テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.11.24

「ストレスを感じやすい人」の特徴と対策

 「ストレスが心身の不調の原因になる」ということは現代の常識として日常的に語られています。しかしストレスとは何を指しているのか、改めて考えると意外とわかりにくいのではないでしょうか。

どんな反応をストレスと呼ぶのか

 もともとストレスとは物理学の用語です。物体に力を加えると、物体には元に戻ろうとする力が発生します。この外部からの力に応じる力を応力、つまりストレスといいます。

 物理学のストレスをはじめて人間に転用したのは、カナダの生理学者ハンス・セリエといわれます。セリエは動物に不快な刺激を与えると、痛みやかゆみなど刺激を受けた部位限定の症状以外に、血圧の上昇や焦燥感など全身に影響する症状も出ることをつきとめました。これが外部の力に対する応力に似ていることから、ストレスと呼んだのです。

 このことからわかるように、ストレスとは不快な刺激に対する反応の中で、刺激の種類にかかわらず発生する全身症状を指します。

ストレスを感じやすいのはこんな人

 ストレスの症状は全身に現れるので、眠れなくなったり頭痛や腹痛が起きたりとつらいもの。誰もが無縁で生きたいと願いますが、現代社会では避けて通れない悩みです。

 しかし、同じ職場で同じ立場にいてもつらく感じる人と平気な人がいるように、ストレスの感じ方には個人差があります。ストレスへの抵抗力はストレス耐性と呼ばれ、ストレスに強い人はストレス耐性が高い、ストレスに弱い人はストレス耐性が低いといえます。

 ストレス耐性が低い人には次のような特徴があります。まず「完璧主義」、「几帳面」。少しでも欠陥があるとイライラしがち。そして「他人を頼れない」、「ひとりで抱え込む」。自分の中に不安や悩みを溜めこんでしまう。さらに「自己評価が低い」、「自分が嫌い」。自信がないので自分の意見が言えず、不満ばかり残る。…など。

 ストレス耐性が低い人はこれらの特徴を複数持っていることが多く、よけいにストレスを強く感じてしまうのです。

ストレスはただの悪役ではない

 ただし、ストレスを感じることは完全に悪いことではありません。なぜならストレスを感じている状態とは臨戦態勢だからです。

 生命体はストレスを感じると、ストレスホルモンと呼ばれる物質が分泌されて血圧や心拍数が上がり、逆に炎症反応や免疫機能が抑制されます。このような反応が起きる理由は、最大のストレスが生命の危機だからです。生命の危機を脱するには身体機能をフル稼働させなくてはなりません。そこでエネルギーを血液循環などに集中させ、傷の回復や細菌への抵抗力など、ひとまず必要ない機能をオフにするのです。

 つまり、重要な会議や試合などでストレスを感じるほど、集中力が上がって実力が発揮できます。ここぞという場面で踏ん張るにはストレスが必要なのです。

 ストレス耐性が低い人は自分がストレスに弱いことを責めがちですが、ストレスも単なる悪役ではないと考えて気を楽に持ちましょうということですね。

ストレスとうまくつきあう方法

 しかし、現代社会は一時的な生命の危機より、慢性的な長時間労働など簡単に解決できない問題のほうが多いのも確かです。常にストレスホルモンが分泌されれば、むやみと心臓がドキドキしたり免疫力が落ちたりとつらい症状が続いてしまいます。

 そこで現在、注目されているストレス対処法が「コーピング」です。2017年1月にも一度紹介しましたが、NHKスペシャルシリーズ「キラーストレス」第2回で放映された臨床心理士・伊藤絵美氏による解説を改めて紹介します。

 コーピングとは自分のストレスを客観的に観察して自分なりの対策を行うものです。手順は「1.ストレスに対する効果的な対策をリストアップする」→「2.実際のストレスがどのようなものかモニターする」→「3.そのストレスに見合う対策を実行する」→「4.その結果ストレスが減ったか自分で判断する」の4ステップ。観察と対策を意識的に繰り返すことで、ストレスに対応できるようになると考えられています。

 ストレスを軽減したいと感じている人は試してみるのもよいでしょう。

<参考サイト>
・NHKオンライン NHKスペシャルシリーズキラーストレス第2回
http://www.nhk.or.jp/special/stress/02.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか

軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか

クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策

台湾でのクーデターを想定したとき、重要になるのがその成功後の民政移管である。それは民主主義を標榜する民進党の正統性を保つためであるが、それはいったいどのように果たされうるのか。一度は民主化に成功した李登輝政権時...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/11
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
2

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
3

伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」

伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」

伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代

伊能忠敬の生涯を通して第二の人生の生き方、セカンドキャリアについて考えるシリーズ講話。九十九里の大きな漁師宿に生まれ育った忠敬だが、船稼業に向かない父親と親方である祖父との板ばさみに悩む少年時代だった。複雑な家...
収録日:2020/01/09
追加日:2020/03/01
4

ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか

ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか

世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神

「ジョークは時代を映す鏡」といわれる。現代でも、紛争や戦争に直面する厳しい状況はもちろん、一部の専制国家では自由な言論が封じられた社会で、多くの人びとが暮らしている。そうした抑圧された環境下では、体制を笑う諷刺...
収録日:2024/03/14
追加日:2024/06/14
早坂隆
ノンフィクション作家
5

垂秀夫元中国大使に習近平中国と米中関係の実態を聞く

垂秀夫元中国大使に習近平中国と米中関係の実態を聞く

編集部ラジオ2025(23)垂秀夫元中国大使が語る習近平中国

今回の編集部ラジオでは、垂秀夫先生(元日本国駐中華人民共和国特命全権大使)にお話しいただいた講義を紹介します。垂先生は『日中外交秘録』(文藝春秋)という本を発刊されていますが、その帯コピーに版元が記したキャッチ...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/10/09