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なぜ「名古屋」は魅力度が低いのか?
ブランド・イメージ調査で最下位の名古屋
名古屋市観光文化交流局が2018年に実施した「都市ブランド・イメージ調査」では、名古屋市が最下位という結果になりました。この調査は、名古屋市の魅力向上政策やプロモーション事業に役立てるために実施されたもの。札幌市・東京23区・横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市・福岡市の8都市それぞれに5年以上在住している20歳から64歳の男女3344人(各都市418人)を対象に行われました。そのなかで名古屋市は、「最も魅力に欠ける都市」1位に選ばれています。その割合は31.9%にもなり、15.7%で2位となった福岡市のほぼダブルスコアという圧倒的な票差でした。名古屋市による同様の調査は2016年にも行われており、なんとこのときも名古屋市が最下位。この結果を受けた名古屋市は対策を講じて改善をはかりましたが、短期間でのイメージアップは難しかったようです。
しかし名古屋市には八丁味噌などの味つけが特徴的な名古屋めしや、史料をもとに忠実な復元を施した名古屋城など、魅力的なポイントがたくさんあります。幅広い年齢層に支持されているコーヒーチェーン・コメダ珈琲も名古屋発。それなのになぜ、魅力度が低いと評価されたのでしょうか。その大きな理由は、名古屋市民の気質にあるようです。
最下位の理由を分析すると
実は、名古屋市民には「地元をほめない」傾向があるのです。その気質を表すように、自分が在住する都市での買い物や観光をおすすめする「推奨度」が8都市のなかで最も低い13.9%となっています。推奨度1位の福岡市は58.1%、6位の京都市と大阪市は32.5%、7位の東京23区でも25.1%なので、圧倒的に名古屋市だけ低いことがわかりますよね。さらに推奨度以外の愛着度と誇り度も8都市中6位で、全体的に低調な結果となっています。名古屋市の愛着度は55.5%で、最も低い都市が52.2%の東京23区。そして名古屋市の誇り度は32.5%で、最も低い都市が25.8%の大阪市です。しかし推奨度では東京23区も大阪市も名古屋市を2倍近く上回っています。このデータにも、名古屋市民が名古屋市を“推し”ていないことが表れていますよね。そもそも名古屋市民が名古屋市をほめないので、外部からも「魅力がない」と思われてしまっている可能性が高いのです。
確かに、新幹線「のぞみ」の一部が名古屋駅に停車しなかったことからいわれはじめた「名古屋飛ばし」という言葉もあるように、名古屋市は主要都市のなかではやや目立たない立場にいるかもしれません。しかし、名古屋市の魅力を詳細に伝えられるのはやはり名古屋市民です。ぜひ、もっと魅力を発信してほしいですよね。
名古屋を訪れる人はこれから増えるのか
ただし、現実がこのランキングどおりかというと決してそうではありません。愛知県の2019年の観光客数は前年より5%増えており、統計開始後の最多記録となりました。この結果は愛知県全体のものですが、県庁所在地である名古屋市の観光客も増加したと考えてよいでしょう。前年に「最も魅力に欠ける都市」1位とされながらも、外部から訪れる人は増えているのです。このような記録をおさめた大きな理由は、2019年の愛知県に話題性の高い施設が次々オープンしたからでしょう。中部国際空港に飛行機のテーマパークを中心とした複合商業施設・フライトオブドリームズが開業したほか、中部国際空港直結の大型エキシビジョンセンター・アイチスカイエキスポも完成。愛知県美術館のリニューアルオープンも注目を集めました。現在はコロナ禍への対策として、愛知県ならではの魅力を細分化してターゲット層を絞った「あいち「ツウ」リズム」で、三密を避けた少人数の観光を提供しています。この「ツウ」リズムによって、コロナ後も愛知県や名古屋市の魅力を存分に伝えられる観光スタイルが定着するのではないでしょうか。「都市ブランド・イメージ調査」は2018年以降実施されていませんが、次回があれば名古屋市民も「ツウ」な部分に気づいておすすめしたくなり、順位が上昇する可能性もありますよね。
また、「都市ブランド・イメージ調査」は観光都市としての魅力調査に特化されていることも忘れてはなりません。日本のほぼ中央に位置する名古屋市は全国の文化の交差点であり、ファッションやグルメの流行をしっかりとキャッチしながら独自の文化も発展させています。また、戦国時代の三英傑である織田信長・豊臣秀吉・徳川家康ゆかりの史跡も多く、歴史的な情緒もあります。名古屋市は“普段使い”に便利な住みやすい都市でもあるのです。
<参考サイト>
平成30年度都市ブランド・イメージ調査を実施しました│名古屋市
https://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/page/0000084816.html
「名古屋は行きたくない街」2年連続“魅力度”最下位のワケは?市の担当者に聞いてみた│FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/5540
平成30年度都市ブランド・イメージ調査を実施しました│名古屋市
https://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/page/0000084816.html
「名古屋は行きたくない街」2年連続“魅力度”最下位のワケは?市の担当者に聞いてみた│FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/5540
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