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DATE/ 2022.04.04

都心の高額コインパーキング問題とは?

 コインパーキングに駐車していたら予想よりだいぶ高額になっていた、という話をよく聞きます。身に覚えのある方もいるのではないでしょうか。特に都心部などで多いようですが、いったい何が起きているのでしょう。また実際にどのくらい高額で、どういった問題があるのでしょうか。ここでは事例を見ながら、状況を整理します。

赤坂では10分で550円というところも

 実際の駐車場料金を見てみましょう。タイムズの駐車場検索サイトを使って、平日日中、通常料金という条件で調べてみました。まずは、都内の住宅街での相場を確認しておきましょう。例えば世田谷駅周辺の場合20分220円や40分220円といった感じが多いようです。比較のためにわかりやすいよう、最大料金は考慮せず4時間駐車したとして計算してみます。これでいくとざっと2640円から1320円といった計算です。世田谷駅周辺もそれなりに高いようですが、多くの場合最大料金が設定されています。この場合、おおよそ駐車後24時間は1200円から1980円といった範囲に収まるところが多いようです。

 一方、都内中心部でも特に赤坂や銀座といったあたりは料金が高いようです。この辺りの相場を見てみましょう。赤坂では、比較的安いところでは20分300円といったところがいくつか見当たりますが、中には10分550円といったところもあります。また最大料金が時間帯によってあったりなかったり、またあったとしても時間帯によって大きく異なっていたり、かなり複雑です。比較のために最大料金は考慮せずに考えると、20分300円であれば4時間で3600円、10分550円だと4時間で13200円という計算になります。

 銀座でも同様に最大料金の有無や時間帯による差異など、料金システムはかなり複雑です。金額だけ見ると、比較的安いところで30分330円、高いところでは12分550円というところが数カ所見当たります。最大料金を考慮せずに考えると、30分330円では4時間駐車した場合の料金は2640円、12分550円だと11000円となります。安いところは世田谷とそう変わりませんが、赤坂も含めて値段の高低差がかなりあります。ただし、夜間だともう少し値段は下がり、最大料金を設定しているところも増えるようです。

国民生活センターに寄せられた相談事例

 こういった状況を受けて国民生活センターのサイトにはいくつかの相談事例が掲載されています。以下、サイトに挙げられている相談内容のタイトルだけを取り上げてみました。

(事例1)一日最大料金の適用が24時間1回限りまでであることが分かりづらかった
(事例2)年末年始の特別料金が適用されることが入庫時に分からなかった
(事例3)最大料金の適用にスペースの条件があることが分からなかった
(事例4)最大料金の適用に入庫時間の条件があることが分からなかった
(事例5)スマホアプリ上の利用料金の表記と違った料金を請求された
(事例6)駐車券の紛失に対して高額な料金を請求された
(事例7)お金を入れたのにお釣りが出ない

 さまざまな問題があることがわかります。このうち事例1~4については、何かしら駐車場での表示のさせ方に問題があるようです。例えば、駐車時に確認できない精算機などにのみ、表示されていることもあるようです。

 利用者は車を走らせながら、まずはどの駐車場が空いているか、また値段はどうかということを瞬時に判断しながら駐車場を探すことになります。比較しながら駐車場を決めるのは困難な作業です。とにかく空いているところで看板に表示されている金額だけを頼りに入庫することが多いはずです。そうして精算する時に、高額な料金と小さく書かれた詳細条件(例:最大料金は平日のみといった内容)をみて、理不尽さを感じるという事態が起こるようです。

 国民生活センターの資料では、ここに挙げたような事態があった場合、景品表示法に定める「有利誤認表示」に該当するおそれがあると指摘しています。さらに、年末年始などのイベントごとや曜日、入庫時間帯により大きく料金体系が異なっていたり、最大料金が適用される条件がまちまちだったりするなど、利用料金体系が非常に複雑になっている点も混乱の元と考えられます。

トラブルは最寄りの消費生活センターへ

 こういった問題に対して、業界団体である一般社団法人日本パーキングビジネス協会(JPB)は2014年にガイドラインを明示しています。以下、ガイドラインの見出しを抜粋しました。

(1)利用料金や利用条件などについて、独特な表現を多用せず、分かりやすく表示すること。
(2)大きく理解しやすく表示をすること。
(3)利用規約についても、利用者がコインパーキングを利用する前に確認できる状態で掲示すること。
(4)統一的な表示に関する基準を作成することも検討すること。
(5)駐車券を紛失した際、適切な紛失時料金を徴収すること。
(6)精算機には、利用者が操作を誤っても取り消すことができるような機能を必ず付けること。

 また、ガイドラインでは看板記載例も数パターン示されています。ここでは、料金を記載する場合の文字の大きさや、記載すべき情報まで細かく例示されています。なにかこういったガイドラインに沿わないような問題があったら、まずは駐車場の看板に示された問い合わせ先にしっかり確認しましょう。それでも問題が解決しない場合、泣き寝入りすることはありません。表示されている看板や掲示などを撮影したのち、最寄りの消費生活センターへ相談しましょう。

<参考サイト>
「1日最大600円のはずが…」年末年始のコインパーキングは要注意! 特別料金で予想以上の金額も 2つの注意点とは|くるまのニュース
https://kuruma-news.jp/post/453470
コインパーキングの「表示」をしっかり確認しましょう|独立行政法人国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20181122_1.pdf
時間貸駐車場における表示・運用に関するガイドライン|一般社団法人 日本パーキングビジネス協会(JPB)
https://www.gia-jpb.jp/mailer/img/55-1.PDF
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