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「普通」の生活に月収50万円は必要なのか?
「普通の家庭」と言われたとき、みなさんはどんな家族を想像しますか。家族構成は?年収は?日ごろ食べているもの、家の様子、子どもはどんな学校に通っていて、妻は専業主婦なのかパートタイマーなのか?……などなど、どんなものを思い浮かべるでしょう。
2017年4月、朝日新聞デジタルによると、埼玉県の県労働組合連合会(埼労連)が、埼玉で「普通の生活」には月収入50万円が必要という算出を出したそうです。イメージしていた家庭像と照らし合わせるとどうでしょう。具体的な数字を見つめると、「多すぎる」「少なすぎる」とさまざまな意見が出て来ると思います。
果たして、「普通の生活」には、本当に月収50万円が必要なのでしょうか?
埼労連では、家族構成のほかに、どんな場所で昼食を食べているのかや、買い物の場所や支出、日常生活でのお金の使い方など、「生活実態調査」を行いました。また、生活に必要な持ち物を聞く「持ち物財調査」のアンケートも合わせて実施され、埼労連の組合員など597人の回答を元に、月々の生活費を算出したのです。内訳は、家賃約5万7000円(2LDK、約43平米、さいたま市郊外在住)、食費約10万8000円、交通・通信費約3万8000円、教育費約2万7000円、教養娯楽費約4万6000円などで、合計は約43万円。また、子どもが大学生に通うようになると出費は多くなり、50代には月収50万以上が必要となる計算です。
しかし、これはあくまでアンケートによる平均値を取ったものです。「こう生きなければダメ!」という指数ではなく、具体的に意識をしている、いないにかかわらず、多くの人が希望している生活水準の平均を可視化したものです。たしかに食費が高いとはいえ、30日で割ったところ一人頭1日に使える食費は1000円程度。
ぼんやりと浮かべていた「普通の家庭」のイメージと比べるとどうでしょうか。日常生活を送る上でかかる費用を考えると、過度な節約をせずに暮らすならば、非現実的な額とはいえないのかもしれません。
現在、日本国内には非正規雇用で働いている方が4割にも達しています。時給換算で月収50万円と考えると、月に20日間、8時間ずつ働いたとして時給は約3200円が必要となります。先日、最低賃金1500円を掲げたデモが話題となりましたが、現在埼玉県の平均賃金は845円です。仮に時給1500円から月収50万をクリアしようとすると、過労死のレベルを超えてしまうのです。
たしかに節約に節約、工夫に工夫を重ねれば生きて行くことはできるでしょう。しかし、今回の調査と、日々の節約については別問題です。自由に扱うことのできる金額が減るということは、余暇や趣味に対する消費行動が消極的になり、生活に無理を強いる状況の家庭が増えれば増えるほど、結果的に経済は縮小の一途をたどります。
現在の日本において、格差を是正し、1部に集中している富を再分配すること、賃金を上げていくことが課題としてあげられています。今回の算出も、こうした改革を推し進めるために帳尻を合わせたと見えるかもしれません。しかし、年々物価は不安定で、先送りとなっている消費増税もある中で、この数値は真剣に受け止めなくてはいけないものなのです。
2017年4月、朝日新聞デジタルによると、埼玉県の県労働組合連合会(埼労連)が、埼玉で「普通の生活」には月収入50万円が必要という算出を出したそうです。イメージしていた家庭像と照らし合わせるとどうでしょう。具体的な数字を見つめると、「多すぎる」「少なすぎる」とさまざまな意見が出て来ると思います。
果たして、「普通の生活」には、本当に月収50万円が必要なのでしょうか?
モデルケースは子ども2人の4人家族
ではこの月収50万円が必要とされる家族像とはどんなものか、挙げてみましょう。埼労連が基準としたモデルケースは、「30代夫婦で夫は正社員、妻はパート勤務、子どもは小学生と幼稚園児。クルマはなし」という設定です。なるほど、確かに一般的な家庭像に見えます。埼労連では、家族構成のほかに、どんな場所で昼食を食べているのかや、買い物の場所や支出、日常生活でのお金の使い方など、「生活実態調査」を行いました。また、生活に必要な持ち物を聞く「持ち物財調査」のアンケートも合わせて実施され、埼労連の組合員など597人の回答を元に、月々の生活費を算出したのです。内訳は、家賃約5万7000円(2LDK、約43平米、さいたま市郊外在住)、食費約10万8000円、交通・通信費約3万8000円、教育費約2万7000円、教養娯楽費約4万6000円などで、合計は約43万円。また、子どもが大学生に通うようになると出費は多くなり、50代には月収50万以上が必要となる計算です。
食費に10万円は贅沢に見えるけれど……
この調査結果に、ネットでは物議が醸されました。「4人家族で食費に10万というのは使い過ぎではないか」、「月収50万、年収600万はないと人並みじゃないのか」など、多くの人がこの額面に少なからず衝撃を受けています。しかし、これはあくまでアンケートによる平均値を取ったものです。「こう生きなければダメ!」という指数ではなく、具体的に意識をしている、いないにかかわらず、多くの人が希望している生活水準の平均を可視化したものです。たしかに食費が高いとはいえ、30日で割ったところ一人頭1日に使える食費は1000円程度。
ぼんやりと浮かべていた「普通の家庭」のイメージと比べるとどうでしょうか。日常生活を送る上でかかる費用を考えると、過度な節約をせずに暮らすならば、非現実的な額とはいえないのかもしれません。
「月収50万」から見えてくる日本の現状
しかし、現実としてこの月収50万、年収600万に届いている人はどれだけいるのでしょうか?現在、日本国内には非正規雇用で働いている方が4割にも達しています。時給換算で月収50万円と考えると、月に20日間、8時間ずつ働いたとして時給は約3200円が必要となります。先日、最低賃金1500円を掲げたデモが話題となりましたが、現在埼玉県の平均賃金は845円です。仮に時給1500円から月収50万をクリアしようとすると、過労死のレベルを超えてしまうのです。
たしかに節約に節約、工夫に工夫を重ねれば生きて行くことはできるでしょう。しかし、今回の調査と、日々の節約については別問題です。自由に扱うことのできる金額が減るということは、余暇や趣味に対する消費行動が消極的になり、生活に無理を強いる状況の家庭が増えれば増えるほど、結果的に経済は縮小の一途をたどります。
現在の日本において、格差を是正し、1部に集中している富を再分配すること、賃金を上げていくことが課題としてあげられています。今回の算出も、こうした改革を推し進めるために帳尻を合わせたと見えるかもしれません。しかし、年々物価は不安定で、先送りとなっている消費増税もある中で、この数値は真剣に受け止めなくてはいけないものなのです。
<参考サイト>
・朝日新聞デジタル:埼玉で人並みの生活、月収50万円必要 県労連が調査
http://www.asahi.com/articles/ASK4J3VPPK4JUTNB004.html
・埼玉県ホームページ:埼玉県の最低賃金・最低工賃
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0808/912-2009-1204-137.html
・朝日新聞デジタル:埼玉で人並みの生活、月収50万円必要 県労連が調査
http://www.asahi.com/articles/ASK4J3VPPK4JUTNB004.html
・埼玉県ホームページ:埼玉県の最低賃金・最低工賃
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0808/912-2009-1204-137.html
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