テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.12.08

世界の「デジタル競争力」ランキング

 日本はどれくらい電子化が進んでいるのでしょうか。マイナンバー制度が中途半端なまま進まない状況などから考えると、やや不安ではあります。世界に目を向けて確認してみましょう。ここでは「デジタル競争力」に関する資料を見ながら、デジタル化をめぐる世界の状況を見ます。

デジタル競争力ランキング1位はアメリカ

 スイス・ローザンヌにあるビジネススクール、国際経営開発研究所(The International Institute for Management Development、IMD)は「世界のデジタル競争力ランキング」を発表しています。このランキングは世界63の国と地域に対して、「知識」「技術」「将来への備え」の3つを大項目とした51の分野別データを総合して評価を出しています。この評価は大きく言えば、その地域の政府や企業のデジタル技術への積極性を測る指標といえます。ということで2020年版のランキングトップ10は以下の通り。

1位 アメリカ
2位 シンガポール
3位 デンマーク
4位 スウェーデン
5位 香港
6位 スイス
7位 オランダ
8位 韓国
9位 ノルウェー
10位 フィンランド

 総合1位のアメリカは「知識」1位、「技術」7位、「将来への備え」2位です。アメリカは3年連続で1位とのこと。評価される要因は科学や技術への投資が挙げられています。具体的には「科学・技術系人材の集積や、教育や研究開発分野でのロボットの活用」といったところが高く評価されているようです。総合2位のシンガポールは「知識」2位、「技術」1位、「将来への備え」12位です。総合3位のデンマークは「知識」6位、「技術」9位、「将来への備え」1位。トップ10の顔ぶれは前回と同じです。IMDはここの挙げた10の国と地域に関して、「効果的な規制の枠組みや、新技術の導入が早いといった点で共通している」と分析しています。

日本は27位

 今回のランキングでの日本の順位は27位となっています。掲載されている2016年からの変化を見ても22位から27位で推移しています。また3つの項目別で見ると、「知識」22位、「技術」26位、「将来への備え」26位です。比較的評価されている部分は、「知識」での「高等教育の生徒当たり教師数(1位)」や「技術」の「モバイルブロードバンド利用者数(1位)」、「将来への備え」での「ソフトウエア著作保護(2位)」といった点。

 一方で比較的評価が低い項目(55位以下)は以下の通り。「知識」での「国際的経験(63位)」や「デジタル技術でのスキル(62位)」「教育への公的支出(55位)」「女性研究者(56位)」。「技術」では、規制の枠組みでの「移民法(56位)」。「将来への備え」では「ビッグデータの機会と脅威(63位)」「ビッグデータと分析の活用(63位)」「ビジネスの俊敏性(63位)」といったところです。

日本はビッグデータを活用できていない

 国際性というところでの立ち遅れとビッグデータ関連での低さが目立ちます。今回の分析から離れて日本でのビッグデータの活用について、国内の声を調べてみると「産業データ」の活用があまり進んでいない実態があるようです。「産業データ」とは、例えば工場等の生産現場におけるIoT機器から収集されるデータ、橋梁に設置されたIoT機器からのセンシングデータ(歪み、振動、通行車両の形式・重量など)などといったいわゆる「M2M(Machine to machine)データ」と言われるもの、および、仕事上のノウハウをデジタル化した「知のデジタル化」の2つを指しています。

 平成29年度版情報通信白書によると、産業データを「既に積極的に活用している」または「ある程度活用している」と回答した日本企業は合わせて51.8%。一方アメリカ企業では69.4%、イギリス企業では64.5%、ドイツ企業では72.1%という結果が出ています。日本では、まだデータ活用に対する意識の重要性への認識が、他国に比べてやや低いと言えそうです。

<参考サイト>
・The IMD World Digital Competitiveness Ranking 2020│IMD
https://www.imd.org/wcc/world-competitiveness-center-rankings/world-digital-competitiveness-rankings-2020/
・IMDデジタル競争力ランキング、スイス6位、日本は27位へ後退|JETRO
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/10/8f7f56aaed9d2af4.html
・第1部 特集 データ主導経済と社会変革 第1節 広がるデータ流通・利活用 1ビッグデータの定義及び範囲|総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc121100.html
・第1部 特集 データ主導経済と社会変革 第2節 データ流通・利活用における課題
(1)データ利活用の状況及び課題|総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc122310.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?

東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結び...
収録日:2024/09/19
追加日:2024/11/21
2

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点

猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
神藏孝之
公益財団法人松下幸之助記念志財団 理事
3

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代

これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産...
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
中西輝政
京都大学名誉教授
4

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原

『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18
堀口茉純
歴史作家
5

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担

人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
森田朗
一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事