にある国際的な軍拡競争
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)
二・二六事件と前後して、国際情勢も急速に変わりつつあった。ドイツではナチスは第一党になり、総統ヒトラーのもとロカルノ条約破棄を宣言し、ラインラントに進駐。ソ連は五カ年計画で工業化と近代化を推し進め、極東での軍備を拡張したのみならず、コミンテルンが思想戦でシナを反日に煽り立て、アメリカではプロテスタント教会の牧師たちを通じて、シナで民族自決の美名のもとに反日運動を煽り、満洲の独立に徹底的に反対した。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第四章・第11回。
時間:2分39秒
収録日:2015年1月19日
追加日:2015年9月3日
≪全文≫
 二・二六事件と前後して、国際情勢も急速に変わりつつあった。

 第一次世界大戦に敗れたドイツは、ベルサイユ条約で全植民地と本土の約1割を失い、陸軍兵力10万人以下、海軍の大幅な削減、航空機および戦車、潜水艦の保有禁止など軍備を厳しく制限されたほか、1320億金マルクという膨大な賠償金を支払わなければならなくなった。

 さらに、ベルサイユ条約調印後、ラインラント(ドイツ西部のライン川沿岸地域)の緊張緩和と安全保障を確立するために、1925年(大正14)12月にロカルノ条約が調印された。同条約のうち、ドイツ、ベルギー、フランス、イギリス、イタリアの五カ国で結ばれたライン協定では、ラインラントの現状維持や不可侵などの集団的安全保障、紛争の平和的解決などが定められた。

 ところが世界恐慌下、このような苦境に対してドイツ国内の反発が急速に高まる。この気運を捉えたヒトラー率いるナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)は、昭和7年(1932)7月の選挙で国会の第一党となる。そして、翌昭和8年(1933)1月に、ヒトラーは首相となる。さらにその翌年(昭和9年〈1934〉)8月には総統として独裁者の地位を確立した。

 ヒトラーは国家社会主義的な統制経済で経済を立て直しつつ、次々と強硬策を打ち出していく。昭和10年(1935)3月には再軍備宣言を行ない、二・二六事件が起こった昭和11年(1936)3月7日には、ロカルノ条約破棄を宣言し、ラインラントに進駐したのである。

 一方、ソ連は五カ年計画で工業化と近代化を推し進め、極東での軍備を拡張したのみならず、コミンテルン(共産主義インターナショナル)が思想戦でシナを反日に煽り立てた。先にも述べたように、アメリカもプロテスタント教会の牧師たちを通じて、シナで民族自決の美名のもとに反日運動を煽り、満洲の独立に徹底的に反対した。

 結局のところ、当時、日本にとってシナ問題はソ連問題であり、アメリカ問題だったのである。

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性
やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本
小宮山宏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
営業から考える企業戦略(1)成功するブランド戦略とは?
ブランド力を高めるために「自社の強み」を徹底的に聞け
田村潤
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ