社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
ハウステンボスを救った100万本のバラ
「失敗は成功のモト」である
なぜハウステンボスは最短で黒字化を達成できたのか。秘密は「失敗は成功のモト」という昔からのことわざにあった。うまくいかないことには、必ず原因があり、それを裏返せば成功につながる。それが、エイチ・アイ・エス会長澤田秀雄氏の「裏腹の哲学」なのである。
タダでもお客様が来ない最初の失敗
ハウステンボス1年目は、「格安航空券方式」の値下げ失敗で幕を開ける。航空券なら、割引すればするほど需要が増える。それを当て込み、当時5000円台だった入場料を4000円台に、夕方からの料金は、3000円の時間帯を2000円、2000円を1000円、1000円の時間帯はなんと無料で開放することに…。
結果は大ハズレで、タダにしても入場者は増えない。「面白くなければ、人は来ない」と気づいた最初の失敗である。
金食い虫の「バラ園」から最初のヒット
有田の陶器市を模したイベントにも人は集まらず、くさっていた澤田氏は園内に漂う芳香に気づく。バラの季節が始まっていたのだ。管理と手入れに莫大なコストがかかる「金食い虫」として、アウトレットへの転用を考えていたバラ園が、もう一度見直しの対象になる。
これほど素晴らしいバラ園を、なぜ人は見に来ないのか。徹底的な原因調査で「名前がわかりにくいのでは?」と盲点に気づいた澤田氏は、「100万本のバラ」をイベント名にする。
だだっ広さが「花の王国」の強みになった
「100万本のバラ」は最初のヒットとなり、集客は5割増し。本格的に季節の花で園内をつないでいく案がまとまり、「花の王国」が整備される。ここで、スタート前から弱点と言われてきた「だだっ広さ」は逆転して強みを見せる。同時に澤田氏のチームには「イメージの湧くわかりやすいキャッチを」という教訓が残り、今もさまざまに生かされている。
寒さ・暗さを逆手にとった「光の王国」
テーマパークというもの、日照時間にも左右される。11月から2月の「寒く・暗い」時期には、客入りも「寒く・暗く」なるのが通例だ(クリスマスや年末の時期は例外)。「光の王国」は、この欠点を逆にとらえ、「寒く・暗い」冬の夜を光によって「暖かく・明るく」演出したものだ。
企画は図に当たり、12月の入場者数が8月を上回る。「冬場はテーマパークの枯れ場」という従来の常識を、年々塗り替える記録が更新されているのだ。
オンリーワンか、ナンバーワンか
最初の1年を振り返ってみると、澤田氏に突きつけられたのは「何が人を呼ぶ面白い企画か」という難題だった。出した答えは「オンリーワンか、ナンバーワンか」。100万本のバラ園は、誰も観たことがないからこそ、誰もが見たくなる光景。そして「光の王国」のイルミネーションは、スタート時点で「日本一」の数を誇り、今や世界一の球数に達している。
失敗の裏に必ず成功は潜んでいる。問題は、それをいかに見抜くか。ハウステンボス1年目の失敗と成功は、その見事な縮図となった。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
チベット、内モンゴル、新疆ウイグルなど、少数民族に対する深刻な人権侵害をめぐって欧米諸国から強い批判を浴びている中国。しかし、こうした人権問題は今に始まったことではない。中華人民共和国建国の経緯と中国共産党の思...
収録日:2021/10/15
追加日:2021/12/24
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
「プロジェクトはとても複雑だ」「不確実である」といわれるが、それはなぜか。イノベーションとエンジニアリング、モジュールとインテグラル、オープンとクローズドという対立項をかけ合わせてプロジェクトが成立するからだ。...
収録日:2025/09/10
追加日:2025/12/04
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24


