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世界の労働生産性ランキング
日本の「労働生産性が低い」とやり玉にあがるようになったのはいつからでしょう。少なくとも2011年以来、労働生産性の国際比較は横ばいを続けています。日本の労働の質が問われるこの事態、なぜこうなったのか、生産性をあげるために必要なことは、などを調べてみました。
2020年11月に発表された最新のデータ(2019年分推計)は次のようになっています。
順位:国名/米ドル
1位:ルクセンブルク/19万9367
2位:マカオ/17万8687
3位:ブルネイ/15万9118
4位:アイルランド/15万5654
5位:シンガポール/15万1522
6位:カタール/15万376
7位:ニューカレドニア/13万2228
8位:ノルウェー/12万9989
9位:サウジアラビア/12万2167
10位:プエルトリコ/11万8950
11位:アメリカ/11万6384
12位:クウェート/11万4903
13位:香港/11万2340
14位:スイス/10万6530
15位:ベルギー/10万3779
16位:デンマーク/9万7696
17位:オランダ/9万7622
18位:アラブ首長国連邦/9万7556
19位:フランス/9万6446
20位:チャンネル諸島/9万5413
1位のルクセンブルクは総人口63.2万人(うち労働人口32万人)という小さな国で、1人当たり名目GDP116,921ドル(2020年IMF統計)も世界194か国中1位の優秀さ。しかし失業率は、2019年5.36%(ILO統計96位/189か国)、2020年6.33%(IMF統計63位/102か国)に上ります。
一方、同時期の日本の総人口は1億2583万人(うち労働人口6868万人)と桁違い。1人当たり名目GDP40,146ドル(2020年IMF統計)は世界23位に留まりましたが、失業率は2019年2.29%(ILO統計164位/189か国)、2020年2.79%(IMF統計100位/102か国)の低さです。
2か国比較だけでなく、世界の国はそれぞれ産業構造が違っています。とくに日本のような国ではシステムを回すための労働、直接的な生産にはつながらない労働が増えています。教育も医療も金融も、介護や保育などの労働も、生産性が計上されない非市場型サービス労働です。
「労働生産性」が落とし穴だらけの概念であること、ご理解いただけたと思います。それでも名目的な「労働生産性」をあげるには、徹底した構造改革とあらゆる産業へのAIやロボット導入による人員削減が必要になります。
少子高齢化がますます進む日本において、本当に懸念すべきなのは労働人口の減少や医療・介護費の膨張です。一人ひとりの「生産性」をソンタクするサービス残業はもってのほか。取り組むべきは、宇宙や環境など、世界中で売れる商品の開発でしょう。
働く人口が少なければ少ないほど、頭割りの労働生産性は向上します。それでいいのかどうか、今が考えるチャンスです。
そもそも労働生産性とは?
「労働生産性」とは「労働の成果」を「労働の量」で割ったもの、労働者1人が生み出す労働の成果を指します。また、ILO(国際労働機関)では実質GDP総額を総就業者数で割った数字を「1人当たり労働生産性」として、国際比較のために公表しています。2020年11月に発表された最新のデータ(2019年分推計)は次のようになっています。
順位:国名/米ドル
1位:ルクセンブルク/19万9367
2位:マカオ/17万8687
3位:ブルネイ/15万9118
4位:アイルランド/15万5654
5位:シンガポール/15万1522
6位:カタール/15万376
7位:ニューカレドニア/13万2228
8位:ノルウェー/12万9989
9位:サウジアラビア/12万2167
10位:プエルトリコ/11万8950
11位:アメリカ/11万6384
12位:クウェート/11万4903
13位:香港/11万2340
14位:スイス/10万6530
15位:ベルギー/10万3779
16位:デンマーク/9万7696
17位:オランダ/9万7622
18位:アラブ首長国連邦/9万7556
19位:フランス/9万6446
20位:チャンネル諸島/9万5413
日本の労働者は能力が低い?
日本は、7万5384ドルで世界37位という結果。OECD加盟37か国中では26位というポジションです。しかし、これを見て「日本の働き方はあまりにも効率が悪い?」とか、「日本の労働者は能力が低いのでは?」などと心配する必要はありません。1位のルクセンブルクは総人口63.2万人(うち労働人口32万人)という小さな国で、1人当たり名目GDP116,921ドル(2020年IMF統計)も世界194か国中1位の優秀さ。しかし失業率は、2019年5.36%(ILO統計96位/189か国)、2020年6.33%(IMF統計63位/102か国)に上ります。
一方、同時期の日本の総人口は1億2583万人(うち労働人口6868万人)と桁違い。1人当たり名目GDP40,146ドル(2020年IMF統計)は世界23位に留まりましたが、失業率は2019年2.29%(ILO統計164位/189か国)、2020年2.79%(IMF統計100位/102か国)の低さです。
2か国比較だけでなく、世界の国はそれぞれ産業構造が違っています。とくに日本のような国ではシステムを回すための労働、直接的な生産にはつながらない労働が増えています。教育も医療も金融も、介護や保育などの労働も、生産性が計上されない非市場型サービス労働です。
それでも生産性をあげるには?
さらにいえば、ルクセンブルクやアイルランドは「タックスヘイブン(租税回避地)」として有名な国です。法人税率の低さでGAFAを始めとする多国籍企業の「税金逃れ」を助長していることで、国際的な非難の的になっていることも忘れてはいけません。「労働生産性」が落とし穴だらけの概念であること、ご理解いただけたと思います。それでも名目的な「労働生産性」をあげるには、徹底した構造改革とあらゆる産業へのAIやロボット導入による人員削減が必要になります。
少子高齢化がますます進む日本において、本当に懸念すべきなのは労働人口の減少や医療・介護費の膨張です。一人ひとりの「生産性」をソンタクするサービス残業はもってのほか。取り組むべきは、宇宙や環境など、世界中で売れる商品の開発でしょう。
働く人口が少なければ少ないほど、頭割りの労働生産性は向上します。それでいいのかどうか、今が考えるチャンスです。
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