本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
軍部大臣現役武官制の復活…広田弘毅内閣が変えた国の運命
本当のことがわかる昭和史《4》二・二六事件と国民大衆雑誌『キング』(7)息を吹き返した「軍部大臣現役武官制」
渡部昇一(上智大学名誉教授)
二・二六事件後の広田弘毅内閣が成立。陸相に選ばれた寺内寿一大将は軍部大臣現役武官制度の復活を広田首相に要求し、これに応えた。このことがのちに取り返しのつなかい大問題に発展する。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第四章・第7回。
時間:8分43秒
収録日:2015年1月19日
追加日:2015年8月31日
≪全文≫
 二・二六事件後に岡田啓介内閣が総辞職したあと、近衛文麿を元老西園寺は推薦したが、彼は病気と称して断ったので、広田弘毅内閣(昭和11年〈1936〉3月9日~12年〈1937〉2月2日)が成立した。広田首相は組閣の際、陸軍大臣に寺内寿一大将(のち元帥)を選んだ。ところが、広田首相は外務大臣に吉田茂を入閣させたかったのだが、寺内大将は「そんな自由主義者は駄目だ」と言い出し、組閣に干渉したのである。

 寺内が陸相に選ばれたのは、二・二六事件後に陸軍では粛軍と呼ばれる大規模な人事異動が行なわれたためであった。つまり、粛軍の名のもとに皇道派を一掃しなければならなかったのだが、そこで「この人なら問題にならないのではないか」と白羽の矢が立ったのが、長州出身の寺内寿一大将だった。

 寺内大将の父である寺内正毅元帥は首相も務め、伯爵にもなっているから、名門中の名門の出である。二・二六事件のあとの陸軍を誰がまとめていくのかというとき、最も差し障りがなかったのが、名門出身である寺内大将を担ぎ出すことだった。

 当時、長州閥の将校は中央には置かず、地方で勤務させることが不文律になっていた。寺内大将も第五師団長、第四師団長、台湾軍司令官を歴任したあと、昭和10年(1935)12月2日から軍参議官の役職にあった。そして彼は、昭和11年(1936)3月9日に成立した広田内閣の陸軍大臣として入閣するのである。

 寺内陸相は育ちが良く、厳しい交渉も難しい仕事も平気でこなせるところがあった。その彼が広田首相に要求したことの中に、軍部大臣現役武官制度の復活があった。つまり、第一次山本権兵衛内閣時代に木越安綱陸相がしたこととは逆のことを行なったのである。

 寺内陸相は広田首相を説得するため、「真崎大将は二・二六事件後に予備役になりましたが、彼のように現役でない軍人が陸軍大臣になってしまった場合、総理はどうしますか」と話したという。そこで広田首相は考え込んで、「陸海軍大臣は現役に限る」と制度を元に戻した。これがのちに取り返しのつかない大問題になったことは、すでに述べた通りである。その後の日本政治はいうまでもなく、軍部に反対されたら何もできないような状態に陥った。

 たとえば、米内光政海軍大将を首班とする米内内閣(昭和15年〈1940〉1月16日~7月22日)は日独伊三国同盟に反対で、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一