テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.01.20

婚活相手に求める「普通」の条件…ハードル高すぎ?

 婚活で時折聞く「普通の人でいいのに」というフレーズ。男性が女性に対して求める条件と、女性が男性に求める条件、それぞれの「普通」は異なるでしょうが、女性→男性で言うと、例えば年収400万円以上で、正社員で、大卒で、身長は175センチ以上で、など。高望みではないように聞こえるかもしれませんが、実際に統計を見てみると「普通の人」=すぐ見つかるのか、そうでないのかがわかるかもしれません。

年収400万円以上はかなり高いハードル

 内閣府が2019年に発表した「少子化社会対策に関する意識調査」によると、「結婚生活を送るに当たって相手に求める年収(税込)は、どのくらいですか」という質問に対して、400万円~500万円未満が女性の回答としては一番大きな割合を占めました(19.5%)。一方で男性の回答では「収入は関係ない」(24.9%)が最も多く、次いで200万~300万円未満(17.9%)となりました。男女で相手に求める年収は異なってきそうです。

 では400万円~500万円未満という希望は高望みなのかどうか。総務省が行った就業構造基本調査を見てみましょう。初婚年齢の平均前後にあたる25~29歳と30~34歳の男性で見てみると、所得が400万円以上なのは、25~29歳で4%、30~34歳では8%となかなかレアな層になります。しかもこれは既婚者も含めた数字となるため、独身者に限定するとそれぞれ3%、6%に減ります。この時点で400万円以上という希望は「普通の人」とは言えなくなってきそうですね。

 一方で男性が女性に求めていた「200万~300万円未満」という条件ですが、200万円以上という絞り込みをしてみると、25~29歳は26%、30~34歳は23%でした。こちらも独身者のみに絞ると、25~29歳は31%、30~34歳は35%で、男性とは異なり独身者の方が既婚者よりも高収入という傾向が見られました。共働きが増えているとは言え、結婚を機に退職したり、育休や時短勤務によってフルタイム勤務時より所得が抑えられているというケースがあることも影響していそうです。

 続いて正社員の割合を見てみましょう。労働政策研究・研修機構の調査によると、25~34歳の男性で正規の職員としてカウントされているのは86%。一方女性は66%。男女で差はあるものの、正社員を「普通の人」とするのは差支えなさそうです。

大卒はざっくり半分 175センチ以上は…

 大卒という条件だとどうでしょうか。文部省の学校基本調査によると、25~34歳(2007~2016年に大学入学)の大学進学率は53.7%~56.8%。多少の差はあるものの男女ともに同程度の割合になっています。大学4年間の中退率は約6~7%とも言われますが、それを差し引いてもだいたい半数の人は大卒と言えそうです。大卒が多数派というわけではないにせよ、「普通の人」と呼んでも違和感はないですね。ただし、一定以上のブランド(国立大卒じゃなきゃダメ、私立ならMARCH以上、など)を「普通」として求めようとすると、急にレア度が上がってしまうのでご注意を、というところですね。

 最後に身長です。学校保健統計調査という統計で身長ごとの分布がわかるのですが、17歳までの数字しかこちらの統計には含まれていません。2000年以降は平均身長がほぼ横ばいということで、便宜的に25~34歳の男性も17歳時点の身長分布と同じと過程して割合を見てみると、170センチ以上は58%なので過半数ですね。これを175センチ以上までハードルを上げると、25%にまで減ります。4人に1人となると、すごく珍しいというわけではないですが「普通の人」とは言えないかもしれないですね。偏差値で言うと57くらいですので、そこそこ上位ですよね。

 以上のように、年収400万円以上で、正社員で、大卒で、身長は175センチ以上を25~34歳の男性でレア度順に並べると、年収400万以上>身長は175センチ以上>大卒>正社員となりました(左の方がより珍しい)。独身で年収400万円以上となるとその条件だけで25~29歳の3%、30~34歳の6%ですので、それだけで相当なハードルです。さらに正社員、大卒、身長175センチ以上となるともっと限られてくるので、とてもとても「普通の人」とは言えない、というのが結論になってきそうです。

<参考サイト>
・少子化社会対策に関する意識調査 【全体版】(PDF版): 子ども・子育て本部 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/research/h30/zentai-pdf/index.html
・就業構造基本調査 平成29年就業構造基本調査 結果の要約・概要・主要統計表 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200532&tstat=000001107875&tclass1=000001116995
・図9 各年齢階級の正規、非正規別雇用者数|早わかり グラフでみる長期労働統計|労働政策研究・研修機構(JILPT)
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0209.html
・学校基本調査:文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
・学校保健統計調査:文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/1268826.htm

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

第2次トランプ政権の危険性と本質(2)トランプ関税のおかしな発想

「トランプ関税」といわれる関税政策を積極的に行う第二次トランプ政権だが、この政策によるショックから株価が乱高下している。この政策は二国間の貿易収支を問題視し、それを「損得」で判断してのものだが、そもそもその考え...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/17
柿埜真吾
経済学者
2

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

デモクラシーの基盤とは何か(2)明治日本の惑溺と多元性

アメリカは民主主義の土壌が育まれていたが、日本はどうだったのだろうか。幕末の藩士たちはアメリカの建国の父たちに憧憬を抱いていた。そして、幕末から明治初期には雨後の筍のように、様々な政治結社も登場した。明治日本は...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/16
3

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

編集部ラジオ2025(8)会員アンケート企画:トランプ関税

会員の皆さまからお寄せいただいたご意見を元に考え、テンミニッツTVの講義をつないでいく「会員アンケート企画」。今回は、「トランプ関税をどう考える?」というテーマでご意見をいただきました。

第2次トランプ...
収録日:2025/05/07
追加日:2025/05/15
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い(1)「相互関税」とは何か?

トランプ大統領は、2025年4月2日(アメリカ時間)に貿易相手国に「相互関税」を課すと発表し、「解放の日」だと唱えた。しかし、「相互関税」の考え方は、まったくよくわからないのが実状だ。はたして、トランプ大統領がめざす...
収録日:2025/04/04
追加日:2025/04/10
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授