社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
	
「サグラダ・ファミリア」の完成が遅い理由
		        	    
 スペインのバルセロナ屈指の観光名所、サグラダ・ファミリア。建築家アントニ・ガウディが設計したこの聖堂は、着工から130年経った今でも建設中という「未完の世界遺産」として知られています。
なぜサグラダ・ファミリアは、ここまで完成に時間がかかっているのでしょうか。そして完成には、あとどのくらいの時間を要するのでしょうか。
神秘的な魅力を放つ、サグラダ・ファミリア未完の秘密を解説します。
サグラダ・ファミリアは日本語で「聖家族贖罪聖堂(教会)」といい、イエス・キリストと母マリア、マリアの夫ヨセフの一家に捧げる教会として1882年に着工を開始しました。当初はフランシスコ・ビリャールという建築家が設計を担当していましたが、関係者と対立して辞任したため、ガウディはその後釜として指名されました。この時ガウディは弱冠31歳の無名建築家でしたが、非凡の才を見込まれての大抜擢でした。
「聖堂全体で聖書の世界を表現したい」と考えたガウディは、キリスト教や聖堂建築について猛勉強し、デザインを一から設計し直しました。次第に建築家としての名声が上がり、複数のプロジェクトを抱えるようになってからも、サグラダ・ファミリアの建設を天命と感じるようになったガウディの情熱は衰えることはなく、年々デザインもより複雑かつ壮大なものとなっていきました。
ガウディは「自然の中にすべての教科書がある」という独自の哲学から、直線的・画一的表現を排除し、自然が生み出す曲線美、構造の安定性を徹底的に追求。その結果、樹木に見立てた柱や破砕タイルによるモザイク装飾といった、サグラダ・ファミリア独特の造形が生まれました。
建築主任となって29年後の1914年、ガウディは他の仕事をすべて断り、サグラダ・ファミリアの建築に没頭します。しかしその12年後の1926年6月7日、ミサに行く道中で不慮の事故に遭い、73歳でこの世を去りました。
ガウディ亡き後も、その遺志を継ぐ弟子達によって建設は続けられることになりましたが、ガウディが死去して95年経った今も建設の途上にあります。ガウディがとことんこだわった設計とはいえ、なぜこんなにも完成が長引いているのでしょうか。
ガウディも自身の存命中には完成しないと悟っていたのか、多くの詳細なスケッチと模型を残しました。ガウディ亡き後は、弟子達がそれらのスケッチをもとに設計図を作成したといいます。
しかし不運にも、スペイン内戦によってそのほとんどが焼失。残されたのは実験模型と、ガウディのスケッチたった1枚だけとなってしまいました。後代の建築家たちは、この残されたわずかな資料とガウディの思想をもとに、想像と推測で建設を続けなければならなくなったのです。これがサグラダ・ファミリアの完成が遅れている最大の理由となっています。
さらに建設工事の反対運動が起こることもあり、そのたびに工事が中断されました。こうした中断期間は実に30年ほどになり、未完成のまま博物館にするという提案もあったそうです。
サグラダ・ファミリアの理事会とバルセロナ市は2年間、この問題で反発しあっていましたが、2018年にサグラダ・ファミリア側が解決金3600万ユーロ(約47億円)を市に支払うことで合意。工事は正式に許可されました。支払金は観光による混雑緩和のための交通整備などに充てられるということです。
しかし残念ながら、現在は新型コロナウイルス流行の影響で工事が中断されており、工事責任者は2026年までの完成は難しいとコメント。完成はまた一段と遠のいてしまいました。
とはいえ無事に合法建築となり、ゴールが見えてきたサグラダ・ファミリア。唯一無二の神秘の教会が堂々とその姿を現す日が来ることを、今も多くの人々が待ち望んでいます。
		        なぜサグラダ・ファミリアは、ここまで完成に時間がかかっているのでしょうか。そして完成には、あとどのくらいの時間を要するのでしょうか。
神秘的な魅力を放つ、サグラダ・ファミリア未完の秘密を解説します。
“孤高の天才”ガウディが生涯かけ取り組んだ、美しき大聖堂
スペインのバルセロナには、ガウディが手がけた建築物7件が『アントニ・ガウディの作品群』として世界遺産に登録されています。サグラダ・ファミリアはそのうちの1件で、完成している「誕生のファサード(正面門)」と「地下聖堂」のみが正式登録されています。サグラダ・ファミリアは日本語で「聖家族贖罪聖堂(教会)」といい、イエス・キリストと母マリア、マリアの夫ヨセフの一家に捧げる教会として1882年に着工を開始しました。当初はフランシスコ・ビリャールという建築家が設計を担当していましたが、関係者と対立して辞任したため、ガウディはその後釜として指名されました。この時ガウディは弱冠31歳の無名建築家でしたが、非凡の才を見込まれての大抜擢でした。
「聖堂全体で聖書の世界を表現したい」と考えたガウディは、キリスト教や聖堂建築について猛勉強し、デザインを一から設計し直しました。次第に建築家としての名声が上がり、複数のプロジェクトを抱えるようになってからも、サグラダ・ファミリアの建設を天命と感じるようになったガウディの情熱は衰えることはなく、年々デザインもより複雑かつ壮大なものとなっていきました。
ガウディは「自然の中にすべての教科書がある」という独自の哲学から、直線的・画一的表現を排除し、自然が生み出す曲線美、構造の安定性を徹底的に追求。その結果、樹木に見立てた柱や破砕タイルによるモザイク装飾といった、サグラダ・ファミリア独特の造形が生まれました。
建築主任となって29年後の1914年、ガウディは他の仕事をすべて断り、サグラダ・ファミリアの建築に没頭します。しかしその12年後の1926年6月7日、ミサに行く道中で不慮の事故に遭い、73歳でこの世を去りました。
ガウディ亡き後も、その遺志を継ぐ弟子達によって建設は続けられることになりましたが、ガウディが死去して95年経った今も建設の途上にあります。ガウディがとことんこだわった設計とはいえ、なぜこんなにも完成が長引いているのでしょうか。
【完成が遅い理由:1】設計資料ほぼゼロ!不明部分は「想像」でカバー
自然が作り出す美を愛したガウディは、数字や計算式を使って図面を書くことを好まず、主に実験や模型を使って設計していました。これは非常に手間暇がかかる作業で、緻密すぎるデザインの最終形は、もはやガウディの脳内にしかないと言われるほど。ガウディも自身の存命中には完成しないと悟っていたのか、多くの詳細なスケッチと模型を残しました。ガウディ亡き後は、弟子達がそれらのスケッチをもとに設計図を作成したといいます。
しかし不運にも、スペイン内戦によってそのほとんどが焼失。残されたのは実験模型と、ガウディのスケッチたった1枚だけとなってしまいました。後代の建築家たちは、この残されたわずかな資料とガウディの思想をもとに、想像と推測で建設を続けなければならなくなったのです。これがサグラダ・ファミリアの完成が遅れている最大の理由となっています。
【完成が遅い理由:2】資金不足などによる、たび重なる工事の中断
サグラダ・ファミリアは日本語名で「聖家族贖罪聖堂(教会)」といいます。贖罪、つまりキリスト教信者の献金による建造を旨としていたためしばしば資金難に陥り、工事も滞りがちでした。ガウディも生前、工事の資金集めに自ら奔走したといいます。さらに建設工事の反対運動が起こることもあり、そのたびに工事が中断されました。こうした中断期間は実に30年ほどになり、未完成のまま博物館にするという提案もあったそうです。
【完成が遅い理由:3】「違法建築」であることが判明!すったもんだの末に……
2016年、サグラダ・ファミリアは、実はバルセロナ市の許可を取らないまま建設を進めていたことが判明しました。建設当初、ガウディはサン・マルティー地区から建築許可を得ていたものの、サン・マルティー地区がバルセロナに吸収合併された際、教会は必要な更新手続きを取っていなかったというのです。サグラダ・ファミリアの理事会とバルセロナ市は2年間、この問題で反発しあっていましたが、2018年にサグラダ・ファミリア側が解決金3600万ユーロ(約47億円)を市に支払うことで合意。工事は正式に許可されました。支払金は観光による混雑緩和のための交通整備などに充てられるということです。
実は完成はもう間もなく? 完成イメージ動画も公開中
「完成まで300年以上かかる」と言われたサグラダ・ファミリアの建設工事ですが、昨今の3DやIT技術の進化と、観光客増加による収入増のおかげで工期が大幅に短縮されることが見込まれ、2013年に「ガウディの没後100年にあたる2026年までに完成する」と発表されました。動画で完成イメージも公開され、未完といわれたガウディの最高傑作がいよいよ完成か、と世界中で大きな話題を呼びました。しかし残念ながら、現在は新型コロナウイルス流行の影響で工事が中断されており、工事責任者は2026年までの完成は難しいとコメント。完成はまた一段と遠のいてしまいました。
とはいえ無事に合法建築となり、ゴールが見えてきたサグラダ・ファミリア。唯一無二の神秘の教会が堂々とその姿を現す日が来ることを、今も多くの人々が待ち望んでいます。
<参考サイト>
サグラダ・ファミリアの工期を早めたものとは│NEC「ビズサプリ」
https://www.nec-nexs.com/bizsupli/break/tech/01.html
未完の世界遺産、スペイン「サグラダ・ファミリア聖堂」の歴史と見どころ│地球の歩き方HP
https://news.arukikata.co.jp/column/sightseeing/Europe/Spain/BARCELONA/146_145979_1601342708.html
サグラダ・ファミリアに建築許可、137年の「違法工事」に終止符│CNN.co.jp
https://www.cnn.co.jp/travel/35138249.html
<参考文献>
くわしく学ぶ世界遺産300(世界遺産検定事務局/マイナビ出版)
			            
		            サグラダ・ファミリアの工期を早めたものとは│NEC「ビズサプリ」
https://www.nec-nexs.com/bizsupli/break/tech/01.html
未完の世界遺産、スペイン「サグラダ・ファミリア聖堂」の歴史と見どころ│地球の歩き方HP
https://news.arukikata.co.jp/column/sightseeing/Europe/Spain/BARCELONA/146_145979_1601342708.html
サグラダ・ファミリアに建築許可、137年の「違法工事」に終止符│CNN.co.jp
https://www.cnn.co.jp/travel/35138249.html
<参考文献>
くわしく学ぶ世界遺産300(世界遺産検定事務局/マイナビ出版)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
		自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
		
			明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
			『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
		
	ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは何か。ケルトという地域は広範囲にわたっており、一般的にアイルランドを中心にした「島のケルト」と、フランスやスペインの西北部などに広がった「大陸のケルト」があるが、神話が濃厚に残っているのはアイルラ...
		収録日:2022/04/12
		追加日:2023/07/23
							
	メダカの学校・総合的な学習(探究)の時間・逆参勤交代
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(4)社会課題の解決に取り組む人財産業
未来のプラチナ社会の実現に向けて、教育の見直しも欠かせない課題である。旧来的な知識伝達型の教育方法ではなく、教える側のダイバーシティを考慮した「メダカの学校」的なあり方や探究型学習の活用が重要なポイントとなる。...
		収録日:2025/04/21
		追加日:2025/10/30
							
	般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
「般若とは何か」――20歳の時、仏教学者・秋月龍珉から「仏法とは般若だ」という命題を受け、長年般若について探求してきた田口氏。般若とは「無分別知」、すなわち知識ではなく直感的理解であると説く。そして、東大名誉教授で...
		収録日:2025/05/21
		追加日:2025/10/31
							
	忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏が、海外でも有名な「ハチ公」の逸話を例に、人と犬の関係について考察する。第一回目は、ハチの飼い主・上野英三郎博士について触れ、東大とハチ公の結びつきや、東大駒場キ...
		収録日:2017/04/04
		追加日:2017/06/13
							
	ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー・ミュージックエンタテインメント(ジャパン)は、アメリカのコロムビアレコードと1968年に創業した、日本初の外資とのジョイントベンチャーである。ソニーはもともとエレクトロニクスの会社だったが、今のソニーグルー...
		収録日:2025/05/08
		追加日:2025/10/20
							
	 
 
	 
				 
	 
				 
			

