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経済学のセンスを磨こう!
「経済学を身につけると、直感的判断が正しいかどうか自分でチェックできるようになる」――こう語るのは、大阪大学 社会経済研究所教授・大竹文雄氏です。これは大竹氏の著書『経済学のセンスを磨く』(日本経済新聞出版社)のまえがきに出てくる言葉ですが、なぜ直感的判断にチェックが必要なのでしょうか。
私たちは直感で判断するケースが多いのですが、直感は正しい場合もありますが、間違っている場合もあります。普段の何気ない生活なら、多少間違っていても問題ないかもしれませんが、仕事などで大きな意思決定を求められるときはどうでしょう。問題が出てくる場合も少なくないはずです。同書は、私たちの直感的判断、それに基づく行動や思考が経済的合理性から見て合っているのか、あるいはズレているのか、そのことを教えてくれる良書なのです。そのズレを知ることは、本書タイトルにある通り、「経済学のセンスを磨く」ことと直結するということです。
オリンピックには、外国からの観光客が増えるといった経済効果が見込める一方、開催費用をめぐってはその莫大さゆえ否定的な意見の人も少なくありません。2020年東京オリンピックに関していえば、いまだその開催費用の問題で揺れているところです。そう聞くと、直感的に「オリンピックは結局、経済効果があまり望めないのでは」と考えてしまうかもしれません。しかし、大竹氏はここで、オリンピックの意外な経済効果を教えてくれています。結論からいうと、それは「オリンピック招致には輸出入を増やす」ということです。ではなぜオリンピックの招致が輸出入増加につながるのでしょうか。その理由にはなるほどと頷けるものがあります。
オリンピックを開催するためには非常にコストがかかります。そのため、諸外国の企業や投資家は次のように考えます。こんなにもコストがかかることにコミットしようとしているのだから、当国の政府は貿易の自由化を本気でしようとしているに違いなく、安心して投資ができる、と。つまり、オリンピックの開催は、諸外国にとっては「自由化のシグナル」であり、それが安心感となって投資の拡大につながり、それによって輸出の増加を促すことになるのです。
そして大竹氏は次のように本題を締めくくっています。「オリンピックというのは、様々なコミットメント手段として有効なのであり、将来の政策に関する安心感をもたらすのだ。それが本当のオリンピックの経済効果なのかもしれない。アベノミクスというのは、コミットメントの経済政策がその実態だとすれば、今後、そのコミットメントを守っていくことが、政策の成功への鍵となるはずだ」
このように、「経済学」というフィルターを通してみると、直感的判断のズレを確認することができ、その実態がよく見えてくるということですね。
大竹氏がテレビに出演したり、本書を出版する理由の中には、「経済学は役に立たない」という経済学の古いイメージを刷新したいという思いが強くあるのではないでしょうか。
同書にも書かれていることですが、現代の経済学と一般的にイメージされる伝統的な経済学はずいぶんと異なってきています。伝統的な経済学は合理的に行動するロボットのような人間像を前提に組み立てられてきましたが、現代の経済学は心理学や社会学などの最新の研究成果を取り入れ、現実的な人間像を前提として再構築されました。大竹氏の切実な思いの詰まった本書を読めば、現代の経済学の面白みと奥深さを発見できることでしょう。
http://www.nikkeibook.com/book_detail/26274/
http://www.iser.osaka-u.ac.jp/~ohtake/
私たちは直感で判断するケースが多いのですが、直感は正しい場合もありますが、間違っている場合もあります。普段の何気ない生活なら、多少間違っていても問題ないかもしれませんが、仕事などで大きな意思決定を求められるときはどうでしょう。問題が出てくる場合も少なくないはずです。同書は、私たちの直感的判断、それに基づく行動や思考が経済的合理性から見て合っているのか、あるいはズレているのか、そのことを教えてくれる良書なのです。そのズレを知ることは、本書タイトルにある通り、「経済学のセンスを磨く」ことと直結するということです。
オリンピックの意外な経済効果
同書は、「第1章 なぜ農家はレタスを処分するのか」「第2章 情けは人のためならず」「第3章 軽減税率はお金持ちに有利?」「第4章 教育の思わぬ効果」の4章立てで、25の事例が紹介されています。今回は、第1章のなかの「オリンピックの意外な経済効果」という項目について、少し深掘りしてご紹介します。オリンピックには、外国からの観光客が増えるといった経済効果が見込める一方、開催費用をめぐってはその莫大さゆえ否定的な意見の人も少なくありません。2020年東京オリンピックに関していえば、いまだその開催費用の問題で揺れているところです。そう聞くと、直感的に「オリンピックは結局、経済効果があまり望めないのでは」と考えてしまうかもしれません。しかし、大竹氏はここで、オリンピックの意外な経済効果を教えてくれています。結論からいうと、それは「オリンピック招致には輸出入を増やす」ということです。ではなぜオリンピックの招致が輸出入増加につながるのでしょうか。その理由にはなるほどと頷けるものがあります。
オリンピックを開催するためには非常にコストがかかります。そのため、諸外国の企業や投資家は次のように考えます。こんなにもコストがかかることにコミットしようとしているのだから、当国の政府は貿易の自由化を本気でしようとしているに違いなく、安心して投資ができる、と。つまり、オリンピックの開催は、諸外国にとっては「自由化のシグナル」であり、それが安心感となって投資の拡大につながり、それによって輸出の増加を促すことになるのです。
そして大竹氏は次のように本題を締めくくっています。「オリンピックというのは、様々なコミットメント手段として有効なのであり、将来の政策に関する安心感をもたらすのだ。それが本当のオリンピックの経済効果なのかもしれない。アベノミクスというのは、コミットメントの経済政策がその実態だとすれば、今後、そのコミットメントを守っていくことが、政策の成功への鍵となるはずだ」
このように、「経済学」というフィルターを通してみると、直感的判断のズレを確認することができ、その実態がよく見えてくるということですね。
NHK「オイコノミア」のあの先生!
実は大竹氏は、芥川賞作家の芸人の又吉直樹氏がレギュラーを務めるNHKの番組「オイコノミア」にも出演されており、丁寧かつ分かりやすい説明で評判の先生です。大竹氏がテレビに出演したり、本書を出版する理由の中には、「経済学は役に立たない」という経済学の古いイメージを刷新したいという思いが強くあるのではないでしょうか。
同書にも書かれていることですが、現代の経済学と一般的にイメージされる伝統的な経済学はずいぶんと異なってきています。伝統的な経済学は合理的に行動するロボットのような人間像を前提に組み立てられてきましたが、現代の経済学は心理学や社会学などの最新の研究成果を取り入れ、現実的な人間像を前提として再構築されました。大竹氏の切実な思いの詰まった本書を読めば、現代の経済学の面白みと奥深さを発見できることでしょう。
<参考文献>
『経済学のセンスを磨く』(大竹文雄著、日本経済新聞出版社)http://www.nikkeibook.com/book_detail/26274/
<関連サイト>
大竹文雄氏のホームページhttp://www.iser.osaka-u.ac.jp/~ohtake/
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