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DATE/ 2018.04.19

国のお墨付きの「ホワイト企業」とは?

 私たちは一般的に「ブラック企業」の逆を「ホワイト企業」と呼びますが、その違いはなんでしょうか。さまざまな要素があると思われますが、最も大きい点は、労働者の健康への意識ではないでしょうか。この「労働者の健康」に焦点を当てた国のホワイト企業認定制度があります。「健康経営優良法人認定制度」呼ばれる制度です。今回は、この制度がどういうものかという点について見てみましょう。

「健康経営優良法人認定制度」とは何か

 「健康経営優良法人認定制度」とは、経済産業省が、次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループにおいて、健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」すべく、設計しているものです。この制度では、「中小規模法人部門」と「大規模法人部門」の2つに部門に分け、それぞれの基準で認定されます。「健康経営優良法人2018」には、大規模法人部門で541法人、中小規模法人部門で776法人が認定されています。

「健康経営」が評価される

 「健康経営優良法人認定制度」では、「健康経営」を実践していることが大事な要素となります。ここでの「健康経営」とは、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む」経営のことです。認定基準を元に、この点をもう少し詳しくみてみましょう。

 認定基準の大項目は、「経営理念(経営者の自覚)」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の5つです。この大項目の元に細かい評価項目が並びます。「中小規模法人部門」と「大規模法人部門」の大きな違いは、「大規模法人部門」により厳しい基準が課されている点です。

 例えば、「大規模法人部門」では、大項目「組織体制」の下に「健康づくり責任者が役員以上」「健保等保険者と連携」という評価項目がありますが、「中小企業部門」では「健康づくり担当者の設置」に留められています。また、「大規模法人部門」では「制度・施策実行」の下に「産業医又は保健師が健康保持・増進の立案・検討に関与」という評価項目がありますが、この項目は「中小規模法人部門」にはありません。ほかにも細かい点でいくつか異なっていますが、総じて「大規模法人部門」の方がより詳しく細かく設定されています。

労働環境を適切に保つ意識を広める制度

 少し前までは、企業が労働者にかかるコストを減らす方向に進んでいた面もあったかと思います。しかし、ここ数年の間に労働環境の実態が明らかにされてきたことにより、社会の意識はだいぶ変化したようです。こういった労働環境への意識付けは、競争原理で動く企業に自主的に行わせることはなかなか難しいこともまた事実です。この点に関して、国がお墨付きを与えるという制度は、現実の状況に適応した制度であるといえるでしょう。またこういった制度があることを知ることは、私たちが劣悪な労働環境にNOという勇気を持つ一歩にもなるのではないでしょうか。

<参考サイト>
・経済産業省:健康経営優良法人認定制度
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
・経済産業省:健康経営優良法人2018(大規模法人部門)の認定基準(PDFファイル)
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/2018ninteikijyun_daikibo.pdf
・経済産業省:健康経営優良法人2018(中小規模法人部門)の認定基準(PDFファイル)
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/2018ninteikijyun_chushokibo.pdf
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授