テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.04.30

インプラント治療、知っておきたいそのリスク

 最近では珍しくなくなったインプラントという治療。チタンでできたネジ状の人工歯根をあごの骨に埋め込むことで土台を作り、人工の歯を取り付け、根から支えて、まるで自分の歯のように機能させるものです。

 厚生労働省の「歯科医師需給問題を取り巻く状況」を見ると、歯科用インプラント材の生産輸入総数が平成14年の約50万個から、平成18年には2倍近くに増加しています。その後の平成18年から平成25年までの推移を見ても、減少した時期はあるものの、全体的に増加傾向にあります。

このように今なお需要のあるインプラントですが、その治療にはメリットとデメリットがあります。それぞれ見ていきましょう。

インプラントのメリット

まずはメリットですが、それは何と言っても自分の歯と同じように扱えることでしょう。歯が欠けたり、失われたりすると、食事も楽しめません。入れ歯よりも自分の歯のようにしっかり噛めるというのは大きな魅力です。

 さらに、見た目が良いこと、周りの歯を傷つけないこと、埋め込んだ歯は虫歯にはならないという利点もあります。生活が快適になる、言うなれば、生活の質(QOL)を維持・向上できるからこそ、多くの人がこの治療を行うのです。

インプラントのデメリット

 しかし、メリットが大きければ、デメリットも大きいというのがインプラント。まず、デメリットとして挙げられるのは、治療費が非常に高額だということです。インプラント治療には保険が適用されません。その費用は1本あたり30~50万円が相場だと言われています。

次に挙げられるのは、術後のメンテナンスです。インプラントは人工の歯なので、虫歯になることはありません。しかし、天然の歯と同じで、その手入れを怠ると、細菌が増加して炎症を引き起こしてしまいます。そのリスクを抑えるため、またインプラントを長持ちさせるためには、定期的な通院で検診やクリーニングを行うことが推奨されています。

また、次のようなリスクもあります。インプラントは骨とくっつくことで機能するのですが、うまく骨とくっつかない、もしくは、はがれてしまうということがあります。その場合は、インプラントを抜かざるを得ません。

さらに怖いのが、手術の際に下あごの神経を傷つけてしまうことで起こる下歯槽神経麻痺。あごの感覚が麻痺してしまい、咀嚼などあごを思うように動かすことができなくなってしまうのです。

また、2007年にはドリリングでできた穴からの大量出血による死亡事故が起きています。担当医は長い間経験を積んできたベテラン医師だったとのことです。これは極端な例かもしれませんが、こういったリスクもあるということを知っておくのが大事です。

インプラント以外の方法とは

 そんなインプラントは怖くてできない!という方にも、インプラント以外の治療法はあります。

 一つはブリッジ。抜けた歯の両隣の歯を削り、繋げてかぶせ物をすることによって固定するやり方です。隣の健康な歯を削らなくてはならないというデメリットがありますが、大きな事故に繋がるということはありません。また、銀歯は見た目が気になるという方は、セラミックの白い歯を入れることもできます。

 もう一つは義歯(入れ歯)。まだ年齢的に入れ歯は…と思う人も多いかもしれませんが、歯や骨を削ることなく綺麗な状態を保つことができ、取り出しやすいので、クリーニングがしやすいなど、メリットも多いのです。

治療を受ける前にしっかりとした知識を

より快適に、より美しく、と技術は進んでいきますが、当然、中には高度なテクニックを要する難しい治療があります。インプラントもまた、外科手術を必要とする大がかりなものです。大事な部分に触らなくてはならない、命にかかわることもあるということを患者の方がよく理解しなくてはなりません。歯科医からしっかりとデメリットやリスクを聞いて、治療を受けるか判断しましょう

<参考サイト>
・厚生労働省 歯科医師需給問題を取り巻く状況
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000087739.pdf
・インプラントとは?
http://www.implant.ac/implant_html/care/kiso/implant_kihon.htm
・法と経済のジャーナル 出河 雅彦 『歯科インプラント手術死亡事故の原因と結果、教訓 』
http://judiciary.asahi.com/fukabori/2014012400004.html
・おざわ歯科医院 インプラントの事実を伝える対談
http://implant-risk.com/
・Natural Clinic OSAKA インプラント以外で治したい
https://www.sizensika.jp/study/case1.html
・歯周病とインプラント周囲炎のお話し
http://www.yusinkai.jp/perio/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

人間はどうやって「理解する」のか?『学力喪失』から考える

人間はどうやって「理解する」のか?『学力喪失』から考える

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
3

軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか

軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか

クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策

台湾でのクーデターを想定したとき、重要になるのがその成功後の民政移管である。それは民主主義を標榜する民進党の正統性を保つためであるが、それはいったいどのように果たされうるのか。一度は民主化に成功した李登輝政権時...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/11
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
4

仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考

仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考

『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない

新著『還暦からの底力』のなかには、「人生100年時代」を幸せに送るためのヒントが詰まっている。今回のシリーズでは、その本をもとに考え方の軸を根本から変える秘訣を伺った。その一つが「定年型社会」に対する提言だ。本人が...
収録日:2020/06/30
追加日:2020/08/01
出口治明
立命館アジア太平洋大学(APU)学長特命補佐
5

伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」

伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」

伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代

伊能忠敬の生涯を通して第二の人生の生き方、セカンドキャリアについて考えるシリーズ講話。九十九里の大きな漁師宿に生まれ育った忠敬だが、船稼業に向かない父親と親方である祖父との板ばさみに悩む少年時代だった。複雑な家...
収録日:2020/01/09
追加日:2020/03/01