本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
社会主義思想まん延の有無が明治維新と昭和維新の違い
本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』(12)国家社会主義に幻惑された日本人
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)
非常に表面的に見れば、明治維新と昭和維新は、わりと似たような構図であるといえるかもしれない。だが、明治維新と昭和維新に大きな差があるとすれば、それはおそらく外圧の種類の違いである。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第四章・第12回。
時間:3分35秒
収録日:2015年1月19日
追加日:2015年9月3日
≪全文≫
 非常に表面的に見れば、明治維新と昭和維新は、わりと似たような構図であるといえるかもしれない。

 明治維新のときには下級武士たちが幕府上層部の偉い人たちは駄目だと意気に燃えて立ち上がり、そしてやがて偉くなって日本の指導層に上り詰めていった。

 一方、これは多少勘ぐりになるが、二・二六事件では陸軍エリートの登竜門だった陸軍大学に行けなかった青年将校たちが、日本を悪くする君側の奸臣、権門階級を一掃することを唱えて立ち上がった。それがクーデターの主要な動機にはなりえないとしても、心のどこかには、もはや軍全体を動かせるほどに出世することが見込めないから、武力を使ってでも自分たちが目指す天下を実現したいという野心もあったかもしれない。

 だが、明治維新と昭和維新に大きな差があるとすれば、それはおそらく外圧の種類の違いである。

 明治維新は、欧米列強の圧力という国難から立ち上がるため、日本という国をあるべき姿に変えていこうという意識から生まれたものであった。しかし昭和維新は、舶来の社会主義思想が大正時代に日本で流行したことを背景としている。逆にいえば、社会主義がなければ昭和維新という発想は生まれなかった。

 その意味で、ロシア革命を経てソ連という国がつくられたことの影響は大きかった。要するに、天皇陛下に忠節を尽くすことを除けば、青年将校たちがやろうとしていたのは、革命にほかならない。右翼と左翼の違いは事実上、天皇陛下を肯定するか否定するかどうかの差でしかなかった。統制派は国家社会主義であり、革新官僚はむしろボルシェビキ(レーニンを指導者としたロシア社会民主労働党の左派)に近い。

 ロシア革命にも平気でいられたアメリカは物資が豊富だったので、経済を統制しなくてもよかったが、日本やドイツは経済統制をしなければ、次の戦争に備えることができなかった。むしろ日本は重要物資が入ってこなくなったため、戦争に向かわざるをえなかった。こうした日本の行く末を心配するあまり精神を病む人もいて、国力を総動員するための計画をつくらなければ駄目だと主張した人もいたわけだ。

 つまるところ、大恐慌後、苦境にあえぐ資本主義列強を尻目に躍進しているように見えたソ連やナチス・ドイツの姿を見て、あたかも国家社会主義は非常に有効な制度であるかのように映り、当時の日本人は幻惑されたのだ。実際、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(4)荘園発生から武家の時代、王政復古へ
武士が推進した“私”の増殖…中央集権はいかに崩れたか
片山杜秀
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二