社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.10.16

電機業界の年収ランキング、2018年の1位は?

 グローバル競争にさらされ、浮沈の激しい電機機器業界ですが、平均年収が高かった企業はどこでしょう。転職サイト「キャリコネ」などを運営するグローバルウェイが発表したランキングをのぞいてみましょう。

経営再建中のシャープが10位にランクイン

 まず、6位~10位を見てみましょう。

6位:三菱電機/627万円
7位:富士ゼロックス/620万円
8位:日立製作所/616万円
9位:リコー/572万円
10位:シャープ554万円

 富士ゼロックスからは、「メーカーではトップレベルの報酬額で基本的満足度は高い。マネジャーになれば年収は1,000万円超え。残業が多ければ、ヒラでも1,000万超え可能」と、好待遇を強調するコメントがありました。

 注目すべきは10位のシャープ。経営不振のため2016年8月以降、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入っています。2017年10月に3年ぶりの黒字を示し、12月には1年2カ月ぶりに東証一部へ復帰した同社。世界規模再編の成果として、給与の回復が期待できるのはこれからでしょう。

「年功」を排除した制度が電機業界スタンダード?

 では、いよいよ1位~5位です。

1位:ソニー/776万円
2位:パナソニック/666万円
3位:東芝/665万円
4位:NEC/650万円
5位:キヤノン/638万円

 どん底から「復活」したソニーのホクホク顔が見えてくるようです。社員からは「年功序列ではなく、成果に応じて給与が規定される『ジョブグレード制度』が採用されており、若い年齢でも多く給料をもらっている人が多い印象」「家賃補助が手厚い。家賃の6~7割程度を会社が負担してくれる」などの声が寄せられました。

 一方、パナソニック社員からは「頑張れば年収800万円は30代で到達できる。福利厚生もしっかりしており、年収+100万円は実質支給」されているとみなせるとの声も。

 3位東芝は、不正会計事件や原発子会社の巨額損失などでソニー以上の苦境に追い込まれ、一時は企業存続の瀬戸際まで追い込まれていました。2016年度より一般社員もボーナスがカットされるなど、緊急事態に陥っていた東芝ですが、今年はきちんと回復。特に2018年上半期は「東芝メモリ」の売却益が計上されたため、純利益は前年同期比約20倍を記録しました。

 電機業界は、賃金制度や週休二日制などを他の業界に先駆けて変革してきました。2015年以降、ソニー、日立製作所、パナソニックなどの大手企業は年功要素を排除した「職務・役割給」制度を導入しています(ソニー社員コメントの「ジョブグレード制度」はその一環)。
 

「100年後の生き残り」が期待される電機メーカーは?

 ここ数年、「家電不況」は時代の流れと見られてきましたが、三菱電機はIT、ソニーはゲーム、シャープはPCで、それぞれの苦境を脱出してきました。

 コンサルティング事業などを展開するリスクモンスターの調査では、「100年後も生き残っていそうな日本企業ランキング」にパナソニックは5位、ソニーは6位でベスト10入りしています。

 トヨタや日産などの自動車メーカーとともに日本経済をけん引してきた電機業界の実力には、日本中の期待が寄せられています。100年後も生き残っているとは、「安心感と信頼感がある」「世界的なブランド」「人材が豊富」などの評価から生まれる期待。社員の待遇がよければ、それだけ業績も上がるというものでしょう。

<参考サイト>
・企業口コミサイトキャリコネ:「電機機器業界の年収ランキング」を発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000018764.html
・リスクモンスター株式会社:100年後も生き残っていそうな日本企業ランキング
http://www.riskmonster.co.jp/rm-research/pdf/20170628.pdf#search='100%E5%B9%B4%E5%BE%8C+%E7%94%9F%E3%81%8D%E6%AE%8B%E3%82%8B+%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BC%81%E6%A5%AD'
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
2

『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価

『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価

歴史の探り方、活かし方(5)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈下〉

豊臣秀次事件に対する見方を変えた『武功夜話』だが、実は偽書疑惑もある。今回は、そのことに鋭く迫っていく。『武功夜話』は、豊臣秀吉に仕えて大名まで上り詰めた前野長康の功績を中心に記された史料だが、その発表・出版の...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/28
3

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
4

歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方

歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方

編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる

この人生を生きていくうえで、「歴史」をひもとくと貴重なヒントにいくつも出会えます。では、実際にはどのように歴史をひもといていけばいいのか。

今回の編集部ラジオでは、歴史作家の中村彰彦先生がご自身の方法論...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/27
5

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授