社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.11.16

なぜコンビニのクジは「700円」なのか?

 「おにぎり100円キャンペーン」「パスタ、スパゲティー50円引き」

 誰もが利用するコンビニエンスストア、入り口でこのようなキャンペーンを見かけることは数多いのではないでしょうか。何かの商品が安くなることで足を運ぶ機会が増えるものです。その中でよくあるものが「一定金額以上買うとクジが引ける」というもの。しかし、この金額はなぜか「700円」と相場が決まっています。

 例えば、2017年に行われたものを見てみましょう。ファミリーマートやサークルK、サンクスなどの「サマーフェスタ2017」は、dyson空気清浄機付きテーブルファン、ローソンの「ローソン感謝祭スピードくじ」では旅行券や食事券の1万円分、そして業界最大手のセブンイレブンも「セブンイレブンフェア」を定期的に開催しています。しかし、この金額を見ると申し示したように「700円以上」となっています。なぜこの金額に決まっているのでしょうか?

 このからくりを説明しているのが、読み物サイトとして各種記事を提供している「美ブリオン」の『コンビニの「700円くじ」が生まれた理由【あなたの知らないコンビニ活用術】』という記事です。なぜ700円以上なのかという理由をシンプルに紹介していますが、それは顧客の“単価引き上げ”にあるとのことです。

コンビニの客平均単価は約610円

 コンビニエンスストアの客単価は、実は伸ばしづらいものです。2017年4月20日に日本経済新聞の電子版が掲載した「3月のコンビニ売上高、微増 客単価上昇で2カ月ぶり」という記事によると、平均客単価は24カ月連続で増加しているものの、610円となっています。これは、例えばサラリーマンがランチをとるために、500円のお弁当に100円のペットボトルのお茶を買う。これに税込み価格を乗せたものが平均額だとするとイメージしやすいですが、これは購買パターンが決まっているとも言えます。

ついで買いとメーカー側のメリット

 そこで客一人ひとりに対して「もう1品何か買おうかな」という“ついで買い”の意欲をもたらすのが、700円クジでの狙いとなります。コンビニで売られている100円クラスの商品といえば、ガムやスナック菓子、もしくはここ最近レジの横に置かれるようになったコーヒーといったものです。

 また、クジの当たり商品として並ぶメーカー側にも、密かなメリットがあります。クジでは商品引換券が当たるケースが数多く、その費用負担はメーカー側がすることになります。ただ、例えばA社の商品をそのコンビニで引き換えるためには、コンビニ側がA社の商品を用意し、陳列しておく必要性があります。つまり、クジで当たらなくとも客が手に取ってもらうためのスペース確保を、クジで“担保”しているともいえるのです。

 そんな前提があるとはいえ、せっかくクジを引くなら当てたいのが人の性です。そこで“裏ワザ”を紹介しているのが「MediaGroove」の「セブンイレブン現役店員が、700円くじの必勝法を暴露!」という記事です。実は当たりクジと外れクジは裏側のデザインが違うケースが多く、箱から引く瞬間にそれを判断して選び直す……という算段ですが、あまりにも露骨に繰り返してしまうと、店員さんからいぶかしげな眼で見られる可能性はあります。いずれにしても、“一発勝負”でくじを引くほうがフェアなことは間違いありません。

 700円クジに隠された様々な仕掛け。それを知った上で700円以上を使って特賞を狙ってみる??それくらいの心持ちのほうが、当たったのが商品引換券だとしても幸せなのかもしれませんね。

<参考サイト>
・biblion:コンビニの「700円くじ」が生まれた理由
https://biblion.jp/articles/MOTzt
・MediaGroove:セブンイレブン現役店員が、700円くじの必勝法を暴露!
http://media-groove.com/seven-700-kuji-houhou/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景

チベット、内モンゴル、新疆ウイグルなど、少数民族に対する深刻な人権侵害をめぐって欧米諸国から強い批判を浴びている中国。しかし、こうした人権問題は今に始まったことではない。中華人民共和国建国の経緯と中国共産党の思...
収録日:2021/10/15
追加日:2021/12/24
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
2

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害

高度成長のために頑張った日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の評価を得たが、その後の日本企業の凋落、競争力の低下を考えると、その弊害を感じずにはおられない。読書人口が減っている現状をみると、いつのまにか「世界...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/12/01
3

プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性

プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性

プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義

プロジェクトマネジメントが世界的に普及し始めたのは1990年代。ソフトウェア産業の発展とともに拡大を続け、時代のニーズを受けて多くのシーンに定着してきた。今回は、その基本に立ち返り、国際標準をもとに、プロジェクトと...
収録日:2025/09/10
追加日:2025/12/03
大塚有希子
法政大学専門職大学院イノベーションマネジメント研究科准教授
4

質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?

質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?

歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために

歴史上の出来事の本質を知るには、その真贋を見定めなければいけない。そのためにはどうすればいいのか。記述の異なる複数の本がある場合、いかにして真実を見極めるか。また、司馬遼太郎の作品が「歴史事実」として認識されて...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/12/02
5

ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係

ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係

熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か

お酒やコーヒーなど世の中には睡眠に良くないのではないかといわれるものがある。また、現代においては特に、スマホの「ブルーライト」が睡眠には大敵だといわれているが、それらは本当に悪者なのか。一般に良い睡眠を妨げると...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/30
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授