テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.10.13

人のからだで一番「ウソがつけない」場所とは?

 私たちの体でもっとも正直な部位はどこだと思いますか?目、顔、指先などさまざまな意見が飛び交いそうですが、元FBI捜査官で「人間ウソ発見器」の異名を持つジョー・ナヴァロ氏は「足・脚である」と、著書『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』で述べています。言葉以外のコミュニケーション手段であるノンバーバル(非言語)コミュニケーションの研究を重ねたナヴァロ氏は、自身の取調べなどの経験も生かして、さまざまなしぐさのメカニズムを本書で説明しています。

無意識に行動してしまう「しぐさ」のメカニズム

 しぐさは、私たちの意識しないところで起こるノンバーバル行動のひとつで、このはたらきは人間の脳の一部である大脳辺縁系によるもの。大脳辺縁系は感情を司る役割も持ち、インプットされた情報に対して反射的に反応してしまうため、私たちの思考を介する前に体が勝手に動いてしまうのです。

 私たちがコントロールできないしぐさは、言葉よりもはるかに素直に私たちの感情を語っています。普段私たちが気にしないしぐさですが、実はさまざまな情報が隠されているのです。今回はいくつかのしぐさと、そのしぐさが意味するものを紹介していきましょう。

しぐさその1:行きたい方向を示す足先

 あなたが誰かと話しているとき、きっと相手の顔と体はこちらを向いているでしょう。では足先はどうでしょうか?顔ではウソをつけても、本能に忠実である足・脚ではウソをつくことができません。相手の足先がこちらを向いていればあなたとの会話を楽しんでいますが、もし足先が出口に向かっていたら、相手は何らかの事情でその会話を終わらせたいと思っているのです。

しぐさその2:脚を交差させて立つ

 もし脅威が訪れることを少しでも想定していたら、こんなバランスの悪い立ち方はしないはずです。咄嗟に脅威から逃げ出す体勢を作ることは出来ないからです。つまり、そういった脅威に怯えなくてすむ状況に置かれているということがわかります。これは、例えば一緒にいる相手を信頼している証拠ともいえます。

しぐさその3:首や喉を触る、撫でる

 人間はストレスを感じると、自分が落ち着いた状態に戻るために「なだめ行動」をしますが、このしぐさはその代表例です。特に女性は不安や心配事があると首のくぼみに手をあてたり、ネックレスを指先でいじったりします。この行動が起こるということは、その直前にウソをつくとか聞きたくないことを聞くなどといった、ストレスを感じる何かがあったことがうかがえます。

しぐさその4:胴体を大きく広げて座る

 リラックスしているこの行動は快適であることを示していますが、話し合いの場でこういった態度をとることは縄張りや優位性の主張になります。万が一、会議の場などで自分より立場が上の人の前でこの行動をとると、相手の気分を害する行動になるので気をつけるようにしましょう。

しぐさその5:重力に逆らう行動をとる

 応援しているチームが勝利したときに高く突き上げる拳、遊園地を楽しみにしている子どもが椅子に座ってぶらつかせる脚など、嬉しいと思う気持ちは、体のどの部位も重力に逆らう動きを見せます。嬉しいことがあるとスキップしたくなるのも、同じ理由からのものです。

しぐさはこの行動だとこう、と決めつけてはいけない

 いかがでしたか?意識したことはないけれど、「言われてみれば確かにそうかもしれない」と思うものもあったのではないでしょうか。ただし、しぐさから相手の感情を判断するときには短絡的に決めつけるのではなく、前後関係を考える必要があります。足先が出口に向いているのはあなたの話に興味がないのではなく、次の約束の時間に間に合わないだけかもしれないからです。そのように、人間の行動にはさまざまな可能性があることを忘れないようにしましょう。

<参考文献>
『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』(ジョー・ナヴァロ/マーヴィン・カーリンズ著、西田美緒子翻訳)、河出文庫)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

契機は白村江の戦い…非常時対応の中央集権国家と防人の歌

契機は白村江の戦い…非常時対応の中央集権国家と防人の歌

「集権と分権」から考える日本の核心(2)非常時対応の中央集権と東アジア情勢

律令国家は中国の先進性に倣おうと始まったといわれるが、実際はどうだろうか。当時の日本は白村江の戦いの後、唐と新羅が日本に攻め込むのではないかという危機感から「防人」という徴兵制をつくった。徴兵には戸籍を充実させ...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/08/25
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
2

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機

混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において...
収録日:2025/06/19
追加日:2025/08/13
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
3

カーボンニュートラル達成へ、エネルギー政策の変革は必須

カーボンニュートラル達成へ、エネルギー政策の変革は必須

日本のエネルギー政策大転換は可能か?(3)エネルギー政策大転換への提言

洋上や太陽光を活用した発電の素地がありながらその普及が遅れている日本。その遅れにはどのような要因があるのだろうか。最終話では、送電網の強化など喫緊の課題を取り上げるとともに、エネルギー政策を根本的に変換させる必...
収録日:2025/04/04
追加日:2025/08/24
鈴木達治郎
長崎大学客員教授 NPO法人「ピースデポ」代表
4

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性

トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジア...
収録日:2025/06/23
追加日:2025/08/21
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授
5

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(4)社会的時差ボケとメンタルヘルス

社会的時差ボケは、特に若年層にその影響が大きい。それはメンタルヘルスの悪化にもつながり、彼らの幸福度を低下させるため、ウェルビーイングの危機ともいうべき事態を招くことになる。ではどうすればいいのか。欧米で注目さ...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/23
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長