社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
なぜ出世を望まない若者が増えているのか?
「ゆとり世代」や「さとり世代」といった世代は、おおよそ「合理性を重視し、浪費や高望みをせず、穏やかな暮らしを志向する」世代として捉えられるようです。世代を一括りにしてしまうことの是非はさておき、データを見ると、少なくとも最近の若者は「管理職志向が減少している」ということは言えそうです。
これによると、管理職に「なりたい」「どちらかといえばなりたい」は31.9%です。2010年は55.8%、2013年は45.0%なので、継続して大きな減少傾向にあります。責任をあまり背負いたくないということでしょうか。このあたりに関連して、「働く上で重視すること」の調査項目を上位から並べたものが以下です(5段階回答で5が最大)。
1.収入が安定していること(4.1)
2.仲間と楽しく働けること(4.0)
2.自分の興味や関心に合致していること(4.0)
2.健康を損なう心配がないこと(4.0)
3.失業の心配がないこと(3.8)
3.自分の才能や能力を発揮できること(3.8)
3.自分の成長を感じられること(3.8)
4.高い収入を得ること(3.7)
5.自立して、人に気兼ねなくやれること(3.5)
5.社会の一員として務めを果たすこと(3.5)
6.働く時間が短いこと(3.4)
6.世の中のためになること(3.4)
7.世間からもてはやされること(2.9)
7.責任者として采配が振れること(2.8)
上位(4.0以上)には「収入の安定」「仲間との楽しさ」「興味」「健康」といった自分の在り方や内面に関する要素があり、下位(3.0未満)には「もてはやされること」「責任者として采配が振れること」といった、いわば自分の外側にある項目がきていると言えるのではないでしょうか。「もてはやされる」「采配を振るう」というのは響きからしても少し派手な感じがします。いわゆる一昔前の「モーレツ社員」といった感じの働き方でしょうか。
ただし、出世を望まないのだからすべからく正社員の離職や転職が盛んになっているかといえば、そうでもなさそうです。新卒3年以内の離職率は、過去30年間をたどっても3割程度で推移しており、そこまで大きな変化はありません。また、ここ数年の転職率の推移では、2013年の4.5%から2017年は4.8%と微増にとどまっています。また、この転職率を押し上げているのは、ここ数年で社会進出の幅が拡がった女性であり、男性の転職率は変化していません。年功序列、終身雇用が崩れつつある現代として考えれば、ちょっと意外ではないでしょうか。
こう考えてみると、若い世代は出世したくないからと言って、皆が積極的に転職を選んでいるわけでもないようです。つまり、「出世したくないけれども転職もしない」「平社員のままで安定していたい」という気持ちを抱えた若者が多いと言えるでしょう。
また、管理職になればさらに上の管理職からの要求が大きくなることは想像できます。つまり、部下と上司の板挟み状態に加えて、自分が犠牲にならない形を維持しつつ(自己の健康を保ちつつ)、うまく振る舞う能力も求められます。また、年功序列時代のように、耐えていれば自動的に給料があがって定年まで勤められるという状況はありません。こうなれば管理職はリスクが大きく、できれば避けたいという気持ちに至るのも無理はない気はします。
こういった状況は単に若者が弱くなった、だとか、今の若者は欲がないといった言説で片付けられるものではないと思われます。企業のあり方や働き方が大きく変化し、さまざまな人材が入り込む職場で、どのように人と向き合い、どのような方法が自分や周囲にとってより豊かな生活につながるのか、若者は試行錯誤しているのではないでしょうか。
管理職志向がある新人は減少傾向
リクルートマネジメントソリューションズは2017年に「新人・若手の意識調査」(インターネット調査、対象は全国の正社員801名、内訳は入社1年目116名、入社4年目343名、入社7年目342名)を行いました。これは2010年、2013年と継続的に行われています。これによると、管理職に「なりたい」「どちらかといえばなりたい」は31.9%です。2010年は55.8%、2013年は45.0%なので、継続して大きな減少傾向にあります。責任をあまり背負いたくないということでしょうか。このあたりに関連して、「働く上で重視すること」の調査項目を上位から並べたものが以下です(5段階回答で5が最大)。
1.収入が安定していること(4.1)
2.仲間と楽しく働けること(4.0)
2.自分の興味や関心に合致していること(4.0)
2.健康を損なう心配がないこと(4.0)
3.失業の心配がないこと(3.8)
3.自分の才能や能力を発揮できること(3.8)
3.自分の成長を感じられること(3.8)
4.高い収入を得ること(3.7)
5.自立して、人に気兼ねなくやれること(3.5)
5.社会の一員として務めを果たすこと(3.5)
6.働く時間が短いこと(3.4)
6.世の中のためになること(3.4)
7.世間からもてはやされること(2.9)
7.責任者として采配が振れること(2.8)
上位(4.0以上)には「収入の安定」「仲間との楽しさ」「興味」「健康」といった自分の在り方や内面に関する要素があり、下位(3.0未満)には「もてはやされること」「責任者として采配が振れること」といった、いわば自分の外側にある項目がきていると言えるのではないでしょうか。「もてはやされる」「采配を振るう」というのは響きからしても少し派手な感じがします。いわゆる一昔前の「モーレツ社員」といった感じの働き方でしょうか。
ただし、出世を望まないのだからすべからく正社員の離職や転職が盛んになっているかといえば、そうでもなさそうです。新卒3年以内の離職率は、過去30年間をたどっても3割程度で推移しており、そこまで大きな変化はありません。また、ここ数年の転職率の推移では、2013年の4.5%から2017年は4.8%と微増にとどまっています。また、この転職率を押し上げているのは、ここ数年で社会進出の幅が拡がった女性であり、男性の転職率は変化していません。年功序列、終身雇用が崩れつつある現代として考えれば、ちょっと意外ではないでしょうか。
こう考えてみると、若い世代は出世したくないからと言って、皆が積極的に転職を選んでいるわけでもないようです。つまり、「出世したくないけれども転職もしない」「平社員のままで安定していたい」という気持ちを抱えた若者が多いと言えるでしょう。
管理職はやりづらい
管理職に必要とされる能力は少し変化してきていると言えるでしょう。都道府県別労働局に寄せられるパワハラ(いじめ・嫌がらせ)の相談件数を見ると、右肩上がりに増えています。内訳を見ると、部下が上司からパワハラを受けたとする相談がトップです。もちろんパワハラは論外ですが、上司には部下を監督・指導する責任があることも事実です。部下とうまく関係が築けなければ、ちょっとしたことでパワハラと認識されてしまうことも考えられます。また、管理職になればさらに上の管理職からの要求が大きくなることは想像できます。つまり、部下と上司の板挟み状態に加えて、自分が犠牲にならない形を維持しつつ(自己の健康を保ちつつ)、うまく振る舞う能力も求められます。また、年功序列時代のように、耐えていれば自動的に給料があがって定年まで勤められるという状況はありません。こうなれば管理職はリスクが大きく、できれば避けたいという気持ちに至るのも無理はない気はします。
こういった状況は単に若者が弱くなった、だとか、今の若者は欲がないといった言説で片付けられるものではないと思われます。企業のあり方や働き方が大きく変化し、さまざまな人材が入り込む職場で、どのように人と向き合い、どのような方法が自分や周囲にとってより豊かな生活につながるのか、若者は試行錯誤しているのではないでしょうか。
<参考サイト>
・リクルートマネジメントソリューションズ:新人・若手の意識調査2016
https://www.recruit-ms.co.jp/research/inquiry/0000000560/
・厚生労働省:新規学卒者の離職状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
・総務省統計局:労働力調査(詳細集計) 平成29年(2017年)平均(速報)結果
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/
・あかるい職場応援団 データで見るパワハラ
https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/statistics/
・リクルートマネジメントソリューションズ:新人・若手の意識調査2016
https://www.recruit-ms.co.jp/research/inquiry/0000000560/
・厚生労働省:新規学卒者の離職状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
・総務省統計局:労働力調査(詳細集計) 平成29年(2017年)平均(速報)結果
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/dt/
・あかるい職場応援団 データで見るパワハラ
https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/statistics/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13


