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DATE/ 2020.05.26

あなたの大学は?世界大学ランキング日本版

 大学の教育力が落ちている、といったニュースを時折耳にします。大学の教育力といってもさまざまなポイントが考えられますが、その一つとして今回は、英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education以下、THE)が発表する「世界大学ランキング」をご紹介します。この調査には、日本ではベネッセグループが総合パートナーとして協力しています。果たして日本の大学のランキングはどうなっているのでしょうか。

評価ポイントは「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」

 「THE大学ランキング日本版2020」では「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4つのポイントで大学を評価します。それぞれの評価の割合は順に34%、30%、16%、20%です。

 もっとも割合の高い「教育リソース」は、どれだけ充実した教育が行われている可能性があるか、というポイントです。内訳としては、「学生一人あたりの資金(8%)」「学生一人あたりの教員比率(8%)」「教員一人あたりの論文数(7%)」「大学合格者の学力(6%)」「教員一人あたりの競争的資金獲得数(5%)」となっています。

 「教育充実度」は、どれだけ教育への期待が実現されているかを示しています。この項目では高校教員の評判調査(進路担当教員への意見調査)にもとづき、「グローバル人材育成の重視(13%)」「入学後の能力伸長(13%)」の2つが調査されています。

 「教育成果」は卒業生の活躍に対する評価です。「企業人事の評判調査(10%)」と「研究者の評判調査(10%)」が含まれます。

 「国際性」ではどれだけ国際的な教育環境になっているか、評価されます。内訳は「外国人学生比率(5%)」「外国人教員比率(5%)」「日本人学生の留学比率(5%)」「外国語で行われている講座の比率(5%)」の4項目です。

国内総合ランキング1位は東北大学

 さて、こういった評価基準に基づいて総合的に評価されたトップ10は以下の通り(数値は総合獲得スコア)です。

1位:東北大学(83.0)
2位:京都大学(81.5)
3位:東京大学(81.2)
3位:東京工業大学(81,2)
5位:九州大学(79.7)
6位:北海道大学(79.6)
7位:名古屋大学(79.5)
8位:大阪大学(78.9)
9位:筑波大学(77.7)
10位:国際教養大学(77.2)

 東北大学の評価がめざましく、国公立大学が並んでいますが、総合4位にランクインしている東京工業大学が気を吐いているといった印象でしょうか。また、10位にランクインしている、秋田県に所在する国際教養大学は注目に値します。

私立大学トップ10、1位国際教養大学

 私立大学に絞ってランキングを見るとどうでしょうか(数値は総合獲得スコア)。

1位:国際基督教大学(74.3)全体11位
2位:早稲田大学(71.5)全体13位
3位:慶應義塾大学(70.2)全体14位
4位:上智大学(66.5)全体20位
5位:立命館アジア太平洋大学(66.2)全体21位

 私立大学はよく入学難易度によって、早慶上智、MARCHG・関関同立などとレベル分けされますが、上位3校はこれと同じ結果となっています。コアを細かく見ると、どうやら「国際性」の項目が私立大学の順位に大きく影響しているようです。

「教育充実度」「国際性」のトップは国際教養大学

 国際教養大学は、総合ランキングでは10位、「教育充実度」と「国際性」はそれぞれ1位です。また「教育成果」でも17位にランクインしています。この大学は秋田県にある公立(県立)大学で、設けている学部は「国際教養学部」のみ、授業はすべて英語で行われます。入学定員は学部一括175人という少人数教育です。入試の難易度(偏差値)を見ても、なかなか高い数値になっています。2004年開学の新しい大学なので、これから卒業生が活躍していくのでしょう。大学の質が問われている現代では、かなり異質、かつ日本の大学の未来像を提示する存在と言えるかもしれません。

<参考サイト>
・THE世界大学ランキング 日本版
https://japanuniversityrankings.jp/rankings/
・国際教養大学
http://web.aiu.ac.jp/
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授