社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
なぜガソリンは地域で値段が違うのか
ガソリンスタンドではガソリン価格が道路から見えるように大きく表示されています。近くのスタンドごとでも細かい違いはありますが、都道府県で比較するとより違いがはっきりします。なぜ地域によってガソリン価格に差が生まれているのでしょうか。ここでは主にレギュラーガソリンに絞って現状の動向を確認しながら、考えてみましょう。
<価格が高い順(ワースト5)>
1位 長崎 168.3
2位 鹿児島 167.5
3位 大分 164.8
4位 沖縄 164.2
5位 長野 164.1
<価格が安い順(ベスト5)>
1位 埼玉 152.6
2位 宮城 153.4
3位 青森 154.0
同3位 徳島 154.0
5位 岩手 154.1
比較的九州で高く、東北方面では安い傾向があるようです。ただし例外もあり、東北でも山形県は163.6円/Lでワースト6位となっています。最も高い長崎県と、最も安い埼玉県ではおよそ16円の違いが出ています。一回の給油で50リットル入れたとして800円の差。これはなかなか大きい差ではないでしょうか。
どちらも国税ですが「地方揮発油税」は地方公共団体に譲与されるのに対して、「揮発油税」は国に譲与されるものです。ただし、沖縄県は1972年の本土復帰に際して沖縄復帰特別措置法によって「揮発油税及び地方揮発油税の軽減措置」が講じられ、本土よりも7円/L減税となります。一方、条例で1.5円/Lを別に徴収されるので、沖縄ではそのほかの都道府県よりも5.5円/L減税されていることになります。
ガソリンは東京湾などの湾岸地帯に多い製油所で精製されたのち、全国各地の油槽所に運ばれ、ここから各ガソリンスタンドに運ばれるケースが多いです。つまり、ガソリン代が高い地域に共通しているのは、油槽所が近くにないか、もしくはアクセスが悪い、またガソリンスタンドが少なく競争が少ないエリアと考えていいようです。こう考えると、人口が多く都心部から近い車社会である埼玉県がもっともガソリン代が安い、という点も納得がいきます。
世界情勢でガソリン価格は25%程度変動
ガソリン価格の全国平均はこの20年で大きく変動しています。たとえば2014年にはレギュラーガソリンは160円/Lを超えますが、2016には120円/L程度まで値を落としています。2008年から2009年も同様の変化が起きています。この変動幅はおおよそどちらも約25%程度という大きなものです。このタイミングの世界情勢を見てみると、2009年はリーマンショック、2014年から2016年にかけてはアメリカでシェール革命が起きています。今後も中東情勢などによって大きな変動が起きる可能性はあります。このように世界情勢によってガソリン価格は大きく変動します。もっともガソリンが高いのは長崎
こういった世界情勢によるガソリン価格の変動はありますが、同じタイミングであっても国内では地域別に少しずつ価格が異なります。資源エネルギー庁のデータによると、2021年(令和3年)8月16日時点でのレギュラーガソリンの小売価格全国平均は158.6円/L。この平均を踏まえた上で、都道府県別、ワースト5およびベスト5を見てみましょう。いずれも2021(令和3年)年8月16日時点のデータで、右の数字は価格で単位は円/Lです。<価格が高い順(ワースト5)>
1位 長崎 168.3
2位 鹿児島 167.5
3位 大分 164.8
4位 沖縄 164.2
5位 長野 164.1
<価格が安い順(ベスト5)>
1位 埼玉 152.6
2位 宮城 153.4
3位 青森 154.0
同3位 徳島 154.0
5位 岩手 154.1
比較的九州で高く、東北方面では安い傾向があるようです。ただし例外もあり、東北でも山形県は163.6円/Lでワースト6位となっています。最も高い長崎県と、最も安い埼玉県ではおよそ16円の違いが出ています。一回の給油で50リットル入れたとして800円の差。これはなかなか大きい差ではないでしょうか。
ガソリンにかかる税金はやや複雑
ちなみに2021年8月現在、ガソリンには1Lあたり「ガソリン税」53.8円、「石油税」2.8円に加えて消費税がかかります。ただし消費税は、「ガソリン税」「石油税」として払っているお金にもかかっているので、二重課税の問題はあるとも考えらえます。また「ガソリン税」の内訳を見ると、「地方揮発油税」5.2円と「揮発油税」48.6円の2種類があります。どちらも国税ですが「地方揮発油税」は地方公共団体に譲与されるのに対して、「揮発油税」は国に譲与されるものです。ただし、沖縄県は1972年の本土復帰に際して沖縄復帰特別措置法によって「揮発油税及び地方揮発油税の軽減措置」が講じられ、本土よりも7円/L減税となります。一方、条例で1.5円/Lを別に徴収されるので、沖縄ではそのほかの都道府県よりも5.5円/L減税されていることになります。
鍵は「輸送コスト」と「価格競争」
ガソリン価格が最も高い長崎県は日本一離島の多い県です。また、離島の数が次いで多いのは鹿児島県。4位の沖縄県を合わせて、やはり離島を含む地域が上位です。またワースト5位の長野県は内陸で山間部が多いエリアを抱えています。また、東北地方で例外的に高い山形県(ワースト6位)についても山地が多いエリアと言えます。ガソリンは東京湾などの湾岸地帯に多い製油所で精製されたのち、全国各地の油槽所に運ばれ、ここから各ガソリンスタンドに運ばれるケースが多いです。つまり、ガソリン代が高い地域に共通しているのは、油槽所が近くにないか、もしくはアクセスが悪い、またガソリンスタンドが少なく競争が少ないエリアと考えていいようです。こう考えると、人口が多く都心部から近い車社会である埼玉県がもっともガソリン代が安い、という点も納得がいきます。
<参考サイト>
石油製品価格調査|経済産業省 資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html
揮発油税等(ガソリン税)の軽減措置について|沖縄県
https://www.pref.okinawa.jp/site/kodomo/shohikurashi/shohi/volatileoiltax.html
石油製品価格調査|経済産業省 資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html
揮発油税等(ガソリン税)の軽減措置について|沖縄県
https://www.pref.okinawa.jp/site/kodomo/shohikurashi/shohi/volatileoiltax.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは
日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道
機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは
地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題
国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか
第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ
反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05