社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.01.21

1000億円をばらまく?中国のユーザー獲得戦争

 昨年12月、かつてない規模のキャッシュバックを行ったペイペイ「100億円あげちゃうキャンペーン」。全額キャッシュバックされた!という報告が相次いだ他、値崩れしにくい家電を購入して転売するユーザーが物議をかもすなどいろいろな面で話題を呼んだキャンペーンでした。冒頭で「かつてない規模」と書きましたが、実はこれ、中国ではよくある戦術なんです。

中国の「焼銭大戦」がペイペイの先輩?

 中国ではユーザー獲得のために目先の採算は度外視して先行投資することを「焼銭」「焼銭大戦」などと言います。かなり直接的な表現ですね。例えば少し前に評判となったシェアサイクル事業もそうです。2016年頃から中国で盛り上がったシェアサイクル事業は参入が容易なことから次々とサービスが始まりましたが、内容は大同小異。2018年には過当競争に耐えかねて撤退が相次ぎ、最大手のofoは経営危機が報じられ、CEOがビジネスモデルの限界を口にすることすらありました。つまり、「焼銭」をしたものの、着地点が見つからなかったわけです。

 ペイペイと同じ分野で大きく先行する中国のAlipayとWeChatPay。両サービスも「焼銭」では負けていません。文春オンラインの記事「PayPay“100億円祭り”は中国・アリババのモノマネである」によると、ユーザーに「お年玉」を配ったり、新商品や新機能に紐づけたキャッシュバックなどが繰り返されているそうで、Alipayがユーザー向け、事業者向けに投じた金額は1000億円を超えるという推測もあるようです。

ペイペイは100億円の元を取るには

 中国流の「焼銭」をしたペイペイは、100億円の元を取ることはできるのでしょうか?その答えはまだ出ていませんが、狙いは見えてきます。LINE Pay、d払い、楽天ペイなど今はQRコード決済を手掛けるサービスが乱立した状態。こうしたサービスは淘汰され小数の事業者によって寡占状態になるのが一般的で、先行してスタンダードになることが非常に重要です。ペイペイは今回のキャンペーンにより10日間で190万人の利用者を獲得したとされており、100億円を190万人で割ると、ユーザー1人当たりの獲得コストは5000円強。Yahoo! JAPANカードや楽天カードなどが入会特典として1万ポイント近いプレゼントを用意していることを考えると、5000円強という数字は決して高くないと見ることもできそうです。

 消費税増税に伴い、キャッシュレス決済をするとポイント還元する仕組みが導入される予定もあり、2019年はかつてないほどキャッシュレス決済が浸透することでしょう。サービスのスタートでは他社に遅れを取ったペイペイが100億円効果で一気にまくることができるのか、その争いにも注目です。

<参考サイト>
・PayPay“100億円祭り”は中国・アリババのモノマネである | 文春オンライン
http://bunshun.jp/articles/-/9914
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論

忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論

東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ

東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏が、海外でも有名な「ハチ公」の逸話を例に、人と犬の関係について考察する。第一回目は、ハチの飼い主・上野英三郎博士について触れ、東大とハチ公の結びつきや、東大駒場キ...
収録日:2017/04/04
追加日:2017/06/13
一ノ瀬正樹
東京大学名誉教授 武蔵野大学人間科学部人間科学科教授
2

変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人

変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人

エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」

エンタメビジネスにおいて一番大切なのは「人」である。さらに、「0から1を生める」クリエイターが必須であることはいうまでもないが、そのような人材だけではエンタテインメントビジネスは成立しない。時として異能で多様なク...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/10/28
水野道訓
元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEO
3

5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現

5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現

産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題

温暖化やエネルギー問題など、地球環境の持続可能性をめぐる議論はその緊急性が増している。そのような状況で日本はどのような社会を目指すべきなのか。モノの所有ではなく幸せを求める、持続可能な「プラチナ社会」の構想につ...
収録日:2025/04/21
追加日:2025/10/22
小宮山宏
東京大学第28代総長 株式会社三菱総合研究所 理事長 テンミニッツ・アカデミー座長
4

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
5

正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの

正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの

徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直

『書経』を研究する中で発見した真理について理解を深めていく今回。徳は天をも感動させる力を持ち、真の和合は神を動かす。そして、宇宙は人間のように、また人間も宇宙のように構成されており、その根底には「正直」がある。...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/25