テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.06.21

「タバコを吸っている」と就職できない?

 日本や欧米諸国では喫煙者がどんどん減少しています。おそらく禁煙キャンペーンが大きな効果をあげているのでしょう。

 愛煙家は肩身の狭い思いをしているはずです。近年は喫煙者を採用しないという企業も現れてきました。これってやりすぎ?あなたはどう思いますか。

1966年の成人男性の喫煙率は83.7パーセント!?

 「厚生労働省のTOBACCO or HEALTH」では、たばこ産業の「2017年全国たばこ喫煙者立調査」を公開しています。その調査結果によると、2017年度の喫煙率は、成人男性で28.2パーセント、成人女性で9.0パーセントでした。

 喫煙率がピークだった1966年には、成人男性の喫煙率はなんと83.7パーセントだったので、50年間で55ポイントも減少したことになります。これは着実に禁煙キャンペーンの効果が現れてきている証拠でしょう。

 ただし、本記事によると、諸外国に比べるとまだまだ喫煙率は低くないとのことです。そんな中で話題に上がっているのが喫煙者を採用しないと宣言するいくつかの企業です。

星野リゾートも喫煙者は不採用

 たとえば、ハフィントンポストの記事で取り上げられている岐阜県の化学薬品メーカーのセラツクグループは10年ほど前から喫煙者を採用していません。創業者の親しい人が肺を患って亡くなったことがきっかけだったそうです。

 また、最近、IT企業の社長がツイッターで喫煙者を採用しないことを宣言し、賛否両論を呼びました。J-CASTニュースが記事として取り上げています。

 本記事では、星野リゾートや製薬会社のファイザー、スポーツクラブを運営するセントラルスポーツなども採用の際に喫煙の有無を確認していることを補足しつつ、喫煙者を採用しないことの法的な問題について厚労省の就労支援室に取材し、その見解を掲載しています。

喫煙者不採用は違法?

 厚労省は「法律上の問題はありません」と回答しました。「客にたばこの煙が嫌われる」等々の「合理的な理由があれば、差別などには当たらない」と考えていることを表明しました。ただし、日本国民は「憲法22条で職業選択の自由」が保証されているため、「一律に喫煙者だから応募不可とはできません」とのこと。

 いずれにしても、禁煙は今後もますます広がっていくことでしょう。愛煙家の方にとってはますます辛い状況になってくる話だと思いますが、喫煙に対するイメージが低下してしまうと、それは愛煙家への差別につながりかねません。

 愛煙家として有名な東京大学医学部名誉教授の養老孟司氏は、「禁煙運動という危ない社会実験」というコラムで「喫煙者と非喫煙者が共存できる社会を作れると信じている」と思いを綴っています。養老氏が述べているように、愛煙家と非喫煙者がおたがいの考えを尊重して気持ちよく共生できる社会を目指してほしいものです。

<参考サイト>
・厚生労働省のTOBACCO or HEALTH:成人禁煙率
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
・HUFFPOST:「喫煙者は採用致しておりません」喫煙者お断り企業は「差別」?
https://www.huffingtonpost.jp/abematimes/smoking-japan_a_23449497/
・JCAST:「喫煙者は採用しません」とIT企業社長が宣言 これは差別?厚労省の見解は...
https://www.j-cast.com/2018/05/06327576.html?p=all
・愛煙家通信:禁煙運動という危うい社会実験
http://aienka.sakura.ne.jp/articles/2627/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
2

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率

日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
3

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査

現在の宇宙開発は「国際月探査」を合言葉に掲げている。だが月は人類の移住先にも適さず、探査にさほどメリットがない。にもかかわらずなぜ「月探査」が目標として掲げられているのか。それは冷戦後、宇宙開発の目標を失った各...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/16
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
4

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
5

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン

アメリカのトランプ大統領は、2025年5月に訪れたサウジアラビアでの演説で「トランプ・ドクトリン」を表明した。それは外交政策の指針を民主主義の牽引からビジネスファーストへと転換することを意味していた。中東歴訪において...
収録日:2025/08/04
追加日:2025/09/13
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー