社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
世界のインターネット自由度ランキング
インターネット上の自由は、オフラインと同様に守られるべき。その原則を掲げて「インターネット上の自由度ランキング」を毎年発表する団体があります。いったいどんな組織なのか、今年選ばれた優良国はどんな顔ぶれなのかなど、調べてみました。
2009年に15か国を対象としてつくったパイロット版以来、フリーダム・ハウスでは毎年「Freedom on the Net」を発表。最新の2020年版では対象地域は65か国にわたり、世界のインターネット人口の87%をカバーしています。
レポートでは、世界中の政府や非国家主体がオンライン上で市民の権利を制限しているかどうかを調べるため、三つのカテゴリを設けています。
一つ目は「アクセス障害」で、インフラや経済面、法令面などによる規制がなされているかどうかが問われます。二つ目は「内容(コンテンツ)の制約」。検閲やフィルタリング、ブロッキング、自主規制などが問われます。三つ目は「個人の権利侵害」で、ユーザーへの監視やプライバシー侵害が起こっていないか、サイバー攻撃なども含め、オンライン上の言論や活動に対する自由を精査していきます。
以上3つのカテゴリに対して用意されたチェック項目は100に上り、団体内の専門家により「自由」「やや自由」「不自由」の判定がなされます。そうして出されたスコアに対し、対象国の専門家や学者、一般市民の代表などによる国際電話会議や検討会が開催されて、調整されていきます。
1位:アイスランド 95ポイント(25, 34, 36)
2位:エストニア 94ポイント(25, 32, 37)
3位:カナダ 87ポイント(23, 32, 32)
4位:ドイツ 80ポイント(22, 30, 28)
5位:イギリス 78ポイント(23, 30, 25)
6位:フランス 77ポイント(23, 30, 24)
7位:オーストラリア 76ポイント(23, 28, 25)
7位:ジョージア 76ポイント(19, 31, 26)
7位:イタリア 76ポイント(21, 30, 25)
7位:アメリカ合衆国 76ポイント(21, 30, 25)
日本はこの表に次ぐ11位で、アルメニアと同じ75ポイント(21, 28, 26)となっています。トップ集団より低い評価がなされたのは「内容制約」の点で、ネット言論に何らかの規制が感じられます。
またワースト5は、総合ポイントの低い順に中国10ポイント(8, 2, 0)、イラン15ポイント(7, 5, 3)、シリアポイント(6, 8, 3)、ベトナム22ポイント(11, 7,4)、キューバ22ポイント(5, 10,7)。個人の権利が顧慮されていない点、不自由極まると言わざるをえません。
今や「e-エストニア(電子国家エストニア)」を名乗る、人口約132万人の小国が電子内閣に踏み切ったのは2000年。その後、電子投票、学校でのオンライン学習、行政手続きやヘルスケアサービスのデジタル化を進めました。
今般のコロナ禍においてもデジタル公共サービスの多くは中断されることなく、3月初旬からのロックダウンの間も、政府サービスの99%がオンラインで提供されました。パンデミックに関する質問の自動応答サービス、実際に支援を必要としている人とボランティアを結びつけるプラットフォームなどが生まれ、市民生活の不安解消に一役買いました。
エストニアでは、パンデミック以前から電子化ソリューションを活用していた学校が87%に上り、2015年までにすべての教材がデジタル化されています。世界中の10代の若者たちの学習到達度を測るテスト「PISA」で、エストニアは2018年にヨーロッパで1位になりました。今回の危機下で多くの国が休校と学習の遅れに悩むなか、デジタル教育に数歩秀でていたエストニアは、今後も注目すべき存在といえるでしょう。
どんな団体が、どんな手法で調べているのか
2020年版「インターネット上の自由度ランキング」が発表されています。調査しているのは国際NGOフリーダム・ハウス(Freedom House)。1941年にワシントンDCに設立された「世界規模で自由を守る」ために活動する、米国では初の組織として知られています。創設メンバーはジャーナリスト、学者、政治家、労働党指導者たち。当時のファーストレディだったエレノア・ルーズベルトとウェンデル・ウィルキーが名誉共同議長を務めました。2009年に15か国を対象としてつくったパイロット版以来、フリーダム・ハウスでは毎年「Freedom on the Net」を発表。最新の2020年版では対象地域は65か国にわたり、世界のインターネット人口の87%をカバーしています。
レポートでは、世界中の政府や非国家主体がオンライン上で市民の権利を制限しているかどうかを調べるため、三つのカテゴリを設けています。
一つ目は「アクセス障害」で、インフラや経済面、法令面などによる規制がなされているかどうかが問われます。二つ目は「内容(コンテンツ)の制約」。検閲やフィルタリング、ブロッキング、自主規制などが問われます。三つ目は「個人の権利侵害」で、ユーザーへの監視やプライバシー侵害が起こっていないか、サイバー攻撃なども含め、オンライン上の言論や活動に対する自由を精査していきます。
以上3つのカテゴリに対して用意されたチェック項目は100に上り、団体内の専門家により「自由」「やや自由」「不自由」の判定がなされます。そうして出されたスコアに対し、対象国の専門家や学者、一般市民の代表などによる国際電話会議や検討会が開催されて、調整されていきます。
2020年版、最もネット上の自由度の高いベスト10は?
では、「Freedom on the Net 2020」を確認していきましょう。インターネット上の自由度の高いベスト10は以下の順、カッコ内は(アクセス障害、内容制約、個人の権利障害)の各ポイントです。1位:アイスランド 95ポイント(25, 34, 36)
2位:エストニア 94ポイント(25, 32, 37)
3位:カナダ 87ポイント(23, 32, 32)
4位:ドイツ 80ポイント(22, 30, 28)
5位:イギリス 78ポイント(23, 30, 25)
6位:フランス 77ポイント(23, 30, 24)
7位:オーストラリア 76ポイント(23, 28, 25)
7位:ジョージア 76ポイント(19, 31, 26)
7位:イタリア 76ポイント(21, 30, 25)
7位:アメリカ合衆国 76ポイント(21, 30, 25)
日本はこの表に次ぐ11位で、アルメニアと同じ75ポイント(21, 28, 26)となっています。トップ集団より低い評価がなされたのは「内容制約」の点で、ネット言論に何らかの規制が感じられます。
またワースト5は、総合ポイントの低い順に中国10ポイント(8, 2, 0)、イラン15ポイント(7, 5, 3)、シリアポイント(6, 8, 3)、ベトナム22ポイント(11, 7,4)、キューバ22ポイント(5, 10,7)。個人の権利が顧慮されていない点、不自由極まると言わざるをえません。
躍進するe-エストニアのまねたい部分は?
今回のレポートには新型コロナのパンデミックが大きな影を落としています。そんななか、最先端の電子政府として名を馳せたのが2位のエストニア。バルト三国のひとつで、ロシア、ラトビアと国境を接し、北はフィンランド湾、西はバルト海に面しています。今や「e-エストニア(電子国家エストニア)」を名乗る、人口約132万人の小国が電子内閣に踏み切ったのは2000年。その後、電子投票、学校でのオンライン学習、行政手続きやヘルスケアサービスのデジタル化を進めました。
今般のコロナ禍においてもデジタル公共サービスの多くは中断されることなく、3月初旬からのロックダウンの間も、政府サービスの99%がオンラインで提供されました。パンデミックに関する質問の自動応答サービス、実際に支援を必要としている人とボランティアを結びつけるプラットフォームなどが生まれ、市民生活の不安解消に一役買いました。
エストニアでは、パンデミック以前から電子化ソリューションを活用していた学校が87%に上り、2015年までにすべての教材がデジタル化されています。世界中の10代の若者たちの学習到達度を測るテスト「PISA」で、エストニアは2018年にヨーロッパで1位になりました。今回の危機下で多くの国が休校と学習の遅れに悩むなか、デジタル教育に数歩秀でていたエストニアは、今後も注目すべき存在といえるでしょう。
<参考サイト>
・Freedom on the Net | Freedom House
https://freedomhouse.org/report/freedom-net
・電子国家「e-Estonia」 へようこそ
https://e-estonia.com/wp-content/uploads/2828-e-estonia-introduction-presentation-jap-estonian-design-team-19121622.pdf
・Freedom on the Net | Freedom House
https://freedomhouse.org/report/freedom-net
・電子国家「e-Estonia」 へようこそ
https://e-estonia.com/wp-content/uploads/2828-e-estonia-introduction-presentation-jap-estonian-design-team-19121622.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
「織田家中一の武略者」――今までの大河ドラマでは見たことがない秀吉の姿が見られるという2026年NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』。いったいどういうことなのか。日本史の中でもファンの多い戦国時代だが、特に「天下一統」に向かう...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/17
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
国家が的確な情報を素早く見つけ行動するためには、インテリジェンスが欠かせない。日本の外交がかくも交渉下手なのは、インテリジェンスに対する意識の低さが原因だ。日本人の苦手なインテリジェンスの重要性について、また日...
収録日:2017/11/14
追加日:2018/05/07
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
葛飾北斎の娘であるお栄は、「応為」という画号で独自の絵画表現を切り拓いた。北斎とは異なる、女性ならではの描き方は、特に身体表現に現れ、西洋画の陰影表現の色濃い影響を感じさせる。積極的に新たな画法を吸収し、後世の...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/13
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/16


