テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.08.17

地震の専門家が語る地震対策の「最大の敵」とは?

日本では世界平均の約10倍の地震が起きるという事実

 地震大国・日本。あまりありがたい呼称ではありませんが、世界の地震の約10パーセントが日本付近で起きているという事実と、日本の面積は地球の表面積の1パーセント程度という事実の2つを掛け合わせると、「日本では世界平均の約10倍の地震が起こる」という計算になってしまうということも、また事実です。

 こうした現実が避けられないのなら、まず地震のことをよく知ることから始めるべきではないでしょうか。

4つのプレートと2つの地震のタイプ

 地震のメカニズムに詳しい東京大学地震研究所教授の纐纈一起氏によると、地震は地表を覆う岩盤(プレート)がそれぞれ動いて境目で衝突することによって起こります。日本付近には太平洋、フィリピン海、ユーラシア、オホーツクと4つものプレートが存在するので、結果的に日本は地震の多い国になってしまうわけです。

 日本付近で起きる地震は2つのタイプに分けられます。いわゆる海の地震と陸の地震です。海の地震は「プレート境界地震」と呼ばれ、境界の断層が一気にずれることで起きるため、マグニチュード8~9レベルの大規模地震になることが多いのだそうです。かつ、震源が浅い場合は津波を引き起こします。津波と聞いてお分かりのように、東日本大震災はこのタイプでした。

 一方、陸の地震は「地殻内地震」と呼ばれ、岩盤のひずみが地殻内の活断層で解放されて起きる地震のことです。記憶に新しいところでは、2016年の熊本地震がこのタイプになります。海の地震に比べれば規模は小さく頻度もさほど多くはないのですが、起きる場所によっては直下型地震として甚大な被害を及ぼすことになり、1995年の阪神・淡路大震災はまさにその典型例でした。

東日本大震災の恐ろしさを物語るいくつかの特徴

 纐纈氏は、「3.11」として私たちの記憶に刻まれた東日本大震災にはいくつかの特徴があると言います。まず、それは超巨大と言っていい海の地震であり、マグニチュード9を記録したことです。また、津波の被害が甚大であったことに比べて、揺れによる被害は限定的であったという特徴を持ちます。そして、本震後の余震が多く、東北以外にも大きな誘発地震を引き起こしました。

 この「地震は一度では収まらない」という点に、多くの人が恐怖感を抱いているのではないでしょうか。東日本大震災でも、本震直後に大きな余震が続き、人々を眠れない日々に陥れたばかりでなく、震災から6年経過した2017年においてさえ、震度5クラスの余震が起こっているといいます。

最大の特徴、そして盲点は「想定外」

 しかし、纐纈氏が将来の地震対策のためにも心しておかなければならない最重要ポイントとして挙げるのは、東日本大震災の規模が「想定外」であったということです。もともとの長期評価では、三陸沖北部、宮城県沖、福島県沖など6つの小領域で、それぞれ独立した地震が起こるという予測がされていました。

 ところが、実際には6つの領域が同時に活動して超ド級の地震となったのです。この現象は、当時の政府の地震調査委員会の委員長をして「複数の領域が連動したのは想定外であり、地震研究の限界」と言わしめました。

「想定外を想定する」が防災の鉄則

 日本が領域内に大きな4つのプレートを有していること。そのプレートの運動に伴って日本列島にひずみがたまるということ。こうした現象は変えることはできません。それに、現実的には、どんなに長期のデータを綿密に分析して評価、予測をしても、自然はいつも人間の一枚上手をいく、いつも「想定外」の余地を残しているということです。

 こうした現実を変えられないのならば、一人一人、できる限りの地震対策をした上で、「想定外があることを想定する」という心がまえを持つことが、防災の鉄則といえるのではないでしょうか。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境

花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(3)弥生時代の環境と気候

古代の気候を推測するために、研究者はさまざまな方法を駆使してきた。海水面の位置をもとにした「弥生の小海退」説をはじめ、花粉や炭素濃度などから行う分析法には難点もある。その難点を克服した方法によって見えてきた弥生...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/04/02
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授
2

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援

グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01
石黒憲彦
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長
3

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新

前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
與那覇潤
評論家
4

きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ

きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ

大谷翔平の育て方・育ち方(5)栗山監督の言葉と二刀流への挑戦

高校を卒業した大谷翔平選手には、選手としての可能性を評価してくれた人、そのための方策を本気で考えてくれた人がいた。それは、ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウト小島圭市氏と、元日本ハムファイターズ監督で前WBC...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/31
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
5

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す

国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員