本当のことがわかる昭和史《6》人種差別を打破せんと日本人は奮い立った
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
若き田辺朔郎の琵琶湖疏水の偉業を支えたのも「愛国心」
本当のことがわかる昭和史《6》人種差別を打破せんと日本人は奮い立った(7)西洋人たちに見下されてたまるか
渡部昇一(上智大学名誉教授)
土木工学者・田辺朔郎は工部大学校(東大工学部の前身)時代、卒業論文で書いた琵琶湖疎水の工事計画が高く評価され、それをもとに琵琶湖から京都まで疎水が引かれたという。当時の学生には、「西洋人たちに見下されてたまるか」という愛国心の強烈さがあり、それが難事業を成功させる力になっていた。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第六章・第7回。
時間:5分38秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年9月14日
≪全文≫
 東大の建築学科の先生に、あるところで講演をしていただく機会があった。その先生の話によると、工部大学校(東大工学部の前身)造家学科の第五期生である土木工学者・田辺朔郎が卒業論文で書いた琵琶湖疎水の工事計画が当時の京都府知事に高く評価され、彼の卒業論文をもとにして琵琶湖から京都まで疎水が引かれたという。

 「現代の大学生にこんなことができますか」と尋ねると、いまの学生たちは卒業論文でもこんなことは考えていないということだった。しかも当時は、いまのように重機もないから手掘りである。それでも工部大学校を卒業したばかりでまだ二十三歳だった田辺朔郎は、京都府御用係として、前代未聞の大土木事業をやり遂げた。

 その先生に「なぜ当時の学生にそんなことができたのか」と聞くと、非常に感心したことに、「あの頃の学生の愛国心でした」との答えであった。「西洋人たちに見下されてたまるか」とか「彼らにできることができないで、たまるか」という愛国心の強烈さが、難事業を成功させる力になっていたということだった。人間には、ヘッドもハートも重要だが、やはりガッツがとびきり重要であることを、つくづく思い知らされる話であった。

 戦後の日本は、「頭のいい子供」を育てようとして、受験戦争に勝つような教育ばかりを一所懸命に行なった感じがある。それから「優しい子供」を育てるために、幼稚園などの運動会では、一等賞もビリもないように「みんなで手をつないでゴールに入りましょう」という教育まで行なわれた。いま問題になっている生活保護と同様に、どんなに怠惰で働く気のない人でも生活は保障してあげましょうという、ある種の思想に似てはいないか。

 日本の戦後教育では知識や優しさは重視されても、ガッツを教えられることはなかったと思う。だが、かつての日本では、頭の良さや心の優しさ、人柄の良さは美徳ではあっても、ガッツがなければ武士としては失格だった。いつでも腹が切れる覚悟がある人でなければいけなかった。

 いずれにしても、子供たちに勉強ばかりさせるのは怖いものだ。その点、韓国を見てみると、あんなに受験勉強ばかりの国では駄目だと思う。

 エドモンド・デュモランという人が書いた『Anglo-Saxon Superiority: to what it is due』という、1897年にフランスで出版された本がある。『...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦