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DATE/ 2020.10.11

茨城・栃木・群馬が魅力度で低迷するのはなぜか?

 2019年10月17日、民間シンクタンクのブランド総合研究所が「地域ブランド調査2019」を発表。同時に「都道府県魅力度ランキング2019」が公開され、トップグループおよびワーストグループの都道府県が話題となりました。

 そのうち、今回はワーストグループ中の茨城・栃木・群馬の北関東3県にスポットをあて、なぜ魅力度が低迷するのかを考えてみたいと思います。

「都道府県魅力度ランキング2019」トップ5・ワースト5

「都道府県魅力度ランキング2019」トップ5
順位(前年順位)都道府県名:点数
1位(1位)北海道:61.0
2位(2位)京都府:50.2
3位(3位)東京都43.8
4位(4位)沖縄県40.4
5位(5位)神奈川県34.5

「都道府県魅力度ランキング2019」ワースト5
順位(前年順位)都道府県名:点数
47位(47位)茨城県:9.4
46位(44位)佐賀県:11.2
45位(42位)群馬県:11.5
44位(46位)徳島県:12.2
43位(44位)栃木県:12.5

 「都道府県魅力度ランキング2019」トップ5は、2018年と全く同じ順位という結果となりました。なお1位に輝いた北海道は、11年連続の首位に輝いています。

 他方、「都道府県魅力度ランキング2019」ワースト5をみてみると、ワースト1である最下位の47位に茨城県がランクイン。ちなみにこの結果は前年同様というだけでなく、7年連続の残念な結果となっています。同じく北関東のうち、群馬県は45位(前年の42位からさらにランクダウン)、栃木県は43位(前年は44位)でした。

 さらに悲しいことに、北関東3県の魅力度の低迷は、数年来の結果であることです。直近の過去10年の結果は、以下となっています。

「都道府県魅力度ランキング」(2019年~2010年:茨城県・栃木県・群馬県)
(県・年)2019:2018:2017:2016:2015:2014:2013:2012:2011:2010
栃木県/43位:44位:43位:46位:35位:41位:41位:44位:42位:45位
群馬県/45位:42位:41位:45位:44位:46位:44位:47位:44位:41位
茨城県/47位:47位:47位:47位:47位:47位:47位:46位:47位:47位

北関東3県の魅力度低迷の理由を考察

 1)数多の“魅力”が“魅力度”にまで至っていない?

 残念ながら「都道府県魅力度ランキング」の結果が悪かったとしても、そもそも論として、“魅力度”と“魅力”は違います。北関東3県にも“魅力”はたくさんあります。

 例えば茨城は、メロンやレンコンなど新鮮な農作物の生産が豊富な一方、常陸牛やあんこう鍋など海山の絶品ご当地グルメも多数あります。また豊富で良質な水資源を生かした酒類の生産も盛んで、地酒だけでなくビール工場もあります。

 そして、日本三大庭園の一つでもある偕楽園、武神として崇敬されている鹿島神宮、潮来の水郷観光、国営ひたち海浜公園など、景勝地や観光地も多数あります。

 また栃木にも、いちごやかんぴょうなど、おいしい農産物がたくさんあります。他方、宇都宮餃子や宇都宮焼きそば、足利ソースかつ丼、佐野ラーメンなど、いつでも食べたい“間違いなし”グルメも多数そろっています。

 そして、“日光を見ずして結構と言うな”ともいわれる日光東照宮、首都圏からもアクセス良好な温泉リゾート鬼怒川温泉、華厳の滝、中禅寺湖、那須高原、足尾銅山、戦場ヶ原など、景勝地や観光地も多数あります。

 さらに群馬にだって、キャベツやコンニャクイモなど、新鮮な農作物がいろいろあります。また、おっきりこみ、こんにゃく料理、水沢うどん、高崎パスタ、太田焼きそば、ソースカツ丼、峠の釜めし、焼きまんじゅうなど、おいしいご当地グルメも豊富です。

 そして、世界文化遺産の富岡製糸場、天下の名湯と賞される草津温泉、日本三奇勝の一つでもある妙義山、春名神社や伊香保温泉など、景勝地や観光地も多数あります。

 つまり、北関東3県の魅力度低迷の一つとして、“魅力”という実力はあるものの“魅力度”というイメージ戦略の結実にまで未だ至っていないこと。つまりは“魅力度”周知の経過途中である、ということなのかもしれません。

 2)“自虐”および“コンプレックス”の裏返し?

 もう一つのそもそも論として、「都道府県魅力度ランキング」はランキングであるため、相対評価となっています。

 そのため、どんなに魅力があっても下位にランキングされる場合もありますし、さらには首都圏に近い北関東3県は、インパクトがありトップ5にもランクインしている東京や神奈川に比べて、残念ながら相対的にランキングが低迷してしまうことはやむを得ないことなのかもしれません。

 そのうえ、自虐ネタとしてメディアで喧伝されたり、北関東3県の県民および出身者たちが謙遜およびコンプレックスの裏返しによって魅力度の低迷を嘆いたりしたことによって、よりいっそうイメージが強化されてしまったのかもしれません。

“魅力度”は情報の総量で勝負する時代

 「悪名は無名に勝る」ではありませんが、SNS隆盛の時代、話題の総量こそがパワーの源泉となり得ます。今は魅力度が低迷していたとしても、視点を変えれば「魅力度が低い」という“情報”であったとしても、情報としての価値には変わりはありません。

 また、ネガティブな情報であったとしても総量が増えることによって、逆転した際の反動も大きくなるというポジティブな可能性も秘めています。

 ポテンシャルも高く伸び代も大きいといえる、茨城・栃木・群馬の北関東3県。ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

<参考文献・参考サイト>
・地域ブランド調査2019~地方創生から5年、市区町村の魅力度が36%上昇~
https://news.tiiki.jp/articles/4387
・都道府県&市区町村魅力度ランキング2019【47都道府県・完全版】
https://diamond.jp/articles/-/217740
・『「北関東三県」の不思議と謎』(風来堂編、じっぴコンパクト新書)
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小原雅博
東京大学名誉教授