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空気が読めない理由は〇〇だからかもしれない?
日本社会では「空気を読むこと」が強く求められます。そのため、「人の気持ちがわからない」「同じ失敗を繰り返す」「極端なこだわりがある」など、一言で言えば、「空気が読めない」行動はたいへん嫌われます。一般的に「空気が読めない」ことに対しての国民の意識・関心は高く、それについての記事や書籍はあとを絶ちません。
このコラムでは、「空気が読めない」その人は「発達障害」なのではないか、という前提になってお話を進めたいと思います。この前提を立てた理由は、発達障害のひとつのADHD(注意欠如多動性障害)の特性が、総人口の10%以上にみられるという報告があるからです。10%以上、すなわち10人に1人以上というと、かなりの高確率だと思います。
その一方で、「発達障害かもしれない症候群」も少なくありません。自分に対しても、他人に対しても、性急に発達障害だと決めつけるのは避けるべきだと思います。
以下、主に『発達障害』(岩波明著、文藝春秋)を参考にご案内します。
「発達障害」には、有名なアスペルガー症候群などの「自閉症スペクトラム(ASD)」と、冒頭でも紹介した「注意欠如多動性障害(ADHD)」という2つの代表的な疾患があります。いずれにしても、発達障害は生まれつきの疾患で、成人になってから発症するものではありません。
また、共通して発達障害には、ずば抜けた記憶力や計算力などにおいて天才的な能力を示す不思議な症状を伴うことがあります。その症例としては、映画「レインマン」のモデルとなったキム・ピークがよく知られています。キム・ピークはなんと9000冊もの書籍を細部にいたるまで暗記していました。
「ASD」と「ADHD」は、表面上はかなり似ているのですが、この2つを見分けるポイントは、「同一性へのこだわり(常同性)」があるか、否かです。「ASD」の場合、特定の対象に強い興味を示したり、反復的で機械的な動作がみられます。
「ADHD」の主な症状は、「多動・衝動性」による落ち着きのなさと「不注意」です。ASDのように常同性へのこだわりを示すのはごく稀です。
本書に書かれていることでもありますが、病院にかかる場合、誤診にはくれぐれもご用心ください。成人の発達障害に詳しい専門医は、現状、多くはないようです。誤診にあうと、不適切な処置によって、症状がより悪化する可能性があります。
まだまだ数は不足していると言えますが、発達障害専門のデイケアもあります。デイケアを利用できる病院は発達障害に強い病院と言えるかもしれません。ちなみに、「Kaien」という発達障害に特化した就労移行支援事業もあります。
ADHDに関しては、適切に診断されれば、カウンセリングや投薬による治療が可能です。もし、ストラテラやコンサータといった西洋薬の投薬による副作用が心配という方は、漢方薬治療という選択もあります。ただし、漢方薬も薬なので多少の副作用はありますし、やはり診療する医師の良し悪しが、治療を大きく左右することは他の病院と同様です。
ASDについては、特効薬的な薬物はまだありません。将来、特効薬の開発を待ちながらも、私たちは、ただ「空気を読めない」と彼らを拒絶するのではなく、「発達障害とどう向き合うか」をきちんと考えていく必要があると思います。
このコラムでは、「空気が読めない」その人は「発達障害」なのではないか、という前提になってお話を進めたいと思います。この前提を立てた理由は、発達障害のひとつのADHD(注意欠如多動性障害)の特性が、総人口の10%以上にみられるという報告があるからです。10%以上、すなわち10人に1人以上というと、かなりの高確率だと思います。
その一方で、「発達障害かもしれない症候群」も少なくありません。自分に対しても、他人に対しても、性急に発達障害だと決めつけるのは避けるべきだと思います。
以下、主に『発達障害』(岩波明著、文藝春秋)を参考にご案内します。
発達障害と天才
「発達障害」は、事件やセンセーショナルな話題と関連づけて伝えられてきたため、その名ばかりが一人歩きし、高い知名度にもかかわらず、正しく中身を理解している人は精神科医でさえもごくわずかに過ぎないそうです。「発達障害」には、有名なアスペルガー症候群などの「自閉症スペクトラム(ASD)」と、冒頭でも紹介した「注意欠如多動性障害(ADHD)」という2つの代表的な疾患があります。いずれにしても、発達障害は生まれつきの疾患で、成人になってから発症するものではありません。
また、共通して発達障害には、ずば抜けた記憶力や計算力などにおいて天才的な能力を示す不思議な症状を伴うことがあります。その症例としては、映画「レインマン」のモデルとなったキム・ピークがよく知られています。キム・ピークはなんと9000冊もの書籍を細部にいたるまで暗記していました。
「逃げ恥」の津崎くんも発達障害?
「ASD」の主な症状は、対人関係の障害がみられるとともに、強いこだわりを示すことです。具体的には、2016年に大ヒットしたTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で星野源さんが演じた津崎くんはASDではないかと著書『発達障害』において岩波明氏は指摘しています。津崎くんは、高学歴で仕事の評価は高いが、対人関係は苦手、36歳になるまで女性とまったく交際したことがなく、些細なことに対するこだわりが非常に高いという人物です。「ASD」と「ADHD」は、表面上はかなり似ているのですが、この2つを見分けるポイントは、「同一性へのこだわり(常同性)」があるか、否かです。「ASD」の場合、特定の対象に強い興味を示したり、反復的で機械的な動作がみられます。
「ADHD」の主な症状は、「多動・衝動性」による落ち着きのなさと「不注意」です。ASDのように常同性へのこだわりを示すのはごく稀です。
「発達障害かもしれない」と思ったら
家族や友人、あるいは自分が「発達障害かもしれない」と思ったら、まず大事なことは慌てずに「発達障害」についてよく知ることです。そのとき、新書『発達障害』(岩波明著、文藝春秋)は、参考文献としてたいへん役に立ちます。本書に書かれていることでもありますが、病院にかかる場合、誤診にはくれぐれもご用心ください。成人の発達障害に詳しい専門医は、現状、多くはないようです。誤診にあうと、不適切な処置によって、症状がより悪化する可能性があります。
まだまだ数は不足していると言えますが、発達障害専門のデイケアもあります。デイケアを利用できる病院は発達障害に強い病院と言えるかもしれません。ちなみに、「Kaien」という発達障害に特化した就労移行支援事業もあります。
ADHDに関しては、適切に診断されれば、カウンセリングや投薬による治療が可能です。もし、ストラテラやコンサータといった西洋薬の投薬による副作用が心配という方は、漢方薬治療という選択もあります。ただし、漢方薬も薬なので多少の副作用はありますし、やはり診療する医師の良し悪しが、治療を大きく左右することは他の病院と同様です。
ASDについては、特効薬的な薬物はまだありません。将来、特効薬の開発を待ちながらも、私たちは、ただ「空気を読めない」と彼らを拒絶するのではなく、「発達障害とどう向き合うか」をきちんと考えていく必要があると思います。
<参考文献・参考サイト>
・『発達障害』(岩波明著、文藝春秋)
・発達ナビ:ストラテラの効果・副作用とは?
https://h-navi.jp/column/article/35026152
・一二三堂薬局:【 ADHD(注意欠如・多動症または注意欠陥・多動性障害) 】と漢方薬による治療
http://www.123do.co.jp/cgi-bin/illness/archives/95.html
・『発達障害』(岩波明著、文藝春秋)
・発達ナビ:ストラテラの効果・副作用とは?
https://h-navi.jp/column/article/35026152
・一二三堂薬局:【 ADHD(注意欠如・多動症または注意欠陥・多動性障害) 】と漢方薬による治療
http://www.123do.co.jp/cgi-bin/illness/archives/95.html
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