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池袋も消滅のおそれ!?25年後の日本の自治体
昨年、人口減から日本の自治体の約半分に「消滅のおそれ」があるという衝撃の予測が発表された。半分になるのは、2040年。今から、わずか25年後の未来だ。
この予測をまとめたのは、元総務大臣で現在東大客員教授の増田寛也氏。全国約1800ある自治体のうち、実に896もの市区町村が立ちいかなくなるという可能性があるというのだ。
消滅のおそれ=消滅ではない
この予測は報道のミスリードも手伝い、口コミで広まる間に「2040年に自治体の約半分が消滅する」と誤解されることも多かった。なので、はっきり確認しておきたいことは、「消滅」と、「消滅のおそれ」は違うということである。ここで言う「消滅のおそれ」とは、人口があまりに少なくなると、自治体の経営が立ちいかなくなるという意味である。自治体は大きすぎると細やかなサービスが行き届かなかったり、官僚化する公務員弊害が出て困るが、小さ過ぎるのもまずい。
消滅するよりも苦しくなる場合も
その地域に仕事が無くなると、稼げて納税する能力のある層は、仕事のある地域に流出する。その結果、人口が減り、自治体の提供する行政サービスを必要とする層だけが取り残される。つまり、支出は減りにくいのに、収入は激減するわけだ。また、そもそもある程度の規模が保たれていないと、サービスの一人当たりコストは上昇する。カレーを一皿分だけ作るよりも、いっぺんに百皿分作れば、仕入れもガス代も人件費も節約でき、一皿分の価格は安く上がるというのと同じことだ。いわゆる「規模の経済」のメリットが得られにくくなる。
そうすると、単に消滅するよりも苦しくなることも考えられる。十分な行政サービスが受けられないのに、徴収される税率は変わらないからだ。
また、公務員の人件費などは真っ先に経費削減の対象になる。現在、地方の場合、公務員は勝ち組と言われることが多いが、そうも言ってられなくなる。現に財政難に苦しむ夕張市では、4割も給料を削減された公務員もいるという。年収500万円なら、実に300万円まで下がるということだ。
公務員が下がるだけなら、民間は大丈夫…というわけにもいかない。地方自治体は公務員の飲食費や遊興費で経済が活性化している側面もある。国から地方交付税交付金で割り振られたお金が公務員を通じて、町に落ち、サービス業を盛り上げているのだ。その経済循環がダメージを受けると、民間の仕事も先細ってしまう。
東京なら大丈夫というわけでもない
地方から流出した人口を受け止める東京などの大都市なら大丈夫…と高をくくってもいられない。この調査の特徴は、出産適齢期とされる20~39歳の女性の人口に注目したことである。この減少率が5割になると、子どもが増えないということで、人口が減り、自治体の経営が立ちいかなくなるという予測なのだ。この減少率が4割以上の自治体に足立区や杉並区も含まれ、なんとあの池袋を抱える豊島区にいたっては50.8%減、つまり5割以上の消滅するおそれのある自治体ということになったのだ。
東京などの大都市は、地方からの人口流入により経済を活性化している。言ってみれば、地方の活力を吸い上げて元気を保っているわけだが、日本全体で出生率が下がってくると早晩このモデルも立ちいかなくなる。東京も高齢化を免れないということだ。
逆に過疎地が若返る?
現在の過疎地域では、次々に人口のボリュームゾーンである高齢者が寿命を迎えている。昨今のIターン、Uターンブームなどにより若年層がそういった地域に流入すると、逆に平均年齢が一気に若返ってしまうということもあるそうだ。そうなると、後で高齢化問題を迎える東京よりも、若い地域になるということもあり得る。しがらみのない若返った地域で、これからの人口減社会に合わせた新しい経済モデル、例えば今までの薄利多売モデルとは違う高付加価値商品の創造や、自給自足体制が確立するなどあれば、むしろ、東京よりも先進的な地域になる可能性もある。
東京に住んでいれば安心ということはない以上、そのような可能性に賭けてみるのも、これからのライフプランの選択肢のひとつになる。
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