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メンタルを強くするためにやめるべき習慣とは?
「メンタル(mental)」は英語で、精神や知能に関するさまを表す言葉です。とくに最近では、和製用法として「精神」や「心」の代名詞として、「メンタルが強い」などと用いられることの多い言葉です。今回は「メンタル≒心」と考えて、「メンタルが強い」とはどういう人なのかについて考えていきたいと思います。
実際の宇宙飛行士の選抜試験では、どのように「メンタルの強さ」を試され、どんな基準によって選抜されているのでしょうか。
斎藤氏と同じく精神科医で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究員として日本の宇宙飛行士の選抜や訓練等にもかかわってきた松崎一葉氏は、『情けの力』(幻冬舎)で「宇宙飛行士には想定外のことが起きても、それに耐えられるだけの情緒性=『情けの力』が必要」としています。
そこで興味深いのが、最後の面接での「桃太郎と浦島太郎、どっちが好き?」という質問です。松崎氏は「桃太郎と浦島太郎は、全く対極にある話」で「桃太郎は合理的」だが「浦島太郎はとても情緒的」といいます。
「浦島太郎」には合理性はなく、理不尽ですらあり、ただただ情緒的です。だからこそ「浦島太郎」に親和性を感じられる人はより「情けの力」が強く、「浦島太郎」のような状況になっても耐えうる人こそが、メンタルが強い人といえるのではないでしょうか。ちなみに、選抜された宇宙飛行士は全員、「浦島太郎」を選んでいたそうです。
・有意味感(情緒的余裕)
辛いことや面白みを感じられないことに対しても、何らかの意味を見いだせる感覚。
・全体把握感(認知の柔軟性)
時系列(プロセス)を見通せる感覚(プロセスに備えた段取りをとる力)。
・経験的処理可能感(情緒的共感処理)
成功体験に基づき「できること」を確信し、「未知の部分」は早期に援助希求できる感覚。
ちなみに、前々掲書にて斎藤氏は、SOCの3要素を「意味がある」こと、「わかる」こと、「できる」ことと、よりわかりやすく言い換えています。
サイコセラピストのエイミー・モーリン氏は、「メンタルの強い人と弱い人がいるわけではない」といっています。ただし、メンタルを強くしやすい人やしにくい人がいること、その要因としての「遺伝、性格、経験」をあげてもいます。しかし、そのうえでやはり、「どんな人でもメンタルの力を高めることができる」として、「メンタルの力」をはぐくむために、以下の「13の悪しき習慣」をやめることを推奨しています。
1.自分を哀れむ習慣、2.自分の力を手放す習慣、3.現状維持の習慣、4.どうにもならないことで悩む習慣、5.みんなにいい顔をする習慣、6.リスクを取らない習慣、7.過去を引きずる習慣、8.同じ過ちを繰り返す習慣、9.人の成功に嫉妬する習慣、10.一度の失敗でくじける習慣、11.孤独を恐れる習慣、12.自分は特別だと思う習慣、13.すぐに結果を求める習慣
メンタル強化の前に、まずは自分のメンタルの特性や状態をチェックして自覚し、「悪い習慣」を手放すことが必要です。
1つめは伝統芸能の稽古をつけてもらうことです。会社や家庭と違った価値観や時間軸で成り立っている世界で、上下関係の固定化した目上の師匠から、そのときは意味がわからず理不尽とも思えるような稽古をつけてもらいましょう。その際、能、舞踊、三味線、尺八など、実際に体や手や口を動かすお稽古がオススメです。より大きな「こんなはずではない」体験がポイントになります。
2つめはスキーや登山、釣りや遠泳など、自然環境に大きく異存するスポーツに真剣に取り組むことです。基本的に自然はコントロール不可能です。その渦中にあえて飛び込み、自分の体を最大に使って心でバランスをとり、知識で体と心の強化をしながら目的を達成するために取り組むことで、「心地よい理不尽」を体験することがポイントです。
伝統芸能のお稽古や自然の中で行うスポーツを通して、自覚的にあえて理不尽な思いや打ちのめされる体験をすることは、情緒性をはぐくみ、SOC感覚を身につけたり磨いたりすることに大いに役立ち、メンタルの強さを涵養してくれるでしょう。
「浦島太郎」好きはメンタルが強い人?
心の専門家である精神科医の斎藤環氏は「宇宙飛行士の選抜試験を連想する。私が知るかぎり、メンタルの強さをあれほど徹底して問われつづける採用試験はほかにない」といいます。実際の宇宙飛行士の選抜試験では、どのように「メンタルの強さ」を試され、どんな基準によって選抜されているのでしょうか。
斎藤氏と同じく精神科医で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究員として日本の宇宙飛行士の選抜や訓練等にもかかわってきた松崎一葉氏は、『情けの力』(幻冬舎)で「宇宙飛行士には想定外のことが起きても、それに耐えられるだけの情緒性=『情けの力』が必要」としています。
そこで興味深いのが、最後の面接での「桃太郎と浦島太郎、どっちが好き?」という質問です。松崎氏は「桃太郎と浦島太郎は、全く対極にある話」で「桃太郎は合理的」だが「浦島太郎はとても情緒的」といいます。
「浦島太郎」には合理性はなく、理不尽ですらあり、ただただ情緒的です。だからこそ「浦島太郎」に親和性を感じられる人はより「情けの力」が強く、「浦島太郎」のような状況になっても耐えうる人こそが、メンタルが強い人といえるのではないでしょうか。ちなみに、選抜された宇宙飛行士は全員、「浦島太郎」を選んでいたそうです。
メンタルの強さを解く鍵?「SOC(首尾一貫感覚)」
また、前掲書で松崎氏は、「究極のストレス状態を乗り切る心の資質」として、メンタルの強さを考えるキーワード「センス・オブ・コヒーレンス(首尾一貫感覚、以下SOC)」と呼ばれる感覚をあげています。SOCを構成する要素は次の3つです。・有意味感(情緒的余裕)
辛いことや面白みを感じられないことに対しても、何らかの意味を見いだせる感覚。
・全体把握感(認知の柔軟性)
時系列(プロセス)を見通せる感覚(プロセスに備えた段取りをとる力)。
・経験的処理可能感(情緒的共感処理)
成功体験に基づき「できること」を確信し、「未知の部分」は早期に援助希求できる感覚。
ちなみに、前々掲書にて斎藤氏は、SOCの3要素を「意味がある」こと、「わかる」こと、「できる」ことと、よりわかりやすく言い換えています。
自己メンタルチェックと習慣の見直し
では、メンタルは強くすることはできるのでしょうか。メンタルの強さはあくまでも「情けの力(=情緒性)」があり「SOCを心の資質として備えている」といったような人だけの特権であり、鍛えたり学習や訓練によって後天的に備えたりすることはできないのでしょうか。サイコセラピストのエイミー・モーリン氏は、「メンタルの強い人と弱い人がいるわけではない」といっています。ただし、メンタルを強くしやすい人やしにくい人がいること、その要因としての「遺伝、性格、経験」をあげてもいます。しかし、そのうえでやはり、「どんな人でもメンタルの力を高めることができる」として、「メンタルの力」をはぐくむために、以下の「13の悪しき習慣」をやめることを推奨しています。
1.自分を哀れむ習慣、2.自分の力を手放す習慣、3.現状維持の習慣、4.どうにもならないことで悩む習慣、5.みんなにいい顔をする習慣、6.リスクを取らない習慣、7.過去を引きずる習慣、8.同じ過ちを繰り返す習慣、9.人の成功に嫉妬する習慣、10.一度の失敗でくじける習慣、11.孤独を恐れる習慣、12.自分は特別だと思う習慣、13.すぐに結果を求める習慣
メンタル強化の前に、まずは自分のメンタルの特性や状態をチェックして自覚し、「悪い習慣」を手放すことが必要です。
伝統芸能と自然でメンタルを強化する
自己の性格などの特性をチェックし悪い習慣を手放すなど土台を整えたうえで、さらにメンタルを強くしたい人には、ぜひ仕事や家庭といった日常生活以外で、メンタルに適度な負荷を与え強化することをオススメします。そのための例として、2つの方法をあげます。1つめは伝統芸能の稽古をつけてもらうことです。会社や家庭と違った価値観や時間軸で成り立っている世界で、上下関係の固定化した目上の師匠から、そのときは意味がわからず理不尽とも思えるような稽古をつけてもらいましょう。その際、能、舞踊、三味線、尺八など、実際に体や手や口を動かすお稽古がオススメです。より大きな「こんなはずではない」体験がポイントになります。
2つめはスキーや登山、釣りや遠泳など、自然環境に大きく異存するスポーツに真剣に取り組むことです。基本的に自然はコントロール不可能です。その渦中にあえて飛び込み、自分の体を最大に使って心でバランスをとり、知識で体と心の強化をしながら目的を達成するために取り組むことで、「心地よい理不尽」を体験することがポイントです。
伝統芸能のお稽古や自然の中で行うスポーツを通して、自覚的にあえて理不尽な思いや打ちのめされる体験をすることは、情緒性をはぐくみ、SOC感覚を身につけたり磨いたりすることに大いに役立ち、メンタルの強さを涵養してくれるでしょう。
<参考文献>
・『人間にとって健康とは何か』(斎藤環著、PHP新書)
・『情けの力』(松崎一葉著、幻冬舎)
・『メンタルが強い人がやめた13の習慣』(エイミー・モーリン著、長澤あかね訳、講談社)
・『人間にとって健康とは何か』(斎藤環著、PHP新書)
・『情けの力』(松崎一葉著、幻冬舎)
・『メンタルが強い人がやめた13の習慣』(エイミー・モーリン著、長澤あかね訳、講談社)
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