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DATE/ 2020.05.26

銀河系宇宙…私たちが暮らす「太陽系」とは?

 名作『銀河鉄道の夜』を書いた宮沢賢治の言葉に、「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じていくことである」(農民芸術概論綱要)というものがあります。

 地球全体のことを考えると日本だけに囚われているのがバカらしく思えてくるのと同様に、銀河系宇宙を思うと目の前のどんな悩みも小さく見えるはず。慶應義塾大学で天文学を研究する岡朋治教授もまた、銀河系宇宙の中における太陽系の小ささがブラックホールや宇宙の事象を理解する出発点だと言います。

冥王星降格後、太陽系の大きさは小さくなった?

 さて、私たちの暮らす地球が太陽系に属しているのは、みなさんご存じでしょうが、太陽系を構成する惑星はいくつあったでしょうか。「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」と唱えて育った世代には8つと言っても納得がいかない向きも多いかもしれません。

 冥王星が惑星から準惑星に「降格」されたのは2006年のこと。望遠鏡の高性能化によって、冥王星の大きさに匹敵する太陽系外縁天体が多く発見できるようになり、直接的には冥王星の近くに「エリス」と呼ばれるほぼ同等の天体が見つかったのがきっかけでした。

 現在ではこれらを太陽系の「外縁」と考えるため、太陽系の大きさは一番外側にある惑星、海王星の軌道半径で測られることが多くなっています。その距離は30天文単位。聞き慣れないことばですが、1天文単位は太陽と地球の距離を指します。太陽系は、その30倍程度。宇宙標準というべき「光年」の単位に直すと、0.0004763光年となります。太陽系から銀河系までの2万7000光年と比べるとあまりにもわずかで、太陽系がいかに小さな存在であるかが分かります。

天の川銀河の直径は? 質量は太陽の1.5兆倍?

 では、いよいよ視野を広げて、太陽系が属する「天の川銀河(銀河系)」のことを考えましょう。天の川銀河は「棒状渦巻銀河」と呼ばれる銀河に分類されます。直径は約10万光年、質量は1.5兆太陽質量で、太陽の1.5兆倍。年齢は宇宙年齢と大差ない130億年程度と言われます。

 銀河系を構成する要素として私たちが目にするのは恒星ですが、その数は2000億から4000億個もあるという壮麗さです。私たちはこの巨大な円盤を横から見るため、多数の星で埋め尽くされた天球上の川のようにとらえているわけです。

 しかし、銀河系を構成するのは恒星だけではありません。「星間ガス」と呼ばれるものが1割程度、さらに「ダークマター」という謎の物質がかなりの割合を占めていることが分かっています。私たちが住むような惑星を持つ恒星の割合については、まだまだ調査が必要な状況です。2000億個の恒星の半分が惑星を持つとしても1000億。そのうち生命体の住める環境はどれくらいあるのかなと、つい想像がふくらむところですね。

無数の銀河が埋め尽くす宇宙を意識する

 私たちが肉眼で観測できるのは銀河系の中でもごく近所にある恒星だけですが、天の川銀河のすぐ傍に大・小マゼラン雲などの衛星銀河があり、アンドロメダ銀河のような巨大な銀河も存在します。

 ハッブル宇宙望遠鏡で深く観測すると、ほぼ無数と言えるほどの銀河で宇宙空間が埋め尽くされていることが分かります。その一つひとつにどれほどの恒星や惑星が存在するのか。想像するだけで、気宇壮大になるではありませんか。

 「太陽系は、銀河系宇宙の中心ではなく、むしろ辺境」に位置することも、岩手を愛した詩人宮沢賢治が強調したかったことかもしれません。

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