テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.11.06

危険?ガソリンの「追加給油」がダメな理由

 1998(平成10)年に日本でも解禁された、セルフ式ガソリンスタンド。ドライバーが自身でガソリンを給油するなど給油にともなうサービスの省略によってリーズナブルで給油できることで人気となり、全国各地に普及しました。そして、約四半世紀を経た現在、社会インフラとして身近な存在となっています。

 しかし、ガソリンは危険物です。そのため、セルフ式ガソリンスタンドには、さまざまな安全装置付きの機器が設けられています。

「自動停止機能」後の「追加給油」は危険!

 ガソリンスタンドの安全装置の1つに、ガソリンが給油口から溢れることを防ぐ、「自動停止(オートストップ)機能」があります。「自動停止機能」の仕組みは、次のようになっています。

【「自動停止機能」の仕組み】
(1)給油ノズルの先端に、「検知口」と呼ばれる小さな穴が開いている。
(2)「検知口」から空気が取り入れられノズル内に空気が流れている限り、センサーは反応しない。
(3)給油によってガソリンタンク内の油面が上昇し「検知口」が塞がれると、ノズル内に空気が流れなくなる。
(4)ノズル内が真空状態になるとセンサーが満タンを検知し、給油を自動停止する。

 しかし、自動停止後も給油口からはガソリンが見えないなどによってまだガソリンが入ると思い、自動停止機能を無視して継ぎ足し給油をしてしまう、いわゆる「追加給油」をおこなう人がいます。

 しかしながら、ガソリンタンク内は視認しにくい複雑な形をしていることや熱によるガソリンの膨張などを考えてタンクの上部10%の部分は空気の層になるように設計されていることなどもあり、たとえ給油口からはガソリンが見えなかったとしても、自動停止機能が作動している場合、満タンやそれに近い状態となっています。

 そのため、「追加給付」をすることによって、ガソリンが給油口からはね出したり溢れてしまったりすることもあるだけでなく、走行中にガソリンが漏れ出したり吹きこぼれたりすることにつながる危険性が生じてしまいます。東京消防庁などは、「追加給付」をセルフ式ガソリンスタンドでの禁止事項としています。セルフ式ガソリンスタンドで給油する際は、ガソリンの「追加給付」は絶対にやめてください。

 さらに、給油ノズルは上記のようなセンサーを使った機械的な構造であるため、タンクに対する給油量に応じて安全な量を超えたら絶対に停止するとは言い切れない一面もあります。そのため、大前提として、給油中は給油口から目を離さないことが重要となります。セルフ式ガソリンスタンドで給油する際は給油が終わるまで十分に注意し、ガソリンが吹きこぼれないようにしてください。

セルフ式ガソリンスタンドの仕組み

 ところで、「なぜ危険物であるガソリンをセルフ式ガソリンスタンドではドライバー自身が給油できるのか?」と疑問に思ったことはないでしょうか。

 もちろん、セルフ式ガソリンスタンドにも、危険物の取り扱い資格である国家資格である危険物取扱者甲種または危険物取扱者乙種4類の保有したスタッフ(以下「スタッフ」)が常駐しています。スタッフは、給油レーンなどにも設置されたガソリンスタンド内のモニタリング等を通してドライバーの安全な給油作業を見守りつつ、火気の持ち込み・給油中のスマホ等の使用・携行缶等への注油といった禁止行為のチェックを行っています。

 そして、セルフ式ガソリンスタンドであっても、実際にガソリンを扱う段階にあたる給油作業開始の判断は、スタッフによって行われています。

 セルフ式ガソリンスタンドの仕組みは、ドライバーが給油ノズルのレバーを引いたことによって給油が開始されるのではなく、スタッフが安全を確認出来た後給油許可を行うことによって、ドライバーがレバーを引いた給油ノズルからガソリンが出てくるという仕組みになっています。

セルフ式ガソリンスタンドでの注意点

 他方、ガソリンの「追加給油」以外にも、いくつかのセルフ式ガソリンスタンドで給油を行う際の注意点や厳守事項があります。主な注意点や厳守事項は、(1)白線等で示された規定の場所で停止のうえエンジンも停止する、(2)引火防止のために給油キャップを開ける前に必ず静電気除去シートにタッチする、(3)案内や注意書き等を厳守した正しい方法で給油する、(4)給油後はしっかりと給油キャップを閉める、そして(5)不明点やトラブル等があった際は自己判断せずに直ちにスタッフに報告し指示を仰ぐ――などが挙げられます。

 物価高騰の影響はガソリンの値上がりにも直結しています。そのためもあってセルフ式ガソリンスタンドで給油する際にも、「少しでも安いときに多めに給油したい」という思いがよぎるかもしれません。しかし、ガソリンの給油やひいては車の運転や活用に関わる全てにおいて、なによりも優先されることは安全です。ガソリンの「追加給油」のような危険なことは行わず正しい方法で給油し、安全な車生活を送ってください。

<参考文献・参考サイト>
・「セルフ式ガソリンスタンド」『デジタル大辞泉』(小学館)
・セルフ式ガソリンスタンドを安全に利用するために - 東京消防庁
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/gas_station.html
・じつは禁止事項! セルフスタンドで自動停止後の「チョビチョビ入れ」が危険な理由 - WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2020/05/522755/
・実はいろんな決まりがあるセルフガソリンスタンドの裏側と注意点 - ベストカーWeb
https://bestcarweb.jp/feature/column/312765
・ガソリン給油時のオートストップ機能 - 木内油業株式会社
https://kiuchi-oil.jp/info/7565
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(9)弥生人の「生の世界」

弥生時代の衣食住には、いったいどんな文化があったのだろうか。土器やスタンプ痕の分析から浮かび上がる弥生人が生きていた世界、その生活をひもとくと、農耕の発展の経路や死生観など当時のさまざまな文化の背景が見えてくる...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/14
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授
2

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

健診結果から考える健康管理・新5カ条(5)コレステロールは運動では減らない

コレステロールは中性脂肪と混同されがちだが、まったく異なる性質の脂(あぶら)である。コレステロールには、消化酵素になるなど3つの使い道があるが、摂り過ぎると運動しても簡単になくならないため、血管の変化を引き起こし...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/13
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
3

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!

『法華経』といえば紀元1世紀から3世紀に成立したといわれる大乗仏教の代表的経典である。厳しい修行や哲学的思索を行う出家が中心だった当時のインド仏教に対し、誰もが平等に成仏できると説く『法華経』は画期的なものだった...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/05/04
鎌田東二
京都大学名誉教授
4

イスラエルの歴史を学ぶ~シオニズム運動と英国の三枚舌

イスラエルの歴史を学ぶ~シオニズム運動と英国の三枚舌

近代イスラエルの誕生:その苦闘の背景(1)

 国防において、科学・芸術・産業の追究において、イスラエル人が示す桁外れの熱意。その根源は、民族がたどった歴史にあると島田晴雄氏は言う。現代のイスラエル精神に直接影響を及ぼした近代イスラエルの成立過程を2回に分...
収録日:2013/10/04
追加日:2014/07/17
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

株価と歴史…トランプ関税の影響を読む(1)アメリカ史の教訓とは

トランプ関税の影響は、今後、どのように広がっていくのだろうか? 過去の大きな構造変化や金融環境の変化が各国の「株価リターン」にどのような影響を与えたのかを分析しつつ、今後を考えるヒントがないかを検証していく。第1...
収録日:2025/04/18
追加日:2025/05/02
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員