社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
お金持ちに教えたい!生きるお金の使い方
アベノミクスでお金持ちは増殖中?
アベノミクスの経済効果で格差が広がり、日本にはお金持ちが増えている。野村総研の2014年の調べでは、富裕層(保有純金融資産1億円以上)+超富裕層(同5億円以上)の数は100.3万世帯となった。人口の約5%が富の約3分の1を握っているわけで、格差社会が糾弾されるのも当然だ。しかし、お金持ちの増殖と、今後もしばらくは増えていく現象自体に着目する学者がいる。慶應義塾大学大学院教授、曽根泰教氏である。
お金持ちに「お金の使い方」を教えよう
曽根氏の問題提起は明快だ。集中した富を再配分するため、富裕層に対して「お金の使い方」を教える専門家を増やそうというのだ。富裕層が亡くなった時の遺産を一つとってみても、社会への影響は大きい。何も知らずに相続税として国庫に吸収されれば「死に金」となり、行方はわからない。しかし、寄附にすれば、個別の大学や研究にお金を出し、学生個人に奨学金を与えることもできる。欧米では個人名を冠した大学の建物も多い。たとえは悪いが、墓石代わりに自分の名の入った建物を大学に寄附すると考えればいい。
目利きの使う「生き金」が文化をつなぐ
教育だけでなく、美術品や芸術にお金を使うことも、これに似ている。「目利き」と呼ばれる人々は絵画や茶道具などを選び抜き、お金を介して後世へ伝えていった。寺社仏閣の建て替えも、芸能や工芸の名人技の伝承も、お金がなければ始まらない。生活と文化を潤すために、「生き金」が使われてきたのだ。この流れを停滞させたのは、「成金」の出現だ。お金を使うノウハウも、知恵と経験も不足していた彼らは、芸術や文化、教育に価値を認める訓練を受けていなかったからだ。
MBAには限界がある
そして現代では、富裕層がいざ「大学に建物を寄附しよう」と思い立っても、すんなりとはいかない。品の悪い稼ぎ方で得たお金に対しては、大学側が受け取りを拒否するケースも多いからだ。せっかく稼いだお金を「死に金」にしないためには、従来のビジネススクールでは役に立たない。そこで学べるのは、経営や戦略、マーケティング、ファイナンスなど、お金を稼ぐ方法、利益を上げる方法に尽きている。
「夢のビジネススクール」構想
とはいえ、集まってきたお金の「流れ」を考えるには、理念や目標、価値、戦略などが問われることになる。これは経営を学ぶときとまったく等しい。どのように使えば、お金は生きるのか。その一つの指針を示すのが「財団」の歴史だ。ノーベル、ロックフェラー、フォード、ビル・ゲイツなど、各種財団がさまざまな研究に資金や名誉を提供し、「みんな」の幸福を保全してきた。
法人も個人もこぞって「生きたお金を使う」事例に取り組む研究・教育集団。「夢のビジネススクール」は、今最も必要とされる存在なのである。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,700本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
平和のための「国家連合」。このアイデアの源はサン=ピエールなのだが、現在ではカントの著作『永遠平和のために』が起源だともてはやされることが多い。その理由としては、「なぜ国家連合が必要なのか」「そもそもなぜ平和が...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/22
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
2025年8月、米露、米ウクライナ、EUの首脳会談が相次いで実現した。その成果だが、中でもロシアにとって大成功と呼べるものになった。ディール至上主義のトランプ政権を手玉に取ったロシアが狙う「ベルト要塞」とは何か。事実上...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/12/21
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
「逆境とは何に逆らうことなのか」「人はそもそも逆境でしか思考しないのではないか」――哲学者鼎談のテーマは「逆境に対峙する哲学」だったが、冒頭からまさに根源的な問いが続いていく。ヨーロッパ近世、ヨーロッパ現代、日本...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/19
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
日進月歩の進化を遂げている生成AIは、私たちの生活や仕事の欠かせないパートナーになりつつある。企業における生成AI技術の利用に焦点をあてる今シリーズ。まずは世界的な生成AIの導入事情から、日本の現在地を確認しよう。(...
収録日:2024/11/05
追加日:2024/12/24


