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激増する「異業種参入」は上手くいくのか?
掃除機のダイソンがEV(Electric Vehicle/電気自動車の略)市場へ、学習塾の公文式が認知症予防ビジネスに、ソニーとパナソニックは介護事業に参入するなど、「異業種参入」がいま激増しています。
もちろん、その挑戦には成功もあれば失敗もあります。昨今の異業種参入の例をいくつか検証してみたいと思います。
ところで、ダイソンにできるなら日本の家電のメーカーにもできるのではないかと思いたくなりますが、現実的に、日本企業にもEVへの異業種参入のチャンスはあるのでしょうか。
「@niftyニュース」の井元康一郎氏(自動車ジャーナリスト)の記事によると、日本のEV技術は世界最先端レベルであり、EVのスタートアップ自体は、雨後の筍のごとく出現しているのだそうです。しかしながら、失敗例が続いているため、「ステークスホルダーがアレルギー反応を示す傾向が強い」ということです。
そんななか、「環境ビジネスオンライン」において、EV普及を推進している環境コンサルタントの村沢義久氏は「日本の大手家電メーカーの中にも参入が噂されるところがある」と述べています。
EV参入に対して、ダイソンがもたらしたポジティブなイメージが持続しているうちは、ネガティブイメージの強い日本においても、支持される可能性が高いのではないでしょうか。
2000年度の「介護保険制度」開始によって、介護ビジネスへの異業種参入が相次ぎました。「医療事務のニチイ学館、教育事業のベネッセ、警備会社のセコムなどがその代表例」です。
しかしながら、事業者は「(1)3年ごとの報酬改定(どんどん下がっている)、(2)介護人材が採用できない、(3)利用者が獲得できない、(4)厳しい決まり(法律・規制等)」で縛られており、違反すると退場させられる」ため、「実際は失敗して、撤退するケースが多いのが現状」なのだそうです。
それでも「大手資本が運営する都心にある一部の高級有料老人ホーム系は、堅実に事業拡大」しています。気になる「異業種から介護サービスに参入した企業は、『本業との相乗効果』を狙っているというが、その結果が見えてくるまでにはまだ時間がかかりそう」とのこと。
「日経デジタルヘルスケア」によると、2017年3月期中間決算において、ニチイとベネッセは営業利益を伸ばしています。
一方、成功例として、富士フイルムの化粧品や森下仁丹のバイオカプセルの例を挙げて、「やはり企業にとって大事なのはヒト、カネ、モノ」であり、「びくともしない土台とオリジナル性が求められます」と述べています。
非常に簡潔で納得のいく説明です。介護ビジネスの例では、「儲かる」という理由だけで独自性なき参入者が押し寄せました。新規参入、異業種参入はそう簡単にはいきません。
異業種参入は、大企業だから成功するというわけでもありません。過去にオムロン、ユニクロは農業に参入し、失敗しました。成功の大前提は、倉田氏が指摘するように「ヒト、カネ、モノ」の充実と「オリジナル性」がポイントの一つなのかもしれません。
ただし、絶対はありません。会社の体力、業界の性格、参入のタイミング、その他さまざまな要素の複雑な組み合わせが、結果を左右するといえるでしょう。
もちろん、その挑戦には成功もあれば失敗もあります。昨今の異業種参入の例をいくつか検証してみたいと思います。
日本の大手家電メーカーもEV参入か
異業種参入でも最も注目を集めているのはやはり、ダイソンのEVへの参入でしょう。創業者のジェームズ・ダイソン氏は「スポーツカーでも低価格車でもない、現在のEVとは異なるクルマになる」とその構想を述べています。ところで、ダイソンにできるなら日本の家電のメーカーにもできるのではないかと思いたくなりますが、現実的に、日本企業にもEVへの異業種参入のチャンスはあるのでしょうか。
「@niftyニュース」の井元康一郎氏(自動車ジャーナリスト)の記事によると、日本のEV技術は世界最先端レベルであり、EVのスタートアップ自体は、雨後の筍のごとく出現しているのだそうです。しかしながら、失敗例が続いているため、「ステークスホルダーがアレルギー反応を示す傾向が強い」ということです。
そんななか、「環境ビジネスオンライン」において、EV普及を推進している環境コンサルタントの村沢義久氏は「日本の大手家電メーカーの中にも参入が噂されるところがある」と述べています。
EV参入に対して、ダイソンがもたらしたポジティブなイメージが持続しているうちは、ネガティブイメージの強い日本においても、支持される可能性が高いのではないでしょうか。
ニチイ、ベネッセ、大手資本が勝つ介護ビジネス
「ダイヤモンドオンライン」では「介護ビジネスへの新規参入がことごとく失敗する理由」という記事で、介護ビジネスへの異業種参入について述べています。2000年度の「介護保険制度」開始によって、介護ビジネスへの異業種参入が相次ぎました。「医療事務のニチイ学館、教育事業のベネッセ、警備会社のセコムなどがその代表例」です。
しかしながら、事業者は「(1)3年ごとの報酬改定(どんどん下がっている)、(2)介護人材が採用できない、(3)利用者が獲得できない、(4)厳しい決まり(法律・規制等)」で縛られており、違反すると退場させられる」ため、「実際は失敗して、撤退するケースが多いのが現状」なのだそうです。
それでも「大手資本が運営する都心にある一部の高級有料老人ホーム系は、堅実に事業拡大」しています。気になる「異業種から介護サービスに参入した企業は、『本業との相乗効果』を狙っているというが、その結果が見えてくるまでにはまだ時間がかかりそう」とのこと。
「日経デジタルヘルスケア」によると、2017年3月期中間決算において、ニチイとベネッセは営業利益を伸ばしています。
ネガティブ参入や簡単にマネできる事業展開は長続きしない
「日刊ゲンダイ」では、株式評論家の倉田慎之介氏が「追い込まれてのネガティブ参入や、簡単にマネできるような事業展開は長続きしないことが多い」と失敗する理由を指摘しています。一方、成功例として、富士フイルムの化粧品や森下仁丹のバイオカプセルの例を挙げて、「やはり企業にとって大事なのはヒト、カネ、モノ」であり、「びくともしない土台とオリジナル性が求められます」と述べています。
非常に簡潔で納得のいく説明です。介護ビジネスの例では、「儲かる」という理由だけで独自性なき参入者が押し寄せました。新規参入、異業種参入はそう簡単にはいきません。
異業種参入は、大企業だから成功するというわけでもありません。過去にオムロン、ユニクロは農業に参入し、失敗しました。成功の大前提は、倉田氏が指摘するように「ヒト、カネ、モノ」の充実と「オリジナル性」がポイントの一つなのかもしれません。
ただし、絶対はありません。会社の体力、業界の性格、参入のタイミング、その他さまざまな要素の複雑な組み合わせが、結果を左右するといえるでしょう。
<参考サイト>
・@niftyニュース:ダイソンまで参入のEV スタートアップ企業の「本当の評価」
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12180-619625/
・ダイヤモンドオンライン:介護ビジネスへの新規参入がことごとく失敗する理由
http://diamond.jp/articles/-/106534?page=2
・日経デジタルヘルス:介護大手各社の2017年3月期中間決算出そろう
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/327421/120900031/?ST=health
・日刊ゲンダイ:スーツの青山は焼肉…企業の“異業種参入”買いか見送りか
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/199188/2
・@niftyニュース:ダイソンまで参入のEV スタートアップ企業の「本当の評価」
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12180-619625/
・ダイヤモンドオンライン:介護ビジネスへの新規参入がことごとく失敗する理由
http://diamond.jp/articles/-/106534?page=2
・日経デジタルヘルス:介護大手各社の2017年3月期中間決算出そろう
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/327421/120900031/?ST=health
・日刊ゲンダイ:スーツの青山は焼肉…企業の“異業種参入”買いか見送りか
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/199188/2
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