社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.03.15

統計で見る「がん」の恐ろしさ

 ここ数年のデータによると、生涯で日本人の2人に1人は何らかの「がん」に罹患しています。さらに日本人の死亡原因は、1位「悪性新生物(がん)」28.5%、2位は「心疾患」で15.1%、3位は「肺炎」で9.1%です。つまりおよそ日本人の4人に1人はがんで死亡しています(2016年のデータ)。このような数字だけを見ると、がんは怖いかもしれません。しかし、早期発見できれば問題ないがんもあります。ここではもう少し詳しくデータを見ながら、がんをとりまく状況を整理してみます。

どのようながんで死亡数が多いのか

 2016年のデータによると、がんで死亡した人の総数は37万2986人で、内訳は男性21万9785人、女性15万3201人となっています。死亡数が多い部位の上位はそれぞれ以下のようになっています。

<男性>
1位「肺」
2位「胃」
3位「大腸」
4位「肝臓」
5位「膵臓」
<女性>
1位「大腸」
2位「肺」
3位「膵臓」
4位「胃」
5位「乳房」

 男女ともに「肺」「大腸」「胃」の死亡数が多く、女性に多い、「乳房」以外はおおよそ共通しているといえるでしょう。ただし、この数値は「死亡原因とされたがんの種類」です。つまり、その部位のがんにかかる人が多ければそのがんが原因とされた死亡者数も増えます。ではどのような部位のがんの死亡率が高いのでしょうか。この場合、「5年相対生存率」に注目する必要があります。

生存率の高いがんとは

 「5年相対生存率」とは、がんと診断されたのち5年後に生存している割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどの程度なのかを示しています。100%に近いほど治療で救えるがんあるということです。

 2006年から2008年にがんと診断された人全体の「5年相対生存率」は男性62.1%、女性66.0%です。部位別で見ると男性は前立腺(97.5%)、皮膚(92.2%)、甲状腺(89.5%)の順に高く、女性では甲状腺(94.9%)、皮膚(92.5%)、乳房(91.1%)の順に高くなっています。

 数値をみて分かる通り、がんの部位によっては「5年相対生存率」が100%に近いものもあります。この生存率が高いがんは、比較的進行が緩やかである場合が多く、早期であるステージⅠで発見できれば対策が取りやすいようです。また、乳がんは乳房のしこりなどの症状が出るという点もあり、意識をもっていれば早期発見しやすいという点もあります。

 これに対して、「5年相対生存率」が低い部位に膵臓があります。男性4.6%、女性4.8%という数値です。理由としては、初期には症状が出ないことが多く、早期に発見しにくいということのようです。つまり、がん治療には早期発見できるかどうかということがカギだということはこの数値から分かります。

がんとともに生きるには

 がんが不治の病と呼ばれていた時代がありました。しかし、現代では有効な薬や治療法がさまざまな方向から研究されています。また、こういった医療技術の進歩に合わせて、社会通念も変化しつつあります。治療しながら、また再発を抑制しながら働く人も増えています。がんになったら終わりではありません。

 インターネットで「がん」について探すと、大量の情報が溢れています。何を信じていいのか分からなくなるかもしれません。その中で、国立がん研究センターが解説している「がん情報サービス」をおすすめします。がんそのものについての情報のほかに、がんの疑いがあると言われた方がどうすればよいか、まわりの人間はどう対処すべきか、といったことなど専門家が丁寧に回答しています。

<参考サイト>
・国立がん研究センター:最新がん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
・国立がん研究センター:がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/index.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味

「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味

逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者

西洋には逆境は神が与える運命という考え方があり、その運命をいかに克服するかを考えたのがストア派だった。しかし、神道が説くように「ヒトもカミ」であれば、それに気づく瞬間は逆境の中にこそ存在するはずである。「他者で...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/20
2

「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?

「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?

戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方

2025年8月、米露、米ウクライナ、EUの首脳会談が相次いで実現した。その成果だが、中でもロシアにとって大成功と呼べるものになった。ディール至上主義のトランプ政権を手玉に取ったロシアが狙う「ベルト要塞」とは何か。事実上...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/12/21
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
3

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著

渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会

渡部昇一氏には、若き頃に留学したドイツでの体験を記した『ドイツ留学記(上・下)』(講談社現代新書)という名著がある。1955年(昭和30年)から3年間、ドイツに留学した渡部昇一氏が、その留学で身近に接したヨーロッパ文明...
収録日:2021/08/06
追加日:2021/10/23
渡部玄一
チェロ奏者
4

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
5

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由

かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/16
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授