テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.05.22

日本に住む外国人はどれぐらい増えているのか?

 観光地に外国人があふれ、マスメディアでもよく取り上げられるため、外国人観光客が急増していることはよく知られています。一方、観光客ではなく、外国人在留者がどれくらい増えているのかを知っている人は多くはないだろうと思います。年々どれぐらいのペースで増加しているのか。どこの国の人が多いのかなど外国人在留者について調査しました。

増加は過去最高記録更新の連続

 法務省によると、2016年度末における在留外国人数は238万2822人。前年末に比べて15万633人増加しました。これは過去最高の伸び率でした。さらに2017年6月末には8万8636人増となり、247万人を超えました。ここでもまたまた過去最高の伸び率を記録。そのまま、在留外国人250万人時代に向けて突き進みました。

 2017年12月末には250万人を突破し、年間増加率はやはり過去最高を更新。観光客だけでなく、在留者もかなり増えていることがわかります。

在留資格1位は「技能実習」

 2017年12月末の調査結果をもとに、在留者を国籍別に見ると、1位中国、2位韓国、3位ベトナム、4位フィリピン、5位ブラジルとなっていて、増加率は1位がベトナムで、なんと前年比31.2パーセント増、2位がネパールで18.6パーセント増、3位がインドネシアで16.6パーセント増となっています。例外的には韓国だけはマイナス0.5パーセントで減少の一途をたどっています。

 ベトナム人の在留者が急激に伸びているというのは意外に思われるかも知れません。そのうち、在留の理由として一番多いのが技能実習、次いで留学です。

 在留者全体の在留資格をみてみても、やはり技能実習は多く、20パーセントを占めています。技能実習というのは簡単に言うと研修生のこと。最近、東京電力が福島第一原発で自社のガイドラインに違反してベトナム人の技能実習生を働かせていたことが発覚し、話題となりました。

在留外国人に対するネガティブイメージ

 在留者の増加や構成比の変動にともなって、東電の例を含め、トラブルも増えています。ベトナム人の在留者が急増していることを述べましたが、毎日新聞は在日ベトナム人による犯罪が急増していることを伝えています。2017年には前年まで最多だった中国人による犯罪の件数を上回り、国籍別で最多となりました。そのうち、事件の4割が万引き。在留資格で見てみると、留学生41パーセントと最も多く、技能実習生が23パーセントでした。

 また、産経新聞は厚生労働省は平成28年度の生活保護受給者の外国人が47058世帯となり、過去最高を記録したことを伝えています。10年間で56パーセント増です。

 こうしたニュースを目にすることで、在留外国人に対してネガティブな印象を持つ人は少なくないでしょう。

芝園かけはしプロジェクトに学ぶ

 日本が在留外国人でかなり支えられていることを忘れてはなりません。人手不足が深刻化している中で、とくに飲食業や宿泊業、医療・介護分野においても必要不可欠な存在です。

 安易に排外主義に走るのではなく、どうすれば共存共栄できるのかを探るべきでしょう。レコードチャイナは、埼玉県川口氏の芝園団地における成功例を紹介しています。

 芝園団地では在留中国人が激増し、一時は習慣の違いから中国人と日本人のトラブルが絶えませんでした。ネット上では「団地が中国人に占拠された」と書き込みされるほどに関係は冷え切っていました。

 そこで、自治体や大学生ボランティアが交流プロジェクトを始動。住民が中国語教室や料理教室を開くなど、交流する機会を増やす中で関係は驚くほど改善していきました。この功績が讃えられ、川口芝園団地自治会は国際交流基金から地球市民賞を授与されました。

 排除は悲しみしか生みません。簡単ではありませんが、可能な限り、芝園団地のように相互理解の道を探っていきたいものです。

<参考サイト>
・法務省:在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表
http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_touroku.html
・RecordChina:中国人多い川口市芝園団地、ある取り組みで住民からのクレームが減少?中国メディア
http://www.recordchina.co.jp/b592191-s0-c30.html
・時事ドットコム:技能実習生が就労=福島第1原発敷地内で?東電
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050100539&g=soc
・毎日新聞:17年摘発 来日ベトナム人の犯罪急増 中国上回る
https://mainichi.jp/articles/20180412/k00/00e/040/211000c
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道

機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
木下康司
元財務事務次官
2

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題

国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
小原雅博
東京大学名誉教授
3

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者
4

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か

昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
與那覇潤
評論家
5

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授