テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義 ログイン 会員登録
DATE/ 2020.03.06

日本の「人材ミスマッチ」は世界最悪レベル

 人材不足が深刻化しています。特にハイスキル人材に関しては「人材ミスマッチ」が問題となっているようです。これは大きくいえば「グローバル化に日本の人材が持つスキルが追いついていない」ことを意味していると考えられます。結論からいえば、人事の意識改革が必要なのかもしれません。では実際にどういう状況にあるのでしょうか。データをもとに見て見ましょう。

日本ではハイスキル人材が不足している

 ハイスキル労働市場の動向が分かるものに「グローバル・スキル・インデックス」という調査があります。これはハイスキル労働市場での人材の需給効率を34の国や地域別に分析したもの。イギリスの人材紹介会社ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンと同オックスフォード・エコノミクスが共同で2012年から継続的に行っています。2019年版は11月に発表されました。調査の評価項目は「教育の柔軟性」「労働市場への参加」「労働市場の柔軟性」「人材のミスマッチ」「全体的な賃金圧力」「専門性の高い業界における賃金圧力」「専門性の高い職業における賃金圧力」といった7つ。これを0から10までの数値で示したものです。均衡の取れた最適な状態を5.0として0に近づくほど人材確保がしやすく、10に近づくほど人材確保が困難であることを表しています。日本のスコアは以下の通り。

教育の柔軟性:3.9
労働市場への参加:6.3
労働市場の柔軟性:7.0
人材のミスマッチ:9.8
全体的な賃金圧力:7.0
専門性の高い業界における賃金圧力:1.1
専門性の高い職業における賃金圧力:7.5

 目を引くのは高いスキルを持った人材の確保が容易かどうかを示す指標「人材ミスマッチ」のスコアの9.8です。日本は調査対象34の国・地域の中で下から2番目となりました。昨年のスコアが10とワーストだったので、わずかに改善しているとはいえます。しかし、ハイスキル人材がかなり不足していることがわかります。

 ちなみに「人材ミスマッチ」が最も高い(人材が足りない)のはアメリカでスコアは10です。日本が9.8で2位、3位はイギリスの7.3なので、アメリカと日本の「人材ミスマッチ」が突出しています。ただし、いくつかの分析を読むとアメリカと日本ではやや事情が異なるようです。アメリカでは労働者のスキル不足だけでなく、転職者が増加している一方で引越しを敬遠する傾向があることが大きな問題としてあるようです。これに対して日本では、急速なグローバル化に対して高等教育のあり方や企業の評価制度などが追いついていないという問題が考えられます。

 また「専門性の高い業界における賃金圧力」は1.1とたいへん低いですが、これは専門性の高い業界の賃金上昇が、そうでない業界の賃金上昇よりも遅いことを意味しています。このことについて2016年のヘイズの分析(この年も「人材ミスマッチ」は9.8で同じ)では、「低い数値の背景は深刻な人材不足によりサービス産業や福祉業界の賃金見直しが進められ、引上げペースが専門性の高い業界より早い為」とされています。

ADAS、HRBP、オフィスアドミニストレーターが特に不足

 どのような人材が不足しているのでしょうか。人工知能(AI)やデータサイエンティストなどのITに関連するものはもちろんですが、自動車業界では、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)分野での人材への需要が高まっています。ADASとは自動車が周囲の情報を把握して、加速、操舵、制動を行う技術です。センサーやカメラ業界や通信業界といった他業種からの人材を採用するケースが多いようです。

 また、経営管理に関するスキルとしてはHRBP (Human Resource Business Partner:HRビジネスパートナー)の需要が高まっています。これは企業の経営層や事業部門の責任者に対して、ビジネスパートナーあるいはアドバイザーの立場で戦略的な人事や組織サポートを行うプロのことです。従来の労務管理や人事制度で人事を調整するのではなく、経営により深く関わり、社員のモチベーションをどう高めていくか、海外展開する際の業務計画をどうするかといった戦略を人事面から提案するような「人事のプロフェッショナル」としての側面があります。

 また、2020年の傾向としては総務やオフィスアドミニストレーターといった職種の需要が高まることが予想されています。グローバル企業がオフィスの移転を行うことが想定され、これにともなう資材や用具、プロジェクトのコーディネートといった幅広い能力が求められています。新しいテクノロジーの開発とグローバル化はまだ加速していくことが見込まれます。今後も知識や経験を持った上で「スピード感を持って柔軟に動ける人材」が必要とされていると考えていいでしょう。

人材ミスマッチ解消のためには人事改革が必要

 ここまで見てきたことを考えると、今後のビジネスは、日本国内の習慣で仕事をしてきた人にはやや厳しいかもしれません。まずはある程度の英語力と臨機応変な対応ができることは必須です。ヘイズ社のリチャード・アードリーマネージング・ディレクターは、ミスマッチの拡大を防ぐには「雇用年数や年齢でなく個人のパフォーマンスに基づいた報酬制度の導入」「入社時の能力でなく学習意欲やコミュニケーション力、創造性などに着目した多様な採用体制」などが重要と発言しています。

 こういった点に関して、すでにNTTデータ、ソニー、NECの大企業3社では、優れた若手技術者らに従来よりも高額な報酬で処遇する制度を取り入れる動きがあります。また、日本オラクルは2019年11月に開いた「日本の職場におけるAI(人工知能)の活用に関する調査」の結果報告会で、AIが総務や経理ではあまり導入されていないことを明らかにしています。この点については先にHRBPの需要が高まっていることも示した通り、企業は「戦略的な人事」への意識を持ち始めています。今後、日本がハイスキル人材を確保していく際には、こういった人事への意識改革が鍵を握るのかもしれません。

<参考サイト>
・Hays Global Skills Index: Japan
https://www.hays-index.com/market/japan/
・ヘイズ 世界34カ国・地域 人材の需給効率調査(2019)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000230.000008738.html
・ヘイズ調査 人材不足を示す「人材ミスマッチ」、日本は世界33カ国中最悪(2018)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000195.000008738.html
・米国における転職と労働生産性|みずほ総合研究所
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/us190218.pdf
・日本の人材不足は「世界最悪クラス」、ヘイズが調査結果を発表 - ニュース:日経 xTECH Active https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00012/122000144/
・ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems,先進運転支援システム)の開発に関する基本情報|ZMP Robot of Everything
https://www.zmp.co.jp/knowledge/adas_dev
・【ヘイズトレンド予測2020】2020年求人増加が見込まれるホットな職種トップ10
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000232.000008738.html

あわせて読みたい