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DATE/ 2018.02.26

年収1000万ないと都内新築マンションは買えない?

 少子高齢化社会といわれるようになって数年経ちましたが、日本各地で過疎化による空き家問題や、所有者不明土地の問題が起こっています。その一方で、都内では少し前からマンション開発が盛んです。中には億ションといわれるような高級マンションもあるようです。ずいぶん対照的な状況ですが、なぜ都内ではマンション開発が進むのでしょうか。そもそも、そのようなマンションはどれぐらいの年収があれば買えるのでしょうか。詳しく見てみましょう。

首都圏の新築マンション平均価格は、5551万円。

 株式会社不動産経済研究所の資料によると、2017年11月の状況では、首都圏マンション一戸当たりの価格は5551万円となっています。1平方メートル当りの単価は83.5万円です。これは前年同月比で一戸当たりは390万円(7.6%)、1平方メートル当りでは8.6万円(11.5%)の上昇です。

 その後、2018年1月の情報では5293万円(単価78.7万円)と、やや値下がりしていますが、5000万円を切ってはいません。しかし、いまも供給数は首都圏全域で増加しています。

マンション購入金額は年収の5倍?

 マンション購入に際して年収に対してローンの割合を示す「年収倍率」という目安があります。この数値、現在では一般的に年収の5倍程度が買いやすいといわれているようです。つまり、5000万円のマンションを買う場合、頭金がゼロで考えると、世帯年収は1000万以上ないと厳しいということです。

 住宅金融支援機構のフラット35を利用したデータの集計を見ると、新築マンションを買う場合の「年収倍率」は2006年から2016年までの推移でほとんどの期間で上がり続けています。つまり、年収に対してより高いマンションを買う傾向が続いているということです。具体的な数値を見ると、2016年のデータでは首都圏では7.2倍です。つまり、世帯年収1000万円だったとして7200万円の物件を買っているということになります。ちなみに首都圏の中古マンションでは5.8倍ですが、こちらも上昇傾向にあります。

それでもマンションは売れる

 では、なぜ目安の5倍を越えても首都圏の新築マンションに需要があるのでしょうか。

 マンションを買う際には価格、金利、税制の3点が大きな要素です。このうち、税制(住宅ローン控除)は、ここ数年変化していません。最大の要因は、低金利政策かと思われます。ローンの金利が低いうちに買った方が返済の負担は軽くなります。さらに2017年中においては株価が上昇を続けました。今後景気が良くなって金利が上がるかも、近いうちに消費税が上がるだろう、と思えば今のうちに多少無理をしてもマンションを買っておこう、という心理が働きます。需要が高まればマンション価格は高騰します。この需要に応じて新たなマンションが建設されます。この循環が東京で起きていると言えるでしょう。

将来的にサブプライムローン状態にならないと言えるのか?

 この動き、よく考えると、少し怖いかもしれません。需要はどこかで底を尽きます。また、日本のバブル景気、またアメリカのサブプライムローン問題が「不動産価格はこのまま上がり続ける」という幻想のもとで起こったことは、言うまでもありません。今後、政府や日銀がこの過熱した状態をどのように適温に持ち込むかという点にかかっているかもしれません。

<参考サイト>
・不動産経済研究所:首都圏のマンション市場動向2017年11月(PDFファイル)
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/307/s201711.pdf
・不動産経済研究所:首都圏のマンション市場動向2018年1月(PDFファイル)
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/316/s201801.pdf
・住宅金融支援機構:フラット35利用者調査
http://www.jhf.go.jp/about/research/loan_flat35.html
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橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授