本当のことがわかる昭和史《6》人種差別を打破せんと日本人は奮い立った
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合本主義-渋沢栄一の持論の目的は「公益」の追求
本当のことがわかる昭和史《6》人種差別を打破せんと日本人は奮い立った(5)日本型資本主義の精神と渋沢栄一
歴史と社会
渡部昇一(上智大学名誉教授)
明治時代に渋沢栄一という人物が出たことが、いまの日本経済の独特な精神と形をつくったことは間違いない。渋沢は若かりし頃、旧幕府時代にヨーロッパ諸国を訪れ、フランスで初めて近代的な経済制度などに触れる。帰国後、第一国立銀行を設立することから事業を始めた渋沢が目指したのは、株式会社方式(合本主義)を日本に広め、商人の地位を高めることだった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第六章・第5回。
時間:5分59秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年9月14日
≪全文≫
 話は少し逸れるが、ここで渋沢栄一について少し考えてみたい。明治時代に渋沢栄一という人物が出たことが、いまの日本経済の独特な精神と形をつくったことは間違いないことだからである。

 渋沢は若かりし頃、ある縁で徳川慶喜の弟・昭武に随行し、旧幕府時代にヨーロッパ諸国を訪れている。フランスで初めて近代的な経済制度などに触れる一方、慶喜から預かった資金を運用して儲けた。彼はおそらく日本人で初めて、外国で投資して儲けた人である。ところが渋沢たちが渡欧している間に維新が起こる。幕府の留学生たちは帰国できずに困っていたのだが、渋沢が儲けたお金を工面して、彼らは無事に帰国することができた。

 渋沢は帰国してから慶喜のもとに身を寄せたが、大隈重信に「新政府は神代に八百万の神々が集まって日本国をつくるような気持ちでやっている。お前も出てこい」と勧められ、大蔵省に入省した。ところが「入るを量りて出ずるを制す」(収入をきちんと計算してから支出の計画を立てる)ことが財政政策の根本であるにもかかわらず、「まず金を出せ」という大久保利通と意見が合わず、渋沢は野に下り、第一国立銀行を設立することから事業を始めたのである。

 彼は世界を見ていたから、「日本ではまだ商人はぺこぺこするしか道はないが、外国ではけっして商人の地位は低くない。向こうでは商人は市長や大臣とも対等に話をしているではないか」と考え、日本を代表する実業家への道を歩んでいった。

 渋沢自身が「私が財閥をつくろうと思えば、三菱や三井よりも大きなものができただろう」という趣旨のことを書いているが、これは本当だと思う。彼は世界を見ていたから、何をどうすれば儲かるのかがわかっていたが、それでも自分では財閥をつくらなかった。

 渋沢の心意気がよく伝わってくるのは、あるとき三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎が隅田川に船を浮かべて、渋沢を招き「私と手を組まないか。手を組めば日本の経済は自由に動かせる」と話したのに対し、はっきり断ったエピソードであろう。実際、当時の三菱は規模の大きな政商というぐらいで、三井も呉服業を分離して三井銀行と三井物産を設立してまもない頃だった。だから渋沢の考え方一つで、どんな財閥でもつくれたのだが、株式会社方式(合本主義)を日本に広め、商人の地位を高めることが渋沢の目指す道だった。

 その後、渋沢は、当時の海...

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